
消費者庁の「ダークパターン」調査を読んで、日本のサイトで実物を探してみた
消費者庁が2025年に公表した「ダークパターン」の実態調査は、日本のサイト102件を手作業で見て回った報告書です。一番多かったのは「事前選択」で75サイト。公式のイラスト集と、日本のホテル予約・通販・オンライン講座の実物のキャプチャを並べて、PC表示とスマホ判定の違いも含めて見ていきます。
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消費者庁が2025年に公表した「ダークパターン」の実態調査は、日本のサイト102件を手作業で見て回った報告書です。一番多かったのは「事前選択」で75サイト。公式のイラスト集と、日本のホテル予約・通販・オンライン講座の実物のキャプチャを並べて、PC表示とスマホ判定の違いも含めて見ていきます。
「ダークパターン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。通販サイトやアプリの画面で、利用者が自分では選ばないはずの行動へ、デザインの力でそっと誘導する仕掛けのことです。定期購入が最初から選ばれている、解約ボタンがどこにあるか分からない、「残り1室!」が何日経っても消えない。そういうやつです。
消費者庁が2025年に、この手の仕掛けが日本のサイトにどれくらいあるかを実際に102サイトを手作業で見て回って数えた報告書を出しています。正式名称は「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」。消費生活相談で名前が挙がったサイト42件と、ネット通販の売上高上位60件を、購入直前の画面まで人の手で辿って、どの類型に当てはまる表示があったかを表にまとめたものです。

結果の表がこれです。一番多いのは「事前選択」で75サイト。次が「偽りの階層表示」69、「お客様の声」56、「強制登録」45。総合ショッピング、食品、化粧品・医薬品、宿泊の業種では、調べたサイト全部で事前選択が見つかったそうです。逆に「なりすましスパム」「おとり商法」「中間通貨」のように、ゼロだった類型もあります。
報告書と一緒に「事例イラスト集」も公開されていて、周知啓発用に自由に使ってよいと書かれています。以下のキャプチャは、そのイラストと、2026年8月31日時点で日本向けのサイトに実際に出ていた画面です。
報告書は「該当すると考えられる表示」を数えたものであって、違法と認定したものではありません。イラストも「特定の事例を指すものではない」と明記されています。この記事で載せる実物のキャプチャも同じで、「こういう表示が、報告書のこの類型に近い」という話であって、その会社が法律に違反しているという意味ではありません。
PCとスマホで、出てくる画面が違う
キャプチャを集めていて気づいたのは、同じサイトでも、スマホからのアクセスだと判定されたときのほうが、露骨な画面が出やすいことです。ポップアップの枚数が増える、アプリのインストールを迫られる、同意の文言が小さくなる。
しかもこの判定は、画面の幅ではなくブラウザが名乗る端末の種類(ユーザーエージェント)で行われていることが多いので、PCのブラウザの幅を狭めただけでは出てきません。そこで、PCのChromeで撮ったものに加えて、自動操作用のブラウザにiPhoneとして名乗らせて撮った画面も載せています。説明に「iPhone判定」とあるのがそれです。
「あと1部屋」「今日は35回予約されました」— ホテル予約サイト

報告書でいう「緊急性」(在庫わずか、カウントダウンタイマー)と「社会的証明」(他の人も見ています・予約しました)の類型です。イラスト集ではホテル予約サイトを例にしていますが、実物もホテル予約サイトが一番濃い。

Agodaで東京のホテルをPCから検索した1画面目です。赤枠を3つ付けました。上から「全掲載宿泊施設の内66%が完売しています」、セール枠の「終了まで 09:54:54」というカウントダウン、そして「今日は21回予約されました」。緊急性が2つと社会的証明が1つ、スクロールなしで揃います。

同じ検索をiPhone判定で開くと、まず左のようにアプリのインストールを勧める画面が全面に出ます。それを閉じて出てくるのが右。「当サイトあと1部屋!」の赤いバッジ、「今日は35回予約されました」、二重の取り消し線価格、「【1時間限定】今すぐ使えるクーポン」。PC版より1画面あたりの密度が上がっています。
報告書の調査では、「在庫わずか」は30サイト、「アクティビティメッセージ」(○人が見ています等)は19サイトで見つかっています。宿泊業種は売上高上位のサイト全部で事前選択が見られた業種でもあり、旅行系は全体に「盛り」が強い、というのが数字からも読めます。
「87%OFF、残り4日」— オンライン講座

「不当参照価格」は、取り消し線の「通常価格」が本当に通常の価格だったのか分からない、という類型です。イラスト集の例は「11,000円→2,980円→1,980円」と三段落ちにする育毛シャンプー。

実物はUdemyの講座ページ。「¥1,300 ¥9,800 87%OFF」に「この価格で購入できるのは残り4日!」。この日はトップページでも「夏のビッグセール」の告知が出ていました。報告書の分類だと、参照価格(取り消し線の9,800円)と期間限定の表示が組み合わさった形です。9,800円で売られていた期間がどれだけあったかは、この画面からは分かりません。
ただし報告書で「不当参照価格」に該当すると数えられたのは9サイトと少なめでした。二重価格表示は景品表示法でもともと規制されている領域なので、大手ほど気をつけているのかもしれません。
大きい「定期便」ボタンと、小さい「1回だけ」— 化粧品の販売ページ

最多の75サイトだった「事前選択」と、2番目の69サイトだった「偽りの階層表示」。前者は事業者に都合のいい選択肢が最初から選ばれていること、後者は事業者に都合のいい選択肢だけを大きく・目立つ色で見せること。イラスト集の例では、お徳用サイズと定期お届けコースが緑で選択済みになっています。

iPhone判定で開いた、アルマードの卵殻膜化粧品「チェルラー プレミアム」の販売ページです。「初回定期価格 63%OFF 3,480円」の下に画面いっぱいの「定期便を利用する」ボタン。1回だけの購入も同じページにあり、下にスクロールした先に、半分の幅のボタンで「通常価格 9,000円」。どちらも選べるので事前選択ではありませんが、定期便のボタンのほうが大きく、先に目に入る配置です。報告書の「偽りの階層表示」は、事業者に都合のいい選択肢を目立たせる見せ方を指していて、報告書は「偽りの階層表示と他の分類の組み合わせが多く見られた」と書いています。
なお「2回目以降も25%OFF 7,200円」と回数の条件はちゃんと書いてあって、この点は2022年の特定商取引法改正で最終確認画面の表示が義務化された効果だと思います。数年前の「初回500円」のページは、ここがもっと読みにくかった。
「確認」しか押せないクッキーバナー — 航空会社

「強制的情報開示」という類型は、必要以上の個人情報を渡すように仕向けられるもの。イラスト集の例はクッキーバナーで、「同意しない」に当たるボタンがないケースと、×で閉じたのに設定画面を見ると同意済みになっているケースが挙がっています。

これはJALのトップページ。下に出ているバナーは「第三者から提供された位置情報や広告データなどの情報をお客さまの個人データと結びつけて利用する場合があります」と書いてあって、押せるボタンは右端の「確認」ひとつだけ。拒否する選択肢が画面上に存在しません。日本の大手サイトではこの「確認」「閉じる」だけのバナーがまだかなり多くて、報告書でも強制的情報開示は22サイトで見つかっています。

同じ日に撮ったUdemyのバナーでは、「設定」「すべて拒否する」「OK」の3つが同じ大きさで並んでいます(緑枠)。価格表示では上で名前を出したサイトですが、クッキーバナーは真っ当で、同じ会社でも項目ごとに態度が違うのが分かります。上部の「残り4日!夏のビッグセール」(赤枠)は、終了日が書いてあるので期間限定表示としては問題が少ない部類です。
「同意頂いたものとみなします」— 通販サイトをスマホで開く

PCでSHEINを開くと、こういうクーポンのポップアップが1枚出ます。これだけならよくある光景です。

SHEINをiPhone判定で開いたのが左。上からアプリのインストールを勧める帯、クーポンのポップアップ、その下に「ログインしてクーポンをチェック」、さらにGoogleでログインの提案。閉じると右の画面で、今度は「会員無料登録して新規ユーザー特典をゲット」の入力欄が出てきます。報告書でいう「強制登録」(登録が必要だと思い込ませる)と「執拗な繰り返し」を、スマホ側だけで一気に見られます。

そして右の画面の下に小さく「会員登録した場合、プライバシー&クッキーポリシーと利用規約の内容を十分ご理解の上、同意頂いたものとみなします」。報告書が「みなし同意」と呼んでいるもので、日本独自の傾向として取り上げられ、36サイトで見つかっています。右側はUdemyの登録画面で、こちらも「登録することで、利用規約とプライバシーポリシーに同意したことになります」。ただしこのサイトはメール配信のチェックボックスが外れた状態で置いてあって、事前選択はしていない。ここは良い例です。
みなし同意について報告書は、「我が国の現行法上、直ちに違法又は不当とまではいえないとしても、消費者の利益の擁護の観点からは検討の余地がある」と書いています。違法ではない、でも良くはない、という位置づけ。日本のほとんどのサービスがこの書き方をしているので、ここが変わると影響は大きいはずです。
撮れなかったもの — 「キャンセル困難」

キャプチャを載せられなかった類型もあります。「キャンセル困難」、つまり申し込みは1画面で終わるのに解約は何画面も遷移させられる、途中で「本当に解約しますか?特典がなくなります」と引き止められる、というやつです。これは会員になって解約手続きを実際に進めないと画面が出てこないので、今回は公式のイラストだけ。
ただ件数は多くて、報告書全体で38サイト、消費生活相談から選んだ42サイトに限ると22サイトで見つかっています。相談に来る人が困っているのは、買うときより辞めるときだ、ということがこの数字に出ています。
作る側として思ったこと
私はサイトやアプリを作る側の人間なので、この報告書は少し耳が痛い読み物でした。
一番多かったのが「事前選択」だったというのは、悪意というより惰性の結果だと思います。フォームを作るとき、何かを初期値にしないといけない。そこで「売上が上がるほう」を選ぶのは、開発者にとっても営業にとっても一番説明がいらない選択です。誰も「騙そう」とは思っていない。でも報告書は、その初期値の積み重ねを102サイト中75サイトで数えた。初期値を決めるのは設計判断であって、デフォルトだから中立、ということにはならない。
スマホ判定で画面が変わるという話。PCで見ると穏当なのに、スマホだと登録とアプリの誘導が重なる。これは「小さい画面では見られにくい」ことを知っていて出し分けている、ということでもあります。技術的にはユーザーエージェントで分岐しているだけですが、その分岐の中身を見ると、どちらの画面が本音なのかが分かります。
報告書が繰り返しているのは「組み合わせ」です。偽りの階層表示と事前選択、緊急性と社会的証明、強制登録とみなし同意。ひとつひとつは小さくて、単体なら「まあこれくらい」で済む。でも1画面に3つ重なると、利用者の判断はかなり削られます。上のホテル予約サイトの1画面目がまさにそれで、単体で見れば全部「よくある表示」なのに、揃うと圧が違う。

イラスト集の最後のページは、利用者向けの5つの注意点で締められています。購入回数と契約期間、支払い金額、解約条件、利用規約、そして「最終確認画面のスクリーンショットを撮る」。最後のひとつは、作る側がいちばん言われたくないことです。スクリーンショットを撮られて困る画面を作っていないか。自分の関わっているサービスについて、そういう目で見直すきっかけになる報告書でした。
参照元・注記
報告書とイラスト集の画像は、消費者庁が政府標準利用規約のもとで公開しているものを引用・加工しました。各サイトのキャプチャは2026年8月31日に筆者が取得したもので、赤枠・青枠・緑枠は筆者が付けています。「iPhone判定」と書いたものは、自動操作用ブラウザ(Playwright)にiPhone 15の端末情報を名乗らせて取得しました。いずれも「報告書の類型に近い表示の例」として、批評のために必要な範囲で引用しており、各社の表示が違法であるという趣旨ではありません。表示は日々変わるので、現在は異なる可能性があります。掲載についてのご指摘は、サイトのお問い合わせからお知らせください。
キャプチャの取得元(いずれも2026年8月31日取得):
- ▸Agoda 検索結果 — agoda.com/ja-jp(東京・2026年9月19日〜20日・大人2名で検索)
- ▸Udemy トップページ・講座ページ・登録画面 — udemy.com/ja
- ▸アルマード「チェルラー プレミアム」販売ページ — almado.jp/cellula/contents/premium
- ▸JAL トップページ — jal.co.jp/jp/ja
- ▸SHEIN トップページ — jp.shein.com(iPhone判定では m.shein.com/jp)

堀川 慎
Backend Engineer / AWS / Django / Go