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NetKids iMarkに脆弱性2件 CVE-2026-66344ほか、修正版はまだない

国産のネットワーク監視ソフト「NetKids iMark」に脆弱性が2件見つかりました。その端末にログインできる相手に最上位権限を奪われます。対象は最新版V5.2.5.0を含む全バージョンで、修正版は未提供です。ネット越しには攻撃できませんが、監視サーバーは社内の機器情報を持つため放置はできません。開発元が示した手当てを整理します。

ニュース2026年8月5日公開 本日更新
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この記事のポイント

国産のネットワーク監視ソフト「NetKids iMark」に脆弱性が2件見つかりました。その端末にログインできる相手に最上位権限を奪われます。対象は最新版V5.2.5.0を含む全バージョンで、修正版は未提供です。ネット越しには攻撃できませんが、監視サーバーは社内の機器情報を持つため放置はできません。開発元が示した手当てを整理します。

国産のネットワーク監視ソフト「NetKids iMark」に、脆弱性(ソフトの弱点)が2件公表されました。2026年8月5日、日本の脆弱性情報ポータルJVN(JVN#28045338)で公開されたもので、どちらもそのパソコンにログインできる相手が、Windowsの最上位権限(SYSTEM)を奪えるという内容です。

先に結論を書きます。インターネット越しに攻撃されるものではありません。外から勝手に踏み込まれる類の穴ではないので、今夜のうちにサービスを止めて対応する、という話ではありません。

ただし厄介な点がひとつあります。対象は「V5.2.5.0およびそれ以前」——つまり現在配布されている最新版そのものが対象で、上げる先がありません。開発元の株式会社アイ・エス・ティは修正版を準備中と表明していますが、公開はまだです。いま取れるのは、同社が公開した2本の手順書に沿った手当てだけです。この記事では、その手順書の中身を読み解いて、何をどう直せばいいのかを整理します。

NetKids iMarkとは何か、どこで使われているのか

社内のネットワーク機器やサーバーが元気に動いているかを、定期的に確認して回るソフトです。機器に「生きていますか」と問いかけて応答を見る(ping監視)、CPUやディスクの空きを見張る、Webサイトが表示できるかを確かめる、といった仕事を自動でこなし、異常があれば担当者へ知らせます。

特徴は、Windowsのパソコンやサーバーに入れるだけで動く手軽さです。専用の機械も、Linuxの知識も要りません。開発元によれば1998年の発売から20年以上で4,000ライセンスを超える導入があり、官公庁・金融機関・教育機関でも使われているとされています。国産で日本語のサポートが受けられる点も、選ばれてきた理由でしょう。

つまり今回の話は、「そんなソフト聞いたことがない」という人には関係がなく、入れている組織にとっては確実に自分ごとという性質のものです。心当たりのある方は、この先を読み進めてください。

見つかったのは、どちらも「置き換え」の穴

2件とも、攻撃の筋道は同じです。正規のプログラムが読み込むはずのファイルの場所に、攻撃者が別のファイルを置いておく。ソフトはそれを疑わずに読み込み、置かれた側のプログラムが最上位の権限で動き出す——という流れです。

脆弱性番号中身悪用に必要なもの危険度
(4.0 / 3.0)
CVE-2026-66344部品ファイル(DLL)を
探す場所の指定が甘い
端末にログインでき
利用者の操作も要る
5.4 / 6.7
CVE-2026-66839常駐プログラムの
登録の書き方が甘い
システムドライブへの
書き込み権限
8.4 / 6.7

※危険度は左が新しい基準(CVSS v4.0)、右が従来の基準(CVSS v3.0)。同じ穴でも基準が違えば数字は変わります。どちらもAV:L——ネットワーク越しではなく、その端末上でしか成立しないという意味の記号が付いています。

CVE-2026-66344:部品ファイルの探し方が甘い

Windowsのソフトは、自分だけで全部の仕事をするわけではなく、DLLと呼ばれる共通部品のファイルを必要に応じて読み込みます。このとき「どこから探すか」の順番が重要で、最初にプログラム自身が置かれているフォルダを見に行く設計になっていると、そのフォルダに同じ名前の偽物を置かれた時点で負けます。

開発元の手順書には、こう書かれています。「アプリケーションが配置されているディレクトリから検索し、そこに不正な同名のDLLが配置された場合、意図しないプログラムが実行されるおそれがあります」。分類はCWE-427(探索パスの制御不備)という、Windowsソフトでは古くから知られた型です。

問題は、そのフォルダに誰が書き込めるかです。開発元も認めているとおり、インストール先のフォルダは親フォルダの権限設定をそのまま引き継ぐため、環境によっては一般の利用者でもファイルを置ける状態になっていることがあります。そこが空いていれば、偽の部品を置くのは難しくありません。

CVE-2026-66839:常駐プログラムの登録の書き方が甘い

こちらは、Windowsに常駐して動き続けるプログラム(サービス)の登録のしかたの話です。今回対象なのはnkmsgServiceという、通知を担当する常駐プログラムです。

Windowsは、常駐プログラムの本体がどこにあるかを文字列で覚えています。このときその文字列を引用符(ダブルクォート)で囲んでいないと、途中の空白を区切りと勘違いすることがあります。たとえば C:\Program Files\Netkids\... という場所に置かれている場合、Windowsは「C:\Program」までを本体の名前だと解釈しかねません。そこで攻撃者が C:\Program.exe という偽物を置いておくと、次回の起動時にそちらが動いてしまいます。

分類はCWE-428(引用符で囲まれていない検索パス)。こちらもWindowsのソフトでは繰り返し見つかってきた型で、プログラムの動きそのものではなく、インストーラーの書き方に起因するのが特徴です。開発元はもう1本の手順書で、次のバージョンから引用符で囲んで登録するよう直すと説明しています。

誰が狙い、何のために狙うのか

この2件は外から突けません。だから狙うのは、すでにその組織の中にいる相手です。具体的には、権限を絞られた一般利用者のアカウントを持っている人、業務委託や派遣で一時的に端末を使える立場の人、あるいはフィッシングなどで社員の1台をすでに乗っ取っている攻撃者が該当します。侵入の最初の一手ではなく、入った後に立場を上げるための二手目として使われる類の穴です。

その相手が何をするか。偽のファイルを1つ置いて、監視ソフトが自分でそれを読み込むのを待つだけです。派手な操作は要りません。読み込まれた瞬間、攻撃者のプログラムはWindowsで最も強いSYSTEM権限で動きます。その端末では、もう何でもできる状態です。

被害の重さは、監視ソフトが何を握っているかで決まります。ネットワーク監視ソフトは、社内にどんな機器が何台あり、どのIPアドレスで動いているかを一覧で持っています。機器から情報を吸い上げるための合言葉(SNMPコミュニティ名)や、管理画面へ入るための資格情報を保存している場合もあります。つまり監視サーバーは、社内ネットワークの地図と鍵束を兼ねているわけです。ここを取られると、攻撃者は次にどこを叩けばいいかを自分で調べる手間が省けます。「ネット越しに攻撃できないから軽い」と言い切れないのは、この一点に尽きます。

自分のところは対象なのか

判定は単純です。NetKids iMark V5を入れているなら、対象です。JVNの記載は「V5.2.5.0およびそれ以前」ですが、開発元の更新履歴を見るとV5.2.5.0は2025年1月14日公開で、それが現時点の最新版です。つまり「それ以前」が全部を指しており、逃げ道になる新しい版は存在しません

確認しておきたいのは、次の2点です。

先に見ておく場所

  • インストール先のフォルダ(初期設定なら C:\Program Files\Netkids\iMarkV5)に、一般の利用者がファイルを作れる設定になっていないか
  • 常駐プログラム nkmsgService の実行ファイルの場所が、引用符で囲まれているか

そしてもうひとつ、忘れられがちな確認があります。使わなくなったまま残っている導入がないかです。検証用に入れたきり放置している端末、担当者が代わって誰も見ていないサーバー。開発元は手順書の両方で、利用を終えているならアンインストールしたうえでインストールフォルダも手で消すよう案内しています。動いていなくても、フォルダとサービス登録が残っていれば穴も残ります。

いま何をすればいいか

修正版が出るまでの手当ては2つです。どちらも設定を直す作業で、ソフトの入れ替えは伴いません。開発元の手順書に沿って要点を整理します。

手当て1:インストール先フォルダの権限を絞る

DLLの件(CVE-2026-66344)への対処です。狙いは「偽物を置ける人をなくす」こと。インストールフォルダを右クリックしてプロパティを開き、「セキュリティ」タブで権限の一覧を見ます。開発元が例に挙げているのは、「Authenticated Users」というグループを一覧から外す方法です。これは「ログインできる人みんな」を指すグループで、ここに書き込みが許されていると、一般利用者でもファイルを置けてしまいます。

ここで多くの人がつまずくのが、削除しようとすると「親からアクセス許可を継承しているので」というエラーが出る点です。フォルダの権限は上のフォルダから受け継ぐ仕組みになっているため、そのままでは個別に外せません。この場合はいったんキャンセルし、「詳細設定」から「継承の無効化」を押して「継承されたアクセス許可をこのオブジェクトの明示的なアクセス許可に変換します」を選びます。継承元の欄がすべて「なし」になれば成功で、そのあとなら削除できます。

注意点として、製品の動作に必要な読み取り・実行の権限まで消してしまわないこと。開発元も「運用に応じて維持してください」と書いています。消すのは書き込み・変更・削除の権限で、読んで動かす分の権限は残します。

手当て2:常駐プログラムの登録を引用符で囲む

サービスの件(CVE-2026-66839)への対処です。先に止める順番があります。通知コンソール(nkmsgClient.exe)が動いていると常駐プログラムを止められないため、コンソールのメニューから「アプリケーションの終了」を選んで先に閉じます。監視そのものを止めたくない場合は、iMarkGUIとnkimarkService_V5は動かしたままで構いません。ただし作業中は通知が飛ばなくなるので、その間に異常が起きても気づけない点は頭に入れておいてください。

止めたら、登録されている場所の文字列を引用符で囲みます。開発元は2つのやり方を示しています。ひとつはレジストリエディタで HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\nkmsgServiceImagePath を直接書き換える方法。もうひとつは、コマンドプロンプトを管理者として開いて sc config コマンドで設定し直す方法です。レジストリを触るのが不安なら、後者のほうが事故が起きにくいでしょう。

直したあとは、Windowsのサービス管理画面でnkmsgServiceのプロパティを開き、実行ファイルの場所が引用符で囲まれているかを目で確かめます。確認できたら止めたものを起動し直し、最後に通知がきちんと飛ぶかまでテストしてください。設定を触った以上、元どおり動くことを確かめて初めて作業完了です。

実際に攻撃されているのか

現時点で、この2件が悪用されたという報告はありません。開発元の手順書にも、JVNの記載にも、被害や攻撃観測についての記述はありません。米政府CISAがまとめている実際に攻撃されている脆弱性の一覧(KEV)にも入っていません。

実証コードも公開されていません。もっとも、この2つは手口そのものが目新しいものではないため、実証コードの有無はあまり意味を持ちません。偽のDLLを置く、偽の実行ファイルを置く——やることは分かりきっており、必要なのは置ける場所があるかどうかだけです。だからこそ対処も、置ける場所をなくす、という一点に集約されます。

なお、この2件にはCVE-2026-66344・CVE-2026-66839という番号が付いていますが、8月5日時点で米国のNVD(脆弱性データベース)にはまだ登録されていません。国内で採番された番号が国際的なデータベースへ流れるまでには時差があります。社内の検査ツールで引っかからなくても「まだ登録されていないだけ」という可能性があるので、番号での検索結果だけを根拠に「関係ない」と判断しないでください。

報告したのは、GMOサイバーセキュリティ byイエラエの松本一真氏です。開発元へ届けられ、IPAの届出制度を通じてJVNで公表される、という日本の調整プロセスに沿って公開されました。開発元が同日に手順書を2本用意しているのも、この調整が機能した結果です。

気になる点がひとつ

開発元が公開した2本の手順書のうち、サービスの件を扱ったほうには、末尾に「JVN公開情報:JVN#12859106」と書かれています。ところがこの番号のページは、本稿の執筆時点では見つかりません(アクセスすると404が返ります)。もう1本の手順書が案内しているJVN#28045338のページには、2件のCVE番号が両方とも掲載されています

当初は2件を別々に公表する予定だったものが、1本にまとまった——といった経緯が想像できますが、確かめられていないので断定はしません。実務上は、JVN#28045338のページを見れば2件とも載っているので困りません。ただ、手順書に書かれた番号でJVNを引いて「ページがない」と戸惑う方がいるかもしれないので、書き添えておきます。

まとめ

国産のネットワーク監視ソフトNetKids iMarkに、2026年8月5日、脆弱性が2件公表されました。どちらもその端末にログインできる相手が、偽のファイルを置いてWindowsの最上位権限を奪うという筋道で、インターネット越しには成立しません。対象はV5.2.5.0以前、つまり現行の最新版を含む全バージョンで、修正版はまだ提供されていません。開発元は次のマイナーバージョンアップで直すとしています。

それまでの手当ては、インストール先フォルダの権限を絞ることと、常駐プログラムの登録を引用符で囲むことの2つ。どちらも設定作業で、入れ替えは要りません。使っていない導入が残っているなら、アンインストールしてフォルダごと消すのが確実です。

最後にひとつ。今回の2件は、国産・海外製を問わずWindows向けの業務ソフトで繰り返し見つかってきた型です。手元の他のソフトでも、常駐プログラムの登録が引用符で囲まれていないもの、インストールフォルダが誰でも書き込める状態のものは珍しくありません。今回の作業のついでに、同じ観点で他の常駐プログラムも眺めておくと、拾えるものがあるはずです。国内向けソフトの脆弱性は日本語の解説が出るまでに時間がかかりがちで、個人サイト向けの投稿ツールで起きた例でも同じ課題が見えていました。公表された当日に手を打てるかどうかは、結局この種の情報にどれだけ早く触れられるかで決まります。

参照元

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堀川 慎

Backend Engineer / AWS / Django / Go