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リクルートの決算資料を読んでみたら、Indeedの応募の7割が「検索」からじゃなかった

リクルートホールディングスの2026年3月期決算説明会の資料と書き起こしを読んでみた。売上4兆円より面白かったのは、社長が25分かけて話したIndeedの「マッチングの考え方」。米国の有料求人では応募の7割が検索経由ではなく、求職者の一番の不満は「返信が来ない」。キャプチャ付きで追います。

コラム2026年8月31日公開 本日更新
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リクルートホールディングスの2026年3月期決算説明会の資料と書き起こしを読んでみた。売上4兆円より面白かったのは、社長が25分かけて話したIndeedの「マッチングの考え方」。米国の有料求人では応募の7割が検索経由ではなく、求職者の一番の不満は「返信が来ない」。キャプチャ付きで追います。

上場企業の決算説明会の資料って、読んだことがあるでしょうか。株を買うわけでもないのに読む人は少ないと思いますし、私も長いこと「投資家向けの数字の羅列」だと思っていました。でも最近、気になった会社のものをたまに開くようになって、考えが変わりました。あれは数字の資料ではなく、その会社が「自分たちの商売はこういう仕組みで動いている」と一番正直に説明している文書です。営業資料と違って盛れないし、採用サイトと違って理念だけでは済まない。数字の裏付けを求められる場で、社長が自分の言葉で「なぜ儲かっているのか」を話す。

今回読んだのは、リクルートホールディングスの2026年3月期の通期決算説明会(2026年5月15日開催)です。資料のPDFも、説明会の動画も、社長とCFOの発言と質疑応答の全文書き起こしも、IRサイトで誰でも無料で読めます。書き起こしだけでもかなりの分量ですが、面白かったのは前半25分、社長の出木場久征さんが話したIndeedの「マッチングの考え方」のところでした。

リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料の表紙。右側に書き起こしへのQRコード
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.1。右下のQRコードから書き起こしに飛べる

以下は、求人サービスの中の人ではない、いち開発者の読み方です。数字の細かい分析は証券会社のレポートに任せて、「この会社は仕事探しをどう捉えているのか」に絞ります。

一番驚いたのは、米国のIndeedの有料求人で、応募の7割が「検索して見つけた」ではなかったという数字。そして社長が「求職者側のデータをいくら集めても、あまり意味がない」と言い切っていたこと。

売上4兆円、利益の7割はIndeed

売上収益とEBITDA+Sの推移グラフ。2026年度は売上4.03兆円、EBITDA+S 9,490億円・利益率23.5%の見通し
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.3

2026年3月期(2025年度)は売上収益3.69兆円で、売上も利益も通期で過去最高。今期(2027年3月期)の見通しは売上4.03兆円(前年比+9.0%)、EBITDA+Sは9,490億円(+19.5%)です。

EBITDA+S(イービットディーエー・プラス・エス)という聞き慣れない言葉が出てきますが、これは「本業でどれだけ稼いだか」を見るための利益の一種です。利息・税金・設備の減価償却費を差し引く前の利益(EBITDA)に、社員に株で払う報酬の費用(S=Share-based payment)も足し戻したもので、リクルートが自社の実力を測るために使っている指標です。売上に対するその割合が23.5%。100円売って23.5円が本業の稼ぎ、と読めば大きくは外れません。

そしてCFOの荒井淳一さんの説明で一番大事なのは、この利益の約70%を「HRテクノロジー事業」が稼いでいるという点です。HRテクノロジー事業とは、IndeedとGlassdoorを中心とする事業のこと(日本の求人メディアや人材紹介もここに入ります)。売上全体に占める割合は40%程度ですが、人材派遣事業の売上の大半は派遣スタッフに渡す給与なので、それを除いた実質的な稼ぎで見るとHRテクノロジーが65%、利益では70%になる、と説明されていました。今期はこの事業だけでドル建て売上100億ドル、日本円で1.5兆円を超える見込みだそうです。

つまりリクルートホールディングスという会社の値段は、ほぼIndeedの値段です。だから説明会の前半25分が丸ごとIndeedのAIの話になる。投資家が一番聞きたいのがそこだから、という構造です。

社長のプレゼンは「タブレットが全部無料だったら」から始まる

出木場さんのプレゼンは、決算の数字ではなくタブレット端末を買った話から始まります。仕事柄移動が多いので映画をダウンロードしたい、容量は多いほうがいい、画面は大きすぎても小さすぎても困る、値段の差も大きい。気づいたら1時間悩んでいた。家電を選ぶのは意外と難しい、と。

全商品の値札がFreeになった通販サイト風の画面。求人への応募が無料であることのたとえ
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.5。「これ全部無料だったらどうですか」

そこでスライドに出てくるのが、全部の値札が「Free」になった通販サイトの画面です。「これ全部無料だったらどうですか」。無料なら一番いいものを選べばいい。悩む必要がない。そして、これが求人の世界だと言うわけです。

求人への応募はタダです。今の給料の2倍でも3倍でも、週2日勤務でも、条件に関係なく何件でも応募できる。出木場さんいわく「日本人の方はまじめなのでそんなにいっぱい応募しないんですが、世界でみると皆さんめちゃくちゃ応募してます」。応募ボタンを押すこと自体にコストがないので、求職者側の「この仕事がいい」という意思表示は、あまり情報量を持たない。

Two-Sided Decision-Making Marketplace。求職者と企業の両方が意思決定する図
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.7

だから、求人のマッチングは通販のおすすめとは構造が違う、という話になります。スライドでは「Two-Sided Decision-Making Marketplace」(両側が決める市場)と呼ばれていました。求職者が「行きたい」と言うだけでは成立せず、企業側が「この人を採る」と決めて初めてマッチングになる。どちらもYesと言わないといけない。当たり前のようでいて、この前提を置くと次の話がかなり大胆になります。

「求職者側のデータをいくら集めても、あまり意味がない」

書き起こしから、そのまま引きます。

「HRのマッチングというのは、ユーザー側のデータをどれだけとっても実はあんまり意味がない。企業側がその人を好きと思うかどうかという事なので」

── 出木場久征社長、2026年3月期通期決算説明会の書き起こしより

求人検索サービスの社長が「求職者のデータは意味が薄い」と言うのは、なかなか思い切っています。求職者がどんな仕事を見て、どれを保存して、どれに応募したか。普通に考えれば、それこそがおすすめの材料になりそうです。でも上の前提に立つと、応募は無料で意思表示にならず、最終的に採否を決めるのは企業なのだから、「この企業は、このポジションに、どういう人を採ってきたか」というデータのほうが圧倒的に効く、という理屈になります。

企業向けAIツール Talent Scout の画面。給与レンジが地域相場より低いと指摘している
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.8

だからこの2〜3年、AIの開発投資は企業側のツールに寄せてきた、と説明されていました。スライドに出ているのは「Talent Scout」という企業向けのAIアシスタントで、求人を出すときに「その給与レンジは地域の相場より低いので応募が集まりにくい」と教えてくれるような機能です。企業がこれを使えば使うほど、「この会社はこういう条件でこういう人を採る」というデータがIndeed側に溜まる。それがマッチングの精度を上げる燃料になる。

ここが、この説明会全体の一番の骨組みです。AIをどこに入れるか、という話に見えて、実は「どちら側のデータを取りにいくか」という話をしている。

シェフが辞めたレストランの話

レストランのスタッフ集合写真から、ホールスタッフ1人とシェフ1人が白抜きになっている図
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.9(画像は生成AIによるもの、と資料に注記あり)

ホールスタッフが10人、シェフが2人のレストランを経営していると考えてください、と例え話が始まります。ホールが1人辞めても、曜日によってはお客さんを待たせるかもしれない程度で、店は開けられる。でもシェフが2人のうち1人辞めたら、店が回らない。こういうとき経営者は「コストはあまり関係ないから、腕のある人を1日でも早く採用したい」と言う。

米国のトラック会社では運転手よりトラックの台数のほうが多い、AIデータセンターを建てているのに建設作業員が見つからない。そういう「採用がそのまま売上に直結する」場面がたくさんある、という話でした。

Indeedで「French chef」と検索した結果画面。最上位がSponsored Job、その下がFree Job
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.10

そういうときに使われるのが有料の求人広告(Sponsored Job)です。「フレンチシェフ」と検索したときに、検索結果の上のほうに出てくるあれ。Indeedの収益の柱はこの有料枠で、企業はクリックや応募の数に応じて課金されます。ここまでは多くの人が知っている話だと思います。

応募の7割は「検索」からじゃない

US Sponsored Job Apply Start の円グラフ。Job Search 30%、Recommendation + AI tool 70%(2026年3月)
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.11

「この数字をこれまで出していませんが」と前置きして出てきたのがこの円グラフです。米国の有料求人への応募開始のうち、検索結果から応募したのは30%。残りの70%は「Recommendation + AI tool」、つまりおすすめ経由と、企業側のAIツール経由。

具体的には、企業が使っているAIソーシング(候補者を探す機能)やAIスクリーニング(応募者を絞る機能)のデータをもとに、「この企業があなたにこの仕事に応募してほしいみたいですよ」というメールを送ったり、画面にポップアップを出したりしている、と説明されていました。求職者が検索窓に言葉を打って探す、という私たちがイメージする「求人検索サイト」の使われ方は、有料求人に限れば3割しかない。

これは驚きました。Indeedは「求人版のGoogle」と呼ばれてきたサービスで、検索こそが本体だと思っていたからです。ただ、この数字を読むときに気をつけたい点が2つあります。

  • 米国の、有料求人だけの数字です。スライドのタイトルは「US Sponsored Job Apply Start」。無料で掲載されている求人や、日本の数字は含まれていません。
  • 出木場さん自身が「日本人はあまり応募しない、世界はめちゃくちゃ応募する」と言っているとおり、日本の求職者は行動が違う前提が置かれています。日本のサービスにそのまま当てはめるのは早いと思います。

それでも、「検索して探す」以外の経路がここまで太くなっているという事実は、求人に限らずいろいろなサービスに効く話だと思います。人が能動的に探す量には限りがあって、その外側に「向こうから来る」経路をどれだけ作れるか。しかもその経路の中身が、求職者の行動履歴ではなく企業側のデータで作られている。前の節の理屈が、数字になって出てきています。

「もっと応募が来ますよ」では、企業は予算を増やしてくれない

Free・Standard・Premiumの3プラン。Qualified Applicationsが1.9倍、1.5倍、Time to Hireが50%短縮
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.12

料金プランは無料掲載、Standard、Premiumの3段階で、Standardにすると「質の高い応募(Qualified Applications)」が無料の1.9倍、Premiumにするとさらに1.5倍。そして採用までの時間が50%短くなる、という図です。

語られた昔話が面白かった。以前は、企業が「すぐ採用しないといけない」と予算を増やすと、1つのポジションに200人、300人、400人と応募が来た。量を増やすことが価値だった。するとレストランから「500人も応募されても選ぶのが大変になる。予算を増やしにくい」と言われる。応募が増えることは、企業にとってはコストでもある。選考の手間が増えるだけで、採用が早くなるわけではないからです。

だから今のPremiumは「応募が増えます」ではなく「この人はすぐ採用したい、と思える応募が来ます」という商品として売っている。訴求の軸を「量」から「質と速さ」に変えた、ということです。

「採用時間50%短縮」の定義は資料の脚注にちゃんと書いてあります。Premiumの有料求人と無料掲載の求人の比較で、求人が作成されてから最初の採用が報告されるまでの日数の中央値。2026年1〜3月の米国データ。こういう脚注を読むのも決算資料の楽しみのひとつで、「50%速い」が何と何を比べた数字なのかが分かると、数字の重みが変わります。

求職者のいちばんの不満は「いい仕事がない」ではなく「返信が来ない」

スマートフォンとパソコンの前で返事を待つ求職者2人の写真
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.13

求職者側の、世界中で一番多い不満は「いっぱい応募したのに誰も返信してくれない」「本当に募集しているんですか」だそうです。これは分かる。私も転職活動をしたとき、落ちたことより連絡が来ないことのほうが応えました。

Response Time of Sponsored Job vs Free Job。有料求人は返信が45%速い(2026年3月)
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.14

そしてこの不満を解決するのも、企業側のデータだと言います。有料求人を出している企業は、無料掲載の企業より45%早く返信する。有料で出しているということは、それだけ採用を急いでいるということだからです。「どの企業の採用意欲が高いか」は、他所のサイトから求人情報をかき集めても分からない。Indeedの中でお金を払っている、という行動そのものが一番強いシグナルになる。

Monthly Active Job Seekers on Indeed。2026年3月は前年比+18%
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.15

結果として、2026年3月のIndeedの月間アクティブユーザー数は前年比+18%で過去最高だった、と続きます。「みんなAIチャットに聞くようになってIndeedに来なくなるのでは」とよく言われるそうですが、少なくとも今の数字はその逆だと。

単価が25%上がっても怒られない理由

US ARPJ Growth Rate。FY2025のQ1 +11%、Q2 +15%、Q3 +19%、Q4 +25%
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.16

米国のUS ARPJ(求人1件あたりの売上。Average Revenue Per Jobの略で、企業が求人1件にいくら払っているかの目安)は、第4四半期に前年比+25%。四半期ごとに11%、15%、19%、25%と伸び幅が大きくなっています。

「そんなに値上げしたら文句が出るんじゃないですか」とよく聞かれるそうで、その答えとして出てきたのが次の2枚です。

Global HR Matching TAM in 2025。合計3,020億ドルのうち求人広告・採用ツールは340億ドル
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.17

人材マッチングの市場全体は3,020億ドル。そのうちIndeedのような求人広告と採用ツールは340億ドルで、全体の1割ちょっとしかない。残りは人材派遣、人材紹介、エグゼクティブサーチ、そして企業が社内で採用担当者を抱えて回している分。オンラインの求人広告はまだ小さなパイで、大半はオフラインで動いている、という図です。

Fee Spent on HR Matching。Indeedは年収の1%未満、人材紹介は20〜25%、エグゼクティブサーチは最大40%
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.18

そして手数料の比較。Indeedに払う広告費は採用した人の年収の1%未満。人材紹介は年収の20〜25%、エグゼクティブサーチは最大40%。企業はまずIndeedで無料で試し、次にお金を払い、それでも採れないから「高いのは分かっているけど」と紹介会社に頼む。そのオフライン側の予算を、AIで採用スピードを上げることで取ってきている。だから単価が上がっても、企業から見た採用コスト全体は下がっている、という説明でした。

なるほど、と思う一方で、証券アナリスト向けの追加説明会では「US ARPJは結果の数字で、いろいろなものが入った分子を件数で割っただけ。いつまで値上げを続けるのかという短絡的な議論になりがちなので、背景を毎四半期話してほしい」という注文も出ていました。CFOの荒井さんは「1年前は数字を出せと言われ、今度は背景を話せと言われる。分かりやすくなったと受け取ります」と応じていて、こういう緊張感のあるやり取りがそのまま読めるのも、書き起こしのいいところです。

質疑応答で面白かったこと

プレゼンの後の質疑応答も、書き起こしで全部読めます。印象に残ったものが3つあります。

「AIで失業率が20〜30%になる」説への反論

米国の労働市場の見通しを聞かれて、出木場さんはダボス会議などで最近よく聞く「AIで失業率が20%、30%になる」という話に対して、「どこからどれぐらい減ったら20%になるのか見ていただくと、いかに何のデータのバックアップもなく言っているかが分かる」と、かなりはっきり言っていました。IT産業だけを見ればその業界内で仕事が2割減ることはあり得るが、IT産業で働く人は労働者全体のごく一部。それより、ベビーブーマー世代が引退して、ヘルスケアや電気工事士のような仕事の担い手が減っていくインパクトのほうが大きい、とデータで話していました。

「AIが代わりに1,000件応募します」というサービスを、企業は嫌がっている

「Simplify Hiring(採用をシンプルにする)」という同社のミッションについて聞かれた流れで出てきた話です。米国には月額を払うとAIが代わりに1,000件、2,000件応募してくれるスタートアップがいくつもあるそうで、企業側はこれをものすごく嫌がっている。応募が来すぎてコストが増え、bot対策にお金をかけ、いざ「この人いいな」と思っても面接に来ない。「AIの自動応募みたいなのが、何にも効率を良くしていない良い例」と評していました。Indeedも自動応募のテストはしているが、両側のデータを見て「企業にとってもこの人がぴったりで、求職者にとってもいい」ものだけを送っている、と。

「ダッシュボードは、人間が見るから必要だった」

「AIリストラ」について聞かれた場面で、出木場さんは大手IT企業が何万人リストラしたというニュースが出ていても従業員数は減っていない、と指摘したうえで、「AIはjob killerではなくjob re-organizer」という言い方を紹介していました。そして例として出てきたのが、社内の売上ダッシュボードの話。あれは人間が見るから必要だったのであって、AIに渡すなら表示すること自体が要らなくなる。「ここだけAIで自動化して、ここだけリストラを考えよう」ではなく、お客さんに価値が届くまでの過程を最初から設計し直している、と話していました。これは私自身、耳が痛い話でもありました。

HR Technology Mid-term Growth Ambition。売上成長10%以上、採用需要回復時は20%以上、EBITDA+S利益率50%以上
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.20

中期の目標として示されたのは、HRテクノロジー事業の売上成長率10%以上、採用需要が回復すれば20%以上、EBITDA+Sの利益率50%以上。CFOの荒井さんは「十分可能だと私も考えている」と言いつつ、今期については「急いては事を仕損ずる」と繰り返していて、新しいプランや価格の投入タイミングは慎重に決める、という姿勢でした。

31 hires per minute。ストップウォッチのイラスト
出典: リクルートホールディングス 2026年3月期通期決算説明会 プレゼンテーション資料(2026年5月15日) p.21

プレゼンの締めは「1分間に31件の採用」。2秒に1人がIndeed経由で採用されている計算だそうです。

読んで思ったこと

ひとつ目は、「どうやって届けるか」より「何を届けるか」の話だったということ。応募の7割がメールやポップアップ経由だと聞くと、「じゃあメールを増やそう」と考えたくなります。でも出木場さんが25分かけて説明していたのは配り方ではなく、その中身を作っている企業側のデータの話でした。同じ通知でも、何百万社の採用実績から「この会社はあなたを採りそうだ」と言えるのと、閲覧履歴から「似た求人があります」と言うのとでは、まったく別のものです。手段だけ真似ても、中身が違えば結果は違う。これはいろいろなサービスに当てはまる話だと思います。

ふたつ目は、「両側が決める」という前提の置き方。通販なら買い手が決めれば取引は成立します。でも求人は、求職者と企業の両方がYesと言わないと成立しない。この一点から、「どちら側のデータが効くか」「どちら側にAIを入れるか」「何を売るか」が全部導かれていました。自分が関わっているサービスは、どちら側が決める市場なのか。そこを最初に問うだけで、打ち手の優先順位がかなり変わる気がします。

みっつ目は、経営者が「印象論なのか、データの裏付けがあるのか」を何度も口にしていたこと。AIで失業率30%説にも、AIリストラ報道にも、Indeedは検索だから危ないという見方にも、毎回「数字で見ると」と返していました。そして自社の数字にも脚注を付けて、何と何を比べたかを書いている。当たり前のことのようで、これをずっと続けるのはかなりの体力が要ります。

決算資料は投資家のためのものですが、その会社が自分たちの商売をどう理解しているかを、一番濃く、一番言い訳のできない形で書いた文書でもあります。気になる会社があったら、IRサイトの「決算説明会」を一度開いてみてください。PDFだけでなく、書き起こしまで公開している会社なら、社長の話し言葉がそのまま読めます。数字の羅列に見えたものが、急に人の話に変わります。

リクルートはすでに今期の第1四半期の発表もしているので、この記事の見立てが3か月でどう動いたか、そちらも追って読んでみるつもりです。

参照元

本文中のスライド画像は、いずれもリクルートホールディングスが公開している2026年3月期通期決算説明会のプレゼンテーション資料(2026年5月15日)からの引用です。発言の引用は同社公開の書き起こしによります。

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堀川 慎

Backend Engineer / AWS / Django / Go