WindowsのBitLocker回避脆弱性YellowKey、修正状況と対策まとめ
Windowsの回復環境WinReを悪用し、物理アクセスとUSB1本でディスク暗号化「BitLocker」やUEFI/BIOSパスワードを数分で突破できる欠陥(CVE-2026-45585、通称YellowKey)が公開されました。紛失・盗難PCの「暗号化済みだから安全」が崩れます。Microsoftは2026年6月の月例更新で修正、即適用を。
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Windowsの回復環境WinReを悪用し、物理アクセスとUSB1本でディスク暗号化「BitLocker」やUEFI/BIOSパスワードを数分で突破できる欠陥(CVE-2026-45585、通称YellowKey)が公開されました。紛失・盗難PCの「暗号化済みだから安全」が崩れます。Microsoftは2026年6月の月例更新で修正、即適用を。
Windowsのディスク暗号化「BitLocker(ビットロッカー)」には、盗まれたり置き忘れたりしたパソコンをUSBメモリ1本と数分の物理アクセスで突破できてしまう脆弱性(情報セキュリティ上の欠陥)がありました。管理番号は CVE-2026-45585(通称「YellowKey」)。対象はWindows 11(24H2 / 25H2 / 26H1)とWindows Server 2025で、Microsoftが2026年6月10日の月例更新で修正済みです。Windows Updateをこの更新以降まで当てていれば、この欠陥への追加の対応は不要です。起動時に暗証番号の入力を求める「TPM+PIN」構成の端末も、もともと悪用できません。
欠陥の舞台は、Windowsの「回復環境(WinRE)」です。USBメモリ1本と物理的なアクセスがあれば、攻撃者はパソコンを細工した経路でWinREへ入り込み、本来求められるはずの管理者確認をすり抜けて、BitLockerの暗号化や、UEFI/BIOSに設定したパスワード保護を回避できました。実証コード(PoC)は公開済みで、日本では JVN(JVNVU#90386605) が、米CERT/CCも VU#226679 として注意喚起を出しています。深刻度はMicrosoft評価でCVSS 6.8ですが、「暗号化していたから安全」という前提を崩す点で実害が大きい欠陥でした。
公開から約2ヶ月がたった2026年7月23日時点で、米政府CISAが公開する「実際に攻撃されている脆弱性リスト(KEV)」への登録はなく、実際の悪用もMicrosoft公式では確認されていません。一方、2026年7月14日の月例更新では、同じくBitLockerの保護を回避する別の欠陥 CVE-2026-50661 が新たに修正されました(後述)。YellowKeyだけ塞いで終わりにせず、Windows Updateを毎月の最新まで当て続けることが、そのまま対策になります。
| 脆弱性番号 | CVE-2026-45585(YellowKey / JVNVU#90386605) |
| 対象 | Windows 11(24H2 / 25H2 / 26H1) Windows Server 2025(Server Core含む) |
| 深刻度 | CVSS 6.8(Microsoft評価) |
| 何ができる | BitLocker暗号化・BIOS/UEFI パスワードの回避 |
| 攻撃の条件 | 端末への物理アクセス+USB (ネット越しでは不可) |
| 修正状況 | 2026年6月10日の月例更新で修正済み (適用済みなら対処不要) |
| 悪用状況 | PoC公開済み・CISA KEV未登録 (2026年7月23日時点) |
この欠陥は誰に、どんな被害をもたらすのか
この欠陥が刺さるのは、紛失・盗難にあったノートPCや、持ち主が席を外した数分のあいだに端末へ触れる攻撃者です。セキュリティの世界では、不在中にこっそり端末を操作する手口を「Evil Maid(イービルメイド=悪意あるメイド)攻撃」と呼びます。ネット越しに誰でも、という性質ではなく、現物に手が届くことが前提です。
その相手は、USBメモリから端末を起動して回復環境に入り込み、暗号化されていたディスクの中身や、BIOSパスワードで守っていたはずの設定を、本人になりすますことなく読み出します。研究者の実証では、必要なのはUSBメモリ1本だけで、数分のうちに鍵を再構成してロックを解いたと報告されています。
被害の本質は、「暗号化していたから大丈夫」という安心が崩れることです。これまで企業の端末紛失は、BitLockerで暗号化していれば「中身は守られている=影響は限定的」と整理できました。ところがこの欠陥が成立すると、紛失・盗難した1台から、保存していた顧客データ・設計情報・社内システムへのログイン情報まで抜き取られる恐れがあります。個人にとっても、盗まれたノートPCの中の写真・書類・パスワードが、暗号化ごしでも危険にさらされるということです。だからこそ、後述する更新と設定の見直しが要ります。
この種の「起動の入口」を狙う攻撃は近年とくに増えています。当サイトでも、セキュアブート(正規のOSだけを起動させる仕組み)を回避する欠陥を取り上げました。パソコンの「いちばん最初に動く部分」は、守りの土台であると同時に、攻撃者にとって魅力的な突破口になっています。
技術的に何が起きているのか

鍵になるのは、Windowsの回復環境(WinRE:Windows Recovery Environment)です。WinREは、Windowsが起動しなくなったときの修復用に用意された特別な起動モードで、通常のWindowsとは別の経路で立ち上がります。CERT/CCのVU#226679によると、このWinREへ入る代替の起動経路では、通常のOS起動時に効くUEFI/BIOSのセキュリティ確認が一貫して適用されないことがあり、起動順を指示する「BootNext」という変数が認証されないため、ファームウェアのパスワードをすり抜けられます。
BitLockerの突破はこの延長線上にあります。公開された手口では、端末を細工した起動オプションで強制的にWinREへ落とし込み、アクセス制御の抜けを突いてコマンド画面を開き、セキュリティチップ「TPM」が保持する情報(PCR値)を読み出してディスクの暗号鍵を組み立て直します。早い段階で動く「BootExecute」の仕組みに紛れ込ませる手口も報告されています。一連の流れは2分足らずで完了するとされ、必要な道具はUSBメモリだけです。
この問題はWindows単体の話にとどまらず、PCのファームウェア(UEFI/BIOS)側の作りにも関係します。CERT/CCの調整では、AMI・Insyde・Intel・Supermicroは対策済みまたは非該当とされる一方、GIGABYTEは影響ありで「設計上のトレードオフ」と判断したと整理されています。つまり、Windowsの更新を当てたうえで、お使いの機種のファームウェア側の状況も確認するのが安全です。
いま分かっていること・まだ分からないこと
✓ 確認済みの事実
- ✓CVE-2026-45585(YellowKey)はWinRE経由でBitLocker/UEFI・BIOSパスワードを回避でき、物理アクセスが前提(CERT/CC / Microsoft)
- ✓実証コード(PoC)が公開済み。研究者「Nightmare Eclipse」が0dayとして公表(Help Net Security)
- ✓Microsoftは2026年5月20日に暫定の緩和策(スクリプト)を公開し(SecurityWeek)、2026年6月10日の月例更新で修正。対象はWindows 11(24H2/25H2/26H1)・Server 2025
- ✓2026年7月23日時点で、CISAの「実際に攻撃されている脆弱性リスト(KEV)」に未登録。実悪用はMicrosoft公式では確認されていない
? 留意点
- ?ネット越しの遠隔攻撃はできない(物理アクセスが必須)。ただし紛失・盗難・持ち出しでは現実的な脅威
- ?ファームウェア側の対応はメーカーによって差がある(GIGABYTEは影響ありと整理)。機種ごとの確認が要る
- ?一部の報道には「修正前に悪用された」との記述もあるが、Microsoft公式・KEVでは裏付けが取れていない
その後の動き:2026年7月の月例更新でも別のBitLocker回避が修正
YellowKeyの修正で話は終わりませんでした。2026年7月14日の月例更新(約570件の修正を含む)には、BitLockerの保護を回避できる別の欠陥の修正が含まれています。
CVE-2026-50661:手口が公表済みだったもう1件のBitLocker回避
CVE-2026-50661 は、セキュリティ機能の回避(Security Feature Bypass)に分類される欠陥で、深刻度はCVSS 6.1。YellowKeyと同じく端末への物理アクセスが前提です。修正の時点で手口が公表されていた「公開済みゼロデイ」として扱われましたが、実際の悪用は報告されておらず、2026年7月23日時点でKEVにも登録されていません。Rapid7 やTenableは、YellowKeyを公表したのと同じ研究者(Chaotic Eclipse / Nightmare Eclipse)が公表していた「GreatXML」と呼ばれる手口に対応する可能性を指摘しています。
BitLockerとWinREの周辺は、いま研究者が集中的に調べている領域で、同種の欠陥は今後も見つかる可能性があります。個別のCVE番号を追いかけるより、月例更新を毎月当てる運用にしておくのが確実です。
何をすべきか
最優先は、Windows Updateを最新の月例更新まで適用することです。YellowKey(CVE-2026-45585)は2026年6月10日の月例更新で、後続のCVE-2026-50661は2026年7月14日の月例更新で塞がれています。Microsoftの更新ガイド(CVE-2026-45585)を参照しつつ、6月の更新で止まっている端末は7月の月例更新まで進めてください。そこまで当たっていれば、この記事で扱った欠陥はどちらも塞がれています。
そのうえで、暗号化の守りを底上げする設定も有効です。BitLockerを「TPM+PIN」(起動時に暗証番号の入力を求める方式)にしておくと、たとえ似た手口が出てきても、PINを知らない攻撃者には鍵が渡りません。なお、修正前のつなぎとしてMicrosoftが2026年5月20日に案内していた緩和策(回復環境WinREの一時無効化 reagentc /disable、起動時の管理者認証、USBメディアやEFIシステムパーティションからの起動制限)は、修正を適用済みなら続ける必要はありません。特にWinREを無効化したままだと通常の修復機能まで使えないため、戻し忘れがないか確認してください。組織で多数の端末を管理している場合は、月例更新の適用状況を一覧で確認し、紛失・盗難時の対応手順も「暗号化済みだから安全」を前提にしないよう見直しておくとよいでしょう。最後に、物理的な持ち出し・放置を減らす基本的な端末管理も、この種の攻撃には確実に効きます。
Windows更新後にBitLockerの回復キーを求められたら(攻撃とは別の事象)
ここからは、YellowKeyという「攻撃」とは切り分けて読んでください。2026年6月以降の月例更新を当てた直後に、BitLockerの回復キー(48桁の数字)の入力をいきなり求められた、あるいは起動できなくなった、という事象が一部の端末で起きています。これは欠陥を突かれたのではなく、更新の副作用です。落ち着いて対処すれば、データは失われません。
混同しやすい2つを区別する
- ①攻撃(YellowKey / CVE-2026-45585):物理アクセスとUSBで暗号化を突破される欠陥。6月更新で修正済み。
- ②更新後の回復キー要求:更新でセキュアブートの状態が変わり、BitLockerが「念のため確認」として回復キーを求める現象。攻撃ではなく、BitLockerが無効化されたわけでもない。
なぜ起きるのか。2011年に発行されたセキュアブート(正規のOSだけを起動させる仕組み)の証明書が、2026年6月から順次期限切れを迎えています(Microsoftの解説にある「Microsoft Corporation KEK CA 2011」は2026年6月24日に期限切れ済み)。Microsoftはこれに備え、月例更新で2023年の新しい証明書への移行を進めています。更新でWindowsの起動部分(ブートマネージャー)が変わると、セキュリティチップTPMが起動状態を記録する値「PCR7」が変化し、BitLockerが「起動構成が変わった=改ざんの疑い」と判断して回復キーを求める、という流れです。Microsoftは更新自体はBitLockerに対応済み(自動で鍵を再シール)としていますが、一部の構成では回復要求が出ます。HP EliteBook 840 Gシリーズなどで報告が目立ちます。
該当しやすい条件。OSドライブでBitLockerが有効で、グループポリシー「ネイティブUEFIファームウェア構成のTPMプラットフォーム検証プロファイルを構成する」でPCR7を検証対象に含み、かつmsinfo32(システム情報)の「PCR7バインドのサポート」が「不可能(Not Possible)」になっている端末で起きやすい、と整理されています。自組織の端末がこの条件に当てはまるかを先に確認すると、影響範囲を見積もれます。
回復キー(48桁)の探し方
| 保管先 | 確認手順 |
|---|---|
| 個人(Microsoftアカウント) | account.microsoft.com/devices/recoverykey に サインインして表示 |
| 組織(Microsoft Entra ID) | ID > デバイス > すべてのデバイス > 対象端末 > BitLockerキー > 回復キーを表示 |
| 組織(Intune管理センター) | デバイス > 対象端末 > 監視 > 回復キー > 回復キーを表示 |
| 組織(Active Directory) | 対象PCのコンピューターオブジェクトの BitLocker回復情報を参照 |
ユーザー自身に解決させる場合は、Intune企業ポータルからの自己取得も使えます。組織展開の前に、全端末の回復キーがEntra ID/Active Directoryに退避(エスクロー)されているかを必ず確認しておくと、回復要求が一斉に出ても慌てずに済みます。
回復要求を防ぐ・解消する(PCR7の再シール)
回復キーを入力すればその場は起動します。再発を防ぐ、あるいは更新前に予防するなら、BitLockerを一時中断(suspend)してから更新・再起動し、再開(resume)するのが確実です。中断中に再起動すると、新しいセキュアブートの状態に鍵が結び直されます。管理者権限のコマンドプロンプトでの操作は次の通りです。
manage-bde -protectors -disable C: -RebootCount 0 (中断。手動で再開するまで維持)
― 更新を適用し、再起動 ―
manage-bde -protectors -enable C: (保護を再開)
GUIなら「コントロールパネル > BitLockerドライブ暗号化」で対象ドライブの「保護の中断」を選び、更新・再起動後に「保護の再開」を選びます。多数の端末を管理する場合は、まず該当条件の端末を切り分け、回復キーのエスクローを確認したうえで、中断→更新→再開を計画的に流すのが安全です。
なお、同じ2026年6月の月例更新では、もう1件のBitLocker回避 CVE-2026-50507 も修正されています。こちらは起動時のPIN(暗証番号)を設定していない「TPM単独」構成で特に効くとされるため、TPM+PINへの切り替えはYellowKey対策としても二重に有効です。実際に悪用が確認された脆弱性は米CISAの「実際に攻撃されている脆弱性リスト(KEV)」に追加されますが、2026年7月23日時点で、この記事で触れたCVE-2026-45585・50507・50661はいずれも登録されていません。最新の登録状況はCISA KEVダッシュボード(日本語版)で確認できます。
まとめ
CVE-2026-45585(YellowKey)は、Windowsの回復環境WinREを悪用し、物理アクセスとUSB1本でBitLockerのディスク暗号化やUEFI/BIOSパスワードを数分で突破できた欠陥です。対象はWindows 11(24H2 / 25H2 / 26H1)とWindows Server 2025で、Microsoftが2026年6月10日の月例更新で修正済み。公開から約2ヶ月の2026年7月23日時点で、KEV登録や実際の悪用の確認はありません。Windows Updateをこの更新以降まで当てていれば、追加の対応は不要です。
ただし2026年7月の月例更新でも別のBitLocker回避(CVE-2026-50661)が修正されており、この領域の欠陥探しは続いています。月例更新を毎月当てる運用と、BitLockerのTPM+PIN化、端末の物理管理の見直しをあわせて進めてください。パソコンの「いちばん最初に動く部分」を守ることが、暗号化を本当に意味のあるものにします。
更新履歴
- ▸2026年7月24日:修正から1ヶ月半が経ったことを受け、記事全体を「現状の解説」として再構成。対象製品をMicrosoftの更新ガイドに合わせてWindows 11(24H2/25H2/26H1)・Windows Server 2025に訂正(Windows 10・Server 2022は対象外)。2026年7月の月例更新で修正された別のBitLocker回避 CVE-2026-50661 と、2026年7月23日時点のKEV・悪用状況を追記。
- ▸2026年6月29日:2026年6月の月例更新後に「BitLockerの回復キーを求められる」相談が増えたことを受け、攻撃(YellowKey)とは別事象として、原因(セキュアブート証明書の更新によるPCR7変化)・回復キーの探し方・中断/再開での再シール手順を追記。CVE-2026-50507とCISA KEVへの導線も追加。
- ▸2026年6月23日:初版公開。
参照元
- ・JVN — JVNVU#90386605(WinREによるUEFI/BIOSパスワード制限回避)
- ・Microsoft — Windows のセキュアブート証明書の期限切れと CA の更新
- ・Microsoft — セキュアブート証明書が期限切れになるとき
- ・Microsoft Learn — BitLocker 回復の概要(回復キーの保管先)
- ・NVD — CVE-2026-50507(第2のBitLocker回避、6月更新で修正)
- ・CERT/CC — VU#226679
- ・Microsoft MSRC — CVE-2026-45585
- ・Help Net Security — YellowKey の緩和策
- ・SecurityWeek — YellowKey向け緩和策の展開
- ・BleepingComputer — 2026年7月の月例更新(約570件修正)
- ・Rapid7 — Patch Tuesday July 2026(CVE-2026-50661)
- ・BleepingComputer — BitLocker 0day、PoC公開
- ・関連:セキュアブート回避の脆弱性(当サイト)

堀川 慎
Backend Engineer / AWS / Django / Go