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App Store審査が最長45日待ち、AIアプリ激増でパンク状態

App Storeのアプリ審査が異常事態。通常24時間以内のはずが最長45日待ち。vibe codingの普及で申請数が24%増加し、審査がパンク状態に。Appleは公式に沈黙を続けている

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kkm-horikawa

kkm

Backend Engineer / AWS / Django

2026.03.307 min11 views
この記事のポイント

App Storeのアプリ審査が異常事態。通常24時間以内のはずが最長45日待ち。vibe codingの普及で申請数が24%増加し、審査がパンク状態に。Appleは公式に沈黙を続けている

App Storeのアプリ審査が異常な状態になっています。通常は24時間以内に終わるはずの審査が、最長45日待ち。1ヶ月以上「審査待ち」のまま放置されているアプリが続出しています。

原因は、AIでアプリを作る「vibe coding」の爆発的な普及です。誰でもアプリを作れる時代が来た結果、App Storeに申請が殺到し、審査がパンクしました。Appleは公式に沈黙を続けています。

どのくらい遅れているのか

具体的な数字で見ると、事態の深刻さがわかります。

プラットフォーム通常の審査時間現在の審査時間
iOS24〜48時間7〜30日以上
macOS1〜2日5〜10日以上
tvOS1日程度比較的短い

Apple Developer Forumsには悲鳴のようなスレッドが乱立しています。「Long delays in App Review」「App stuck in Waiting for Review」といったタイトルのスレッドが、2026年2月から3月にかけて少なくとも6件以上立っています。

最も深刻な事例は、Apple Communityに投稿された報告です。2025年12月12日にアプリを申請し、2026年1月26日時点で45日間「Waiting for Review」のままだったとのこと。

ばらつきも極端です。開発者のMichael Tsai氏のブログによると、macOSアプリが10日間待機した末にリジェクトされ、再申請したら20分で承認されたケースもあります。基準が不透明なまま、開発者は振り回されています。

なぜ遅れているのか。「vibe coding」という新しい波

直接の原因は、App Storeへの申請数の急増です。

「vibe coding(バイブコーディング)」という言葉をご存知でしょうか。ChatGPTやClaude、CursorといったAI開発ツールに「こんなアプリを作って」と話しかけるだけで、AIがコードを書いてくれる開発手法です。プログラミングの知識がなくても、アイデアさえあればアプリが作れる時代になりました。

その結果、App Storeへの新規申請数が急増しています。

新規アプリ申請数前年比
2016年100万件(過去最高)-
2023年42.4万件2012年以来の最低
2024年44.8万件+5.7%
2025年55.7万件+24%

AppFiguresのデータによると、2025年の申請数は前年比24%増の55.7万件。2016年のピーク以来、最大の増加幅です。1日あたり平均1,865件の新しいアプリがリリースされている計算です。

日本語訳

vibe codingがApp Storeに新しいiOSアプリの奔流を放った。過去3年間ほぼゼロ成長だったのが、12月には前年比60%の急増(年間ベースでは24%増)

テスラのAI責任者だったAndrej Karpathy氏が「Swiftを書いたことがないのに、vibe codingで1時間でiOSアプリが動いた」と投稿したことも話題になりました。プログラミング経験のない人がアプリを作れるという事実が、多くの人を刺激しています。

AIが作ったアプリはどんなものか

現在、App Store上のアプリの27.1%がAI機能を搭載しています。4本に1本以上です。

9to5Macの報道によると、2025年のApp StoreにおけるAIアプリからの収益は約9億ドル(約1,350億円)。そのうちChatGPT関連が約75%を占めています。

一方で、質の問題も深刻化しています。起業家のGreg Isenberg氏はこう指摘しています。

日本語訳

「vibe coding」という言葉はもうやめたい。実際に起きていることを過小評価している。多くの人が本物のプロダクトを作っている。これはスケールする新しいタイプのソフトウェア企業の始まりだ

本気でプロダクトを作っている人もいれば、AIに丸投げした粗悪なアプリを大量に申請している人もいる。玉石混交の申請が審査チームに押し寄せている状況です。

Appleは何をしているのか

審査遅延について、Appleは公式声明を出していません。

Developer Forumsでは「調査中です、App Store Connectでフォローアップします」という個別対応のみ。Appleサポートに電話した開発者への回答は「はい、把握しています、申し訳ありません」だったとのことです。

一方で、Appleは別の動きを見せています。2026年3月18日、2つの有名なvibe codingアプリのアップデートをブロックしました。

アプリApple側の主張影響
Replitアプリの機能を変更する
コードの実行を禁止
1月以降更新不可
ランキング1位→3位に低下
VibecodeApp Store外での
表示変更は規約違反
アプリ生成機能の削除を要求

日本語訳

独占報道: AppleがReplit等のAI「vibe coding」アプリを取り締まり。審査後にコードを変更して機能を変えることはApp Storeの規約違反だと主張

Appleの問題視しているポイントは、「審査を通した後にアプリの挙動が変わる」ことです。vibe codingアプリは、ユーザーの指示でその場でコードを生成・実行するため、審査時とはまったく異なるアプリになりうる。Appleにとっては「審査の意味がなくなる」わけです。

厄介なのは、Apple自身も同時期にXcodeへのAIコーディングツール(OpenAI・Anthropic統合)を搭載していることです。「AIでアプリを作ること」自体は推進しながら、「AIでアプリを動的に変えること」は規制する。この線引きに開発者の間で困惑が広がっています。

開発者は何と言っているのか

Apple Developer Forumsでは、「2月から始まって1ヶ月以上続いている」という声が複数上がっています。Mac向けアプリの開発者であるSpencer Dailey氏は「審査時間が3〜5倍に増えた」と報告しています。

開発者コミュニティからは具体的な改善提案も出ています。「新規アプリだけ人間が審査し、アップデートは自動化してほしい」「実績のある開発者には優先審査キューを設けてほしい」といった声です。

日本語訳

AppleがApp Storeで「vibe coding」アプリをブロックしている。The Informationによると、Appleはこうしたアプリのアップデートを静かに拒否し始めた。対象にはReplitやVibecodeなど、iPhoneで直接アプリを生成できるツールが含まれる

なお、Appleには「Expedited Review Request(緊急審査リクエスト)」という制度が以前から存在しますが、これは重大なバグ修正やセキュリティ対応を想定したものであり、現在の混雑状況への対策ではありません。

アプリを使う側への影響

「アプリを作る人の問題でしょ?」と思うかもしれませんが、使う側にも影響が出ています。

審査が遅れるということは、バグ修正やセキュリティアップデートが遅れるということです。開発者が脆弱性を発見して修正版を申請しても、それが審査待ちで30日間止まっていたら、その間ユーザーは危険にさらされ続けます。

また、新しいアプリやサービスが市場に出てくるスピードも落ちます。App Storeに出すまでに1ヶ月以上かかるなら、スタートアップにとっては致命的です。「Androidで先に出す」という判断をする開発者が増えれば、iPhoneユーザーが後回しにされる可能性もあります。

「誰でもアプリを作れる時代」のApp Storeはどうなるのか

App Storeの審査は、2008年の開設以来、「人間が1つずつ確認する」というモデルで運用されてきました。年間数十万件の申請をさばいてきた実績はありますが、AIが「アプリを作る参入障壁」を一気に下げた今、そのモデルが限界に達しつつあります。

2025年の55.7万件が多いと言っても、2016年の100万件には遠く及びません。つまり、単純な数の問題ではなく、AI生成アプリの「質のばらつき」が審査の負荷を上げている可能性があります。人間では判断が難しいグレーゾーンのアプリが増えれば、1件あたりの審査時間も伸びるでしょう。

Appleは4月以降、iOS 26 / Xcode 26 SDK以上でのビルドを必須化します。これは通常の年次更新ですが、古いSDKで量産されたAIアプリを間接的にふるいにかける効果はあるかもしれません。

ただ、根本的な問いは変わりません。「誰でもアプリを作れる時代」に、「人間が1つずつ審査する」仕組みはいつまで持つのか。Appleが次にどんな手を打つのか、沈黙の先が気になります。

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