App Store審査の45日待ちは解消、それでも新規アプリは上半期56万本
App Storeのアプリ審査が異常事態。通常24時間以内のはずが最長45日待ち。vibe codingの普及で申請数が24%増加し、審査がパンク状態に。Appleは公式に沈黙を続けている
目次
App Storeのアプリ審査が異常事態。通常24時間以内のはずが最長45日待ち。vibe codingの普及で申請数が24%増加し、審査がパンク状態に。Appleは公式に沈黙を続けている
2026年3月、App Storeのアプリ審査が異常な状態になりました。通常は24時間以内に終わるはずの審査が、最長45日待ち。1ヶ月以上「審査待ち」のまま放置されているアプリが続出しました。
原因は、AIでアプリを作る「vibe coding」の爆発的な普及です。誰でもアプリを作れる時代が来た結果、App Storeに申請が殺到し、審査がパンクしました。この時点で、Appleは公式に沈黙を続けていました。
以下は2026年3月30日の公開時点の記録です。この「最長45日待ち」は2026年前半の現象で、8月時点では解消しています。最新の状況は次の追記にまとめました。
【2026年8月17日追記】待ち時間は戻った。しかし問題は形を変えて残っています
公開から約5ヶ月が経ちました。この記事の前提だった「最長45日待ち」は、いま成り立ちません。2026年8月の審査待ち時間は、数時間から数日のレベルに戻っています。ただし、待ち行列が短くなったからといって、この記事が扱った問題そのものが片づいたわけではありません。詰まっていたのは配管であって、流れ込む水の量はむしろ増えています。順に見ていきます。
1. 待ち時間の実測値は数時間〜数日に戻った
アプリのリリース作業を管理するツールを提供する米企業Runwayは、実際の申請から承認までの時間を集計した「Live App Store and TestFlight review times」を公開しています。データ更新日2026年8月12日時点の数字はこうです。
| 時期・区分 | 審査待ちの長さ | 計測主体 |
|---|---|---|
| 2026年前半 (本記事の初版) | 最長45日 /7〜30日超の報告 | 開発者の個別報告 (Apple Community等) |
| 2026年8月 Waiting for Review | 平均14時間29分 | Runway (実測の切断平均) |
| 2026年8月 同・レンジ | 44分 〜 6日21時間 | Runway |
| 2026年8月 In Review | 平均1時間31分 | Runway |
| 曜日別 (最速・最遅) | 水曜6時間8分 /月曜13時間41分 | Runway |
| Appleの公表値 (2026年7月) | 90%が48時間以内 /平均約1.5日 | Apple (メディアへの回答) |
この数字は、そのまま「全開発者の実感」ではありません。Runwayの集計は同社のツールを使っている開発チームの実測値で、切断平均(極端に大きい値と小さい値を除いてから平均を取る方法)を使っています。ツールを導入している時点で比較的成熟した開発組織に偏りますし、切断平均という性質上、ごく一部が何週間も待たされる「ロングテールの遅延」は数字に出にくい。サンプルバイアス(測り方や母集団の偏りによって、実態とずれた数字が出ること)がある前提で読む必要があります。
実際、Apple Developer Forumsには2026年8月時点でも滞留の報告が続いています。8月4日に提出して8月12日時点でまだ「Waiting for Review」だという投稿や、8月1日提出から約10日待っているという報告があります。中央値は戻ったが、外れ値は消えていない——これが8月時点の正確な言い方です。
2. Appleは「90%を48時間以内」と説明した
初版で「Appleは公式に沈黙を続けています」と書いた点は、更新が必要になりました。2026年7月、Appleは米国のビジネスニュースメディアBusiness Insiderに対して数字を挙げて回答しています(The Apple Postによる報道)。要点は3つです。App Storeへの申請の90%は48時間以内に審査していること、過去3ヶ月間に毎週20万件を超える申請を処理していること、平均審査時間は約1.5日であること。遅延そのものを正面から認める言い方ではありませんが、少なくとも沈黙は破られました。
ここで注目したいのは「毎週20万件超」という処理量のほうです。この数字が新規アプリのみを指すのか、既存アプリの更新申請を含むのかは、Appleの回答からは判別できません。それでも、審査という工程がどれだけの物量にさらされているかは伝わります。
3. 新規アプリは、上半期だけで前年通年に並んだ
待ち行列は短くなりました。しかし、行列に並ぶアプリの数は減っていません。むしろ逆です。2026年7月20日の9to5Macの報道(ニューヨーク・タイムズが、アプリの市場データを調査・提供する企業Sensor Towerのデータを引用したもの)によると、2026年上半期だけでApp Storeに約56万本の新規アプリが追加され、2025年通年の約60万本にほぼ匹敵しました。前年同期比でおよそ2倍です。
この記事の本文に載せた「2025年55.7万件」という数字は、アプリの売上やランキングを分析するAppfiguresの集計で、Sensor Towerの約60万本とは計測主体も定義も異なります。数字を直接引き算しないでください。ただ、増加の方向は両者で一致しています。Appfiguresの別の集計では、2026年第1四半期の世界のアプリリリースは前年同期比60%増、iOS App Store単体では80%増とされています。
4. ダウンロードは+2%。作られる数だけが増えている
供給側の数字と並べると、この5ヶ月でいちばん重い事実が出てきます。同じSensor Towerのデータで、2026年上半期のダウンロード数は176億、前年同期比+2%にとどまっています。新規アプリは約2倍、ダウンロードは横ばい。作られる数だけが増えて、使われる数は増えていないということです。
審査待ちの45日は、開発者にとって痛みがはっきり見える問題でした。だから騒ぎになり、そして解消しました。一方で供給過剰は、誰か一人が困る形では現れません。現れるのは、検索結果に似たようなアプリが並び、まともに作ったアプリが埋もれ、1本あたりのダウンロードが薄まっていく、という遅い変化です。審査待ちが解消したことと、App Storeの問題が解決したことは、別の話です。
5. Appleの対処は、AI名指しではなく「見分けがつかないアプリ」の排除
Appleが打った手も確認できています。2026年6月9日、App Store Reviewガイドラインの4.3(b)が改定されました(9to5Macの報道/ガイドライン本文)。改定の中身は、「既に広く出回っているものと見分けがつかない」アプリと、既存カテゴリの「便乗的なバリアント作成」の禁止です。名指しされたのはdating(出会い系)、懐中電灯、効果音、壁紙、タイマー、占いといったカテゴリで、これらは「意味のある差別化、または改善された体験」がなければ不承認になると明記されました。あわせて1.2(利用者が投稿するコンテンツの扱い)と4.5.3も改定されています。
ここは誤解されやすいので、はっきり書いておきます。この改定は、AI生成アプリを名指しで規制する条文ではありません。条文が対象にしているのは「低品質」と「重複」であって、作り方がAIかどうかは問うていません。結果としてAIで量産された似たようなアプリが引っかかりやすくなる、という間接的な効き方をします。実際、Apple Developer Newsには2026年6月から8月にかけて、審査体制の増強やAI生成アプリの規制に関する新しい告知は出ていません。
この5ヶ月で起きたのは「待ち行列の解消」と「ガイドラインによる足切りの追加」であって、供給過剰そのものへの回答ではありません。AIに指示するだけでアプリが作れる状況は続いていますし、上半期56万本という数字がそれを示しています。初版の最後に書いた「人間が1つずつ審査する仕組みはいつまで持つのか」という問いは、待ち時間が戻ったいまも、そのまま残っています。
どのくらい遅れているのか
具体的な数字で見ると、事態の深刻さがわかります。以下は2026年3月時点の状況です(8月時点の実測値は冒頭の追記を参照してください)。
| プラットフォーム | 通常の審査時間 | 2026年3月時点の審査時間 |
|---|---|---|
| iOS | 24〜48時間 | 7〜30日以上 |
| macOS | 1〜2日 | 5〜10日以上 |
| tvOS | 1日程度 | 比較的短い |
Apple Developer Forumsには悲鳴のようなスレッドが乱立しています。「Long delays in App Review」「App stuck in Waiting for Review」といったタイトルのスレッドが、2026年2月から3月にかけて少なくとも6件以上立っています。
最も深刻な事例は、Apple Communityに投稿された報告です。2025年12月12日にアプリを申請し、2026年1月26日時点で45日間「Waiting for Review」のままだったとのこと。
ばらつきも極端です。開発者のMichael Tsai氏のブログによると、macOSアプリが10日間待機した末にリジェクトされ、再申請したら20分で承認されたケースもあります。基準が不透明なまま、開発者は振り回されています。
なぜ遅れているのか。「vibe coding」という新しい波
直接の原因は、App Storeへの申請数の急増です。
「vibe coding(バイブコーディング)」という言葉をご存知でしょうか。ChatGPTやClaude、CursorといったAI開発ツールに「こんなアプリを作って」と話しかけるだけで、AIがコードを書いてくれる開発手法です。プログラミングの知識がなくても、アイデアさえあればアプリが作れる時代になりました。
その結果、App Storeへの新規申請数が急増しています。
| 年 | 新規アプリ申請数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2016年 | 100万件(過去最高) | - |
| 2023年 | 42.4万件 | 2012年以来の最低 |
| 2024年 | 44.8万件 | +5.7% |
| 2025年 | 55.7万件 | +24% |
AppFiguresのデータによると、2025年の申請数は前年比24%増の55.7万件。2016年のピーク以来、最大の増加幅です。1日あたり平均1,865件の新しいアプリがリリースされている計算です。
テスラのAI責任者だったAndrej Karpathy氏が「Swiftを書いたことがないのに、vibe codingで1時間でiOSアプリが動いた」と投稿したことも話題になりました。プログラミング経験のない人がアプリを作れるという事実が、多くの人を刺激しています。
AIが作ったアプリはどんなものか
現在、App Store上のアプリの27.1%がAI機能を搭載しています。4本に1本以上です。
9to5Macの報道によると、2025年のApp StoreにおけるAIアプリからの収益は約9億ドル(約1,350億円)。そのうちChatGPT関連が約75%を占めています。
一方で、質の問題も深刻化しています。起業家のGreg Isenberg氏はこう指摘しています。
本気でプロダクトを作っている人もいれば、AIに丸投げした粗悪なアプリを大量に申請している人もいる。玉石混交の申請が審査チームに押し寄せている状況です。
Appleは何をしているのか
審査遅延について、2026年3月時点でAppleは公式声明を出していませんでした。(その後2026年7月に、Appleはメディアの取材に数字を挙げて回答しています。冒頭の追記を参照してください。)
Developer Forumsでは「調査中です、App Store Connectでフォローアップします」という個別対応のみ。Appleサポートに電話した開発者への回答は「はい、把握しています、申し訳ありません」だったとのことです。
一方で、Appleは別の動きを見せています。2026年3月18日、2つの有名なvibe codingアプリのアップデートをブロックしました。
| アプリ | Apple側の主張 | 影響 |
|---|---|---|
| Replit | アプリの機能を変更する コードの実行を禁止 | 1月以降更新不可 ランキング1位→3位に低下 |
| Vibecode | App Store外での 表示変更は規約違反 | アプリ生成機能の削除を要求 |
Appleの問題視しているポイントは、「審査を通した後にアプリの挙動が変わる」ことです。vibe codingアプリは、ユーザーの指示でその場でコードを生成・実行するため、審査時とはまったく異なるアプリになりうる。Appleにとっては「審査の意味がなくなる」わけです。
厄介なのは、Apple自身も同時期にXcodeへのAIコーディングツール(OpenAI・Anthropic統合)を搭載していることです。「AIでアプリを作ること」自体は推進しながら、「AIでアプリを動的に変えること」は規制する。この線引きに開発者の間で困惑が広がっています。
開発者は何と言っているのか
Apple Developer Forumsでは、「2月から始まって1ヶ月以上続いている」という声が複数上がっています。Mac向けアプリの開発者であるSpencer Dailey氏は「審査時間が3〜5倍に増えた」と報告しています。
開発者コミュニティからは具体的な改善提案も出ています。「新規アプリだけ人間が審査し、アップデートは自動化してほしい」「実績のある開発者には優先審査キューを設けてほしい」といった声です。
なお、Appleには「Expedited Review Request(緊急審査リクエスト)」という制度が以前から存在しますが、これは重大なバグ修正やセキュリティ対応を想定したものであり、現在の混雑状況への対策ではありません。
アプリを使う側への影響
「アプリを作る人の問題でしょ?」と思うかもしれませんが、使う側にも影響が出ています。
審査が遅れるということは、バグ修正やセキュリティアップデートが遅れるということです。開発者が脆弱性を発見して修正版を申請しても、それが審査待ちで30日間止まっていたら、その間ユーザーは危険にさらされ続けます。
また、新しいアプリやサービスが市場に出てくるスピードも落ちます。App Storeに出すまでに1ヶ月以上かかるなら、スタートアップにとっては致命的です。「Androidで先に出す」という判断をする開発者が増えれば、iPhoneユーザーが後回しにされる可能性もあります。
「誰でもアプリを作れる時代」のApp Storeはどうなるのか
App Storeの審査は、2008年の開設以来、「人間が1つずつ確認する」というモデルで運用されてきました。年間数十万件の申請をさばいてきた実績はありますが、AIが「アプリを作る参入障壁」を一気に下げた今、そのモデルが限界に達しつつあります。
2025年の55.7万件が多いと言っても、2016年の100万件には遠く及びません。つまり、単純な数の問題ではなく、AI生成アプリの「質のばらつき」が審査の負荷を上げている可能性があります。人間では判断が難しいグレーゾーンのアプリが増えれば、1件あたりの審査時間も伸びるでしょう。
Appleは4月以降、iOS 26 / Xcode 26 SDK以上でのビルドを必須化します。これは通常の年次更新ですが、古いSDKで量産されたAIアプリを間接的にふるいにかける効果はあるかもしれません。
ただ、根本的な問いは変わりません。「誰でもアプリを作れる時代」に、「人間が1つずつ審査する」仕組みはいつまで持つのか。Appleが次にどんな手を打つのか、沈黙の先が気になります。
この問いに対するその後の答え(2026年6月のガイドライン4.3(b)改定と、7月のApple自身の説明)は、冒頭の追記にまとめました。
更新履歴
- ▸2026年3月30日:初版公開(審査待ちが最長45日に達したという開発者の報告と、vibe codingによる申請急増の報道を受けて作成)。
- ▸2026年8月17日:冒頭に大幅な追記を追加。初版の前提だった「最長45日待ち」が解消したことを反映し、Runwayの実測値(2026年8月のWaiting for Review平均14時間29分、レンジ44分〜6日21時間、In Review平均1時間31分。データ更新日8月12日)とそのサンプルバイアス、2026年7月にAppleがBusiness Insiderへ回答した数字(申請の90%を48時間以内、毎週20万件超を処理、平均約1.5日)、2026年上半期の新規アプリ約56万本とダウンロード176億(+2%)という供給とダウンロードの乖離、2026年6月9日のガイドライン4.3(b)改定(AI生成アプリの名指し規制ではない点を含む)を追加。あわせて本文中の「現在の審査時間」を「2026年3月時点」と明記し、「Appleは公式声明を出していません」を時点付きの記述に改めました。
参照元
- ▸ 9to5Mac - Vibe coding could mark the end of the App Store review process as we know it(2026年3月29日)
- ▸ 9to5Mac - Apple pushing back on 'vibe coding' iPhone apps(2026年3月18日)
- ▸ MacRumors - Apple Quietly Blocks Updates for Popular 'Vibe Coding' Apps(2026年3月18日)
- ▸ AppFigures - The App Store Just Logged Its Biggest Release Year in Nearly a Decade(2025年12月)
- ▸ 9to5Mac - Apple made roughly $900M from generative AI apps in 2025(2026年3月19日)
- ▸ Michael Tsai - Mac App Store Review Times Increasing(2026年3月2日)
- ▸ lowcode.agency - iOS App Review Delays March 2026(2026年3月)
- ▸ Apple Developer Forums - Long delays in App Review
- ▸ Apple Community - iOS app submission stuck in Waiting for Review for 45 days
- ▸ Runway - Live App Store and TestFlight review times(データ更新 2026年8月12日)
- ▸ The Apple Post - AI-powered vibe coding reportedly causing App Store review delays(2026年7月23日、AppleのBusiness Insiderへの回答)
- ▸ 9to5Mac - Apple tightens App Review guidelines against apps that do not add value(2026年6月9日)
- ▸ 9to5Mac - App Store added nearly as many new apps in H1 2026 as in all of 2025(2026年7月20日、NYT/Sensor Towerデータ)
- ▸ TechCrunch - The App Store is booming again, and AI may be why(2026年4月18日、Appfiguresデータ)
- ▸ Apple Developer Forums - App Review 遅延に関するスレッド(2026年8月)
- ▸ Apple - App Store Review Guidelines(4.3(b)ほか)
- ▸ Apple Developer News(2026年6〜8月に審査体制の新告知なし)

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