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【炎上】クックパッド『レシピスクラップ』に料理家が一斉反発。何が問題なのか

クックパッドの新機能がInstagramやXのレシピをAIで自動抽出。リュウジ氏ら人気料理家が搾取構造だと反発。機能の仕組み、著作権の問題、クックパッドの対応を解説。

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kkm

Backend Engineer / AWS / Django

2026.03.238 min6 views

【炎上】クックパッド「レシピスクラップ」に料理家が一斉反発。何が問題なのか

2026年3月19日、クックパッドが公開した新機能「レシピスクラップ」に対し、著名な料理家たちが一斉に反発しています。外部サイトやSNSに投稿されたレシピをAIで自動抽出し、クックパッドアプリ内に保存できるこの機能は、「レシピ製作者へのリスペクトがない」として激しい批判を浴びています。

批判の口火を切ったのは、YouTubeチャンネル登録者数500万人超の料理研究家・リュウジ氏でした。3月21日、自身のXアカウントにこう投稿しています。

「クックパッドの新機能酷すぎる InstagramやXなどクックパッドに載せてない料理家さんのレシピを簡単に取り込めて元投稿にアクセスしなくてもクックパッドアプリで完結出来るシステム こっちは必死で自己アカウントで頑張ってんすけど あまりにもレシピ製作者にリスペクトがない」

この投稿をきっかけに、白ごはん.comの冨田ただすけ氏、ジョーさん。、まるみキッチンなど多くの料理家が批判に加わり、大きな騒動に発展しました。クックパッドは3月22日に公式声明を出しましたが、機能の停止は行わない方針を示し、反発はさらに拡大しています。

「レシピスクラップ」とは何か

「レシピスクラップ」は、クックパッドが3月19日にリリースした新機能です。Instagram、X(旧Twitter)、TikTok、Webサイトなど外部に公開されているレシピのURLをクックパッドアプリに入力すると、AIが材料や調理手順を自動で抽出し、アプリ内の「きろく」に保存できます。

使い方は2通りあります。1つ目は、外部アプリ(InstagramやXなど)のシェアボタンからクックパッドを選択する方法。2つ目は、クックパッドアプリ内の「+」ボタンから「レシピを取り込む」を選び、URLを貼り付ける方法です。

保存したレシピは非公開扱いで、食材キーワードでの検索にも対応しています。元の投稿へのリンクも掲載されます。

料金体系は以下のとおりです。

プラン月額取り込み上限
無料会員0円週5件
プレミアム会員550円無制限

無料会員は週5件まで。月額550円のプレミアム会員になれば無制限に取り込めるという仕組みです。この「無制限化に課金が必要」という構造が、後述する批判の大きな焦点になっています。

料理家たちは何に怒っているのか

リュウジ氏の投稿を皮切りに、複数の料理家が次々と声を上げました。批判の論点は大きく3つに集約されます。「元サイトへのトラフィックが奪われること」「他者のコンテンツで課金を促す構造であること」「レシピ制作者への敬意が欠けていること」です。

リュウジ氏の指摘

リュウジ氏は実際に自身のレシピを取り込んで検証し、「作り方も全部取り込まれた」と報告。さらにこう述べています。

「クックパッドにだけメリットがあるシステムです。さすがに酷すぎないかこれ」

白ごはん.com 冨田ただすけ氏の懸念

白ごはん.comを運営する冨田ただすけ氏は、個人運営ならではの切実な事情を訴えました。

「できればユーザーさんには使ってほしくない機能」
「個人運営で毎月固定費がかかっており、レシピ発信の運用自体が危うくなって続けていけなくなる」

冨田氏はあわせて「レシピには著作権はないけれど、写真には著作権がある」とも指摘し、AIが写真を含めて抽出している点にも疑問を投げかけています。

ジョーさん。の批判

ジョーさん。は、より強い言葉で構造的な問題を指摘しました。

「必死に作ったコンテンツにタダ乗りされて許せるわけがない」
「必死で作ってきたレシピで何とかやってる人達から搾取する構造」

まるみキッチンの提案

まるみキッチンは「リンク元のSNSに戻らないとレシピを見られない仕組み」への変更を提案しつつ、現状の問題として「再生数&保存数が落ちる」「クリエイターへの還元率が下がる」と具体的な影響を挙げています。

クックパッドはどう答えたか

批判が広がった翌日の3月22日夕方、クックパッドは公式Xアカウントおよび公式サイトで声明を発表しました。要点は以下のとおりです。

  • レシピスクラップは「SNSやウェブで見つけたレシピをあとで作るための個人の記録」である
  • レシピを公開・再配布するものではない
  • 元の投稿へのリンクを必ず掲載している
  • 批判を「真摯に受け止めている」とし、「機能の仕様も含めた見直しを進める」
  • クリエイターとの直接対話を予定し、意見窓口(creator-feedback@cookpad.com)を設置

ただし、機能の一時停止は行わない方針を明確にしました。この点が「誠意が感じられない」「見直しと言いつつ動かし続けるのか」という新たな反発を生んでいます。

3月23日時点では、ITmediaおたくま経済新聞など複数のメディアが続報を出しており、騒動はさらに拡大しています。

「Notionと同じでは?」という擁護とその反論

この騒動では、クックパッドを擁護する意見も一部で見られます。代表的なのは「NotionやEvernoteにもWebクリップ機能(Webページの内容を保存する機能)があるのだから、本質的に同じではないか」という主張です。

Togetterのまとめなどでも両論が展開されていますが、反論側は以下の違いを指摘しています。

観点Notion / Evernoteクックパッド レシピスクラップ
ツールの性質汎用メモ・ノートツールレシピ特化プラットフォーム
課金との関係クリップ機能で課金誘導しない無制限取り込みがプレミアムの訴求材料
元サイトへの影響ユーザーが個人的に保存材料・手順がアプリ内で完結し、元サイトへのトラフィックが失われる

つまり、問題の核心は「Webクリップ機能があること」自体ではなく、「他者のレシピコンテンツをアプリ内で完結させ、その利便性を有料会員の訴求に使っている」という課金構造にあるというのが、反論側の主張です。

裏側で何が起きているのか(技術的に見ると)

「レシピスクラップ」がやっていることを、技術的にかみ砕くとこうなります。ユーザーがURLを貼る → クックパッドのサーバーがそのURLにアクセスしてHTMLを取得する → AIが「材料」「分量」「手順」をテキストから抽出する → 整形してアプリ内に保存する。いわゆるWebスクレイピング(Webページの情報を自動で収集する技術)とAIによる構造化抽出の組み合わせです。

ここで厄介なのは、多くのレシピサイトがGoogleの検索結果に材料や調理時間を表示させるためにSchema.org の Recipe 構造化データをHTMLに埋め込んでいることです。たとえば白ごはん.comも、各レシピページに「材料」「手順」「調理時間」を機械が読める形式で記述しています。SEOのために自分で整理したデータが、結果的にAI抽出も楽にしてしまっているわけです。

「robots.txt(クローラーのアクセスを制御する設定ファイル)でブロックすればいい」という意見もありますが、今回のケースではユーザーが自分でURLを貼っているため、通常のクローラーとは経路が異なります。クックパッド側のサーバーがアクセスする際のUser-Agent(アクセス元の名前)をブロックすることは技術的に可能ですが、クックパッドがUser-Agentを公開していなければ対策のしようがありません。

つまり技術的に見ると、この機能は「ユーザーのアクションをトリガーにしたサーバーサイドスクレイピング + AI構造化」であり、ブラウザのブックマークやNotionのWebクリップ(ユーザーのブラウザ上で動く)とは仕組みが根本的に違います。プラットフォーム側のサーバーが外部サイトのHTMLを取得して加工しているという点が、技術者から見たときの大きな違いです。

レシピに著作権はあるのか

この問題を考えるうえで避けて通れないのが、「そもそもレシピに著作権はあるのか」という法的な論点です。

日本の著作権法では、料理のアイデアそのもの、つまり「鶏肉を200g使う」「180度で20分焼く」といった材料や手順の事実情報は、著作権の保護対象になりにくいとされています。これは「アイデアと表現の二分論」と呼ばれる考え方に基づくもので、著作権が保護するのはアイデアの「表現」であって「アイデアそのもの」ではありません。

一方で、以下の要素には創作性が認められる余地があります。

  • レシピの文章表現(独自の言い回しや語り口)
  • 調理過程や完成品の写真・動画
  • 全体の構成・レイアウトに独自性がある場合

白ごはん.comの冨田氏が「レシピには著作権はないけれど、写真には著作権がある」と述べたのは、こうした法的整理を踏まえた発言です。

また、著作権とは別の問題として、Instagram・X・TikTokなどのプラットフォームは利用規約で自動収集やスクレイピング(プログラムによるデータの自動取得)を禁止している場合が多く、規約違反の可能性を指摘する声もあります。

さらに、クックパッド側が主張する「個人利用の記録」という位置づけについても、無料5件/有料無制限という課金構造がある以上、純粋な「個人のメモ」とは言い切れないのではないか、という疑問が呈されています。

9期連続減収のクックパッド、新機能の背景

今回の騒動の背景には、クックパッドの厳しい経営状況があります。

2025年12月期の決算によると、売上高は53億円、経常利益は10億円、最終利益は7.4億円。黒字は維持しているものの、売上高は9期連続の減収です。

指標数値
売上高(2025年12月期)53億円
経常利益10億円
最終利益7.4億円
従業員数の推移393人 → 125人(68.2%削減)
減収期間9期連続

従業員数は393人から125人へと68.2%も削減されました。2023年には6つの事業を廃止し、海外子会社では80人規模の希望退職も実施しています。

かつて日本最大のレシピサイトとして圧倒的な知名度を誇ったクックパッドですが、YouTube・Instagram・TikTokなどSNSでレシピを発信する料理家の台頭により、ユーザーの流出が続いています。

こうした状況下で、外部のレシピコンテンツをアプリ内に取り込み、プレミアム会員の訴求材料にするという「レシピスクラップ」の設計は、収益確保を優先した判断だったと見ることもできます。ただし、その結果としてレシピ制作者との関係を大きく損なう事態を招いています。

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