ドラクエ10のAI相棒「おしゃべりスラミィ」、実装はバージョン8の後半へ
スクエニがドラクエ10にGoogleの生成AI「Gemini」搭載を発表。音声で会話できるバディ「おしゃべりスラミィ」の機能、4月のベータテスト募集、ゲームAIの可能性と課題をまとめた。
目次
スクエニがドラクエ10にGoogleの生成AI「Gemini」搭載を発表。音声で会話できるバディ「おしゃべりスラミィ」の機能、4月のベータテスト募集、ゲームAIの可能性と課題をまとめた。
ドラクエ10に「AIの相棒」が来る
スクウェア・エニックス(以下スクエニ)は2026年3月21日、オンラインRPG「ドラゴンクエストX オンライン」(以下ドラクエ10)に、Googleの生成AI「Gemini」を搭載すると発表しました。
AIが入るのは「おしゃべりスラミィ」というゲーム内キャラクター。プレイヤーの冒険に付き添うバディ(相棒)で、声で話しかけると、AIが音声で返事をしてくれます。
4月20日ごろからクローズドベータテストが始まる予定で、公式プレイヤーサイト「冒険者の広場」から3月30日11時59分まで参加者を募集しています。
2026年8月17日 更新
この記事は2026年3月22日に公開したものです。クローズドベータテストは2026年4月20日から5月20日まで実施され、すでに終了しています。正式サービスの開始時期と、途中で流れた「8月実装」という報道のてんまつは「【2026年8月17日追記】ベータテストは終わり、実装は「バージョン8の後半」へ」にまとめました。以下の本文は公開当時の記述を残したうえで、訂正が必要な箇所に追記を加えています。
【2026年8月17日追記】ベータテストは終わり、実装は「バージョン8の後半」へ
公開から5か月近くが経ちました。クローズドベータテスト(以下CBT。限られた参加者だけで行う非公開のテスト)は予定どおり終わりましたが、正式サービスはまだ始まっていません。途中、「8月に実装される」という報道が出て、公式に否定される場面もありました。日付を追って整理します。
ベータテストは4月20日から5月20日まで行われた
公式の募集ページによると、募集期間は2026年3月21日から3月30日、テストの実施期間は2026年4月20日から5月20日でした。対象になったのは、Windows版・PS4版・Nintendo Switch版の製品版を遊んでいて、利用料金の有効期間内にあるプレイヤーです。ブラウザ版と体験版は対象外でした。
この募集ページ自体が、ハルシネーション(AIが事実と異なる発言をすること)が起きる可能性を明記していました。あわせて「意図的に良くない発言をさせようとする配信は控えること」という注意も書かれています。AIキャラクターを実装する側が、実装前から想定していた課題がここに表れています。
CBTで見えた仕様。ただし正式サービスの形ではない
CBTでは、スラミィとの会話にいくつかの制限がかけられていました。ここは前提を先に書いておきます。これらはテストのための設定であり、正式サービスで同じ形になると決まったわけではありません。公式には、CBTのデータを正式サービスに引き継ぐかどうかも「未定」と記載されています。
| 項目 | CBTでの扱い |
|---|---|
| スラミィのHP/MP | HPとMPが設定されており、 尽きると応答しなくなる |
| 会話回数 | 上限あり |
| 利用時間 | 時間ブロック (1〜3ブロック)ごとに制限 |
| データの引き継ぎ | 正式サービスへ引き継ぐかは 未定と公式に記載 |
| 料金・課金 | 記載なし |
HPとMPで会話量に上限を設けるという設計は、生成AIの利用コストを抑える手立てとしても、ゲーム内の理屈としても筋が通ります。ただし、この仕組みが正式サービスにそのまま持ち込まれるのか、それとも別の形になるのかは、公式には発表されていません。
「8月実装」という報道は、公式に否定された
ここは、別の記事で誤った情報に触れた読者がいるかもしれない部分です。日付を追います。
- ▸ 2026年7月31日:一部メディアが「おしゃべりスラミィが8月に実装される」と報じる
- ▸ 2026年8月2日:番組「DQXTV 14周年SP」で安西サービスリーダーが「バージョン8の後半…将来的に実装予定」「正式サービスの展開はもう少しお待ちいただくことになる」と述べ、8月実装を否定
- ▸ 2026年8月3日:該当の報道が訂正される
つまり、2026年8月17日時点でおしゃべりスラミィは実装されていません。実装の時期として公式が示しているのは「バージョン8の後半」「バージョン8の期間中」という幅のある表現だけです。
なぜ後ろ倒しになったのか
2026年8月6日に更新された公式の「中〜長期展望」には、バージョン8の期間中に実装する予定と書かれています。理由についても説明があります。
「AIとの会話そのものについては、想像以上に多くの方に楽しんでいただけましたが、正式サービスとして運用するためには、ゲーム内で扱う情報や会話内容の精度向上、安全性への配慮など、さらに取り組むべき課題があります」
会話体験そのものは受け入れられた。しかし運用に耐える精度と安全性がまだ足りない。CBTのレポートとあわせて読むと、開発側が慎重になっている部分が見えてきます。
なお、具体的な実装日や、どのバージョン(8.2、8.3といった番号)で入るのかについて、公式の発表は確認されていません。ネット上には「バージョン8.3から8.4が濃厚」といった記述もありますが、一次情報にもとづくものではありません。
課金体系は、まだ何も決まっていない
生成AIを常時動かせば、それだけ費用がかかります。追加料金がかかるのかどうかは、多くのプレイヤーが気にしている点でしょう。ただし、CBTの募集ページ、CBTのレポート、中〜長期展望のいずれにも、料金や課金についての記載はありません。CBTでかけられていた利用制限が、そのまま正式サービスの料金設計につながるのかどうかも、公式には発表されていません。
訂正: AIモデルは「Gemini 2.5 Flash」
初版では、裏側で動くモデルを「Gemini 3 Flash」と書きました。確認できる技術構成はGemini 2.5 FlashとGemini Live APIの組み合わせです。訂正します。
同じ記事によれば、スラミィはゲーム画面の画像や文字情報も認識します。プレイヤーの行動や、着ている装備の変化を察知して、自分から話しかけてくる作りです。設定が「死神見習いのスライム」で、プレイヤーの履歴を「死神手帳」に記録するという枠組みも、ここから来ています。
AIを相棒1体に絞る設計思想の背景には、堀井雄二氏の「全てのNPCにAIを載せるのは違う」という考えがあります。村人全員がAIで話し出す世界ではなく、隣を歩く1体だけがAIである世界を選んだ、ということです。
プレイヤーの反応はどうだったのか
CBTに参加したプレイヤーの反応は、個人のブログなどを見るかぎり二分しています。ただし、満足度を示す定量的なデータや、CBTに何人が参加したのかという数字は、公式に発表されていません。「おおむね好評だった」「不評だった」と言い切れる材料は、2026年8月17日時点でそろっていません。
また、この取り組みを直接の契機として、他のタイトルにGeminiや生成AIのNPCを導入するという発表も確認されていません。ゲーム業界全体が追随した、という状況にはなっていません。
実装が遅れていること自体は、悪い知らせとは限りません。公式が挙げた課題は、精度と安全性です。誤った攻略情報を自信ありげに話すAIや、意図しない発言をするAIが実装されたときの反発を考えれば、ここで時間を使う判断には理由があります。次の節目は、バージョン8の後半に何が出てくるかです。
「おしゃべりスラミィ」とは何か
おしゃべりスラミィは「死神見習い」という設定のスライム型キャラクターです。プレイヤーの冒険履歴を「死神手帳」に記録しており、過去にどんなモンスターを倒したか、どこを冒険したかを覚えています。
できることは大きく3つあります。
- 1. 音声での双方向会話:マイクで話しかけると、AIが考えて声で返事をする。テキスト入力にも対応
- 2. ゲーム攻略のアドバイス:「次はどこに行けばいい?」と聞くと、プレイヤーの進行状況に合わせた提案をしてくれる
- 3. 自分から話しかけてくる:プレイヤーの行動を見て、スラミィ側から会話を始めることもある
従来のNPCは決まったセリフを繰り返すだけでしたが、おしゃべりスラミィはプレイヤーごとに違う返答をします。同じ質問をしても、冒険の進み具合や過去の会話によって答えが変わります。
なぜ「村人AI」ではなく「バディ」なのか
ゲームにAIを入れるとき、最初に思いつくのは「村人や店員などのNPCをAIにする」というアイデアでしょう。でもスクエニは別のアプローチを選びました。
開発・運営の安西崇プロデューサーはASCII.jpのインタビューで、「村人にAIを入れるのではなく、一緒に遊ぶ友達や仲間としてのほうがよい」と語っています。
背景にあるのは、ドラクエ10がオンラインゲームであるということです。他のプレイヤーと一緒に遊ぶのがこのゲームの醍醐味ですが、現実には「周りに知り合いがいなくて一人で遊んでいる」というプレイヤーも少なくありません。
安西Dは「相棒ならば、双方向の会話があってしかるべき」とも話しており、一方的に情報を与えるガイドではなく、プレイヤーと対等に会話できるキャラクターを目指していることがわかります。子供のころに友達の家でゲームをしながらおしゃべりした体験を、AIで再現しようとしているわけです。
Geminiはどうやって「ゲームを理解」しているのか
おしゃべりスラミィの裏側で動いているのは、GoogleのGemini 3 FlashというAIモデルと、Gemini Live APIというリアルタイム対話の仕組みです。
2026年8月17日の訂正
モデル名は「Gemini 3 Flash」ではなくGemini 2.5 Flashです。4Gamerの記事では、Gemini 2.5 FlashとGemini Live APIを組み合わせた構成だと説明されています。あわせて、スラミィがゲーム画面の画像や文字情報を認識し、プレイヤーの行動や装備の変化から自発的に話しかけてくることも明らかになっています。
ITmediaの報道によると、システムは4段階のエージェント管理で動作します。
AIが応答するまでの流れ
- 1 プレイヤーの音声・テキスト入力を受け取る
- 2 質問の内容に応じて、適切なゲーム内エージェントに振り分ける
- 3 ゲームのデータベースから正確な情報を取得する
- 4 情報をもとに音声で返答を生成する
ポイントは、AIが「なんとなくそれっぽい答え」を返すのではなく、ゲームのデータベースを参照してから回答する仕組みになっていることです。「次のクエストはどこ?」と聞かれたら、プレイヤーの実際の進行状況を確認してから答えます。
さらに、ゲーム画面の認識もできます。プレイヤーが今見ている画面の状況をAIが把握し、文脈に合った会話ができるようになっています。
スクエニの龍直人氏は「リアルタイムでの実装には適切なインフラが必要」とコメントしており、応答速度とコストのバランスが開発上の課題であることを示唆しています。
プライバシーと安全対策はどうなっているのか
AIキャラクターと会話できるとなると、気になるのは「変なことを言わせられないか」「会話内容が漏れないか」という点です。
スクエニは以下の対策を明らかにしています。
| 対策項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲーム外の話題 | 現実世界の情報や 質問には応答しない |
| 会話の学習・公開 | 他のプレイヤーとの 会話は学習されない。 内容も公開されない |
| 不適切な応答 | AIの安全フィルタで 不適切な返答を防止 |
つまり、おしゃべりスラミィとの会話は自分だけのものです。他のプレイヤーに見られることも、AIの学習データに使われることもありません。
ベータテストの募集要項
以下は公開当時の募集要項です。募集は2026年3月30日で締め切られ、テストは2026年4月20日から5月20日まで実施されて終了しました。対象はWindows版・PS4版・Nintendo Switch版の製品版プレイヤーで、ブラウザ版と体験版は対象外でした。テストで設けられていた制限は冒頭の追記セクションに整理しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 募集期間 | 〜2026年3月30日 11:59まで |
| テスト開始 | 2026年4月20日ごろ |
| テスト期間 | 約1ヶ月 |
| 応募方法 | 冒険者の広場から |
| 対象 | ドラクエ10 現役プレイヤー |
ゲームにAIを入れるとどうなるか
映画『A.I.』(2001年)で、スピルバーグは「人間を愛するようプログラムされたロボットの少年」を描きました。あれから25年、現実のAIは「人間を愛する」のではなく、「人間の冒険に付き合ってくれるスライム」として私たちの前に現れました。
ゲームとAIの組み合わせはまだ実験段階です。応答が遅くてテンポが悪くなるかもしれないし、的外れなアドバイスをしてくるかもしれない。ベータテストの結果次第では、大きく仕様が変わる可能性もあります。
でも、「NPCに台本を読ませるのではなく、プレイヤー一人ひとりに違う体験を届ける」という方向性は、オンラインゲームが13年間抱えてきた「一人遊びの孤独感」に対する、ひとつの回答になるかもしれません。
「Geminiとドラゴンクエストがつながることが、ゲームとAIの新しいブレイクスルーになれば嬉しい」。安西Dのこの言葉が現実になるかどうかは、4月のベータテストで見えてくるはずです。
(2026年8月17日追記: そのベータテストは4月20日から5月20日まで行われ、正式サービスの開始は「バージョン8の後半」へと先送りされました。公式が挙げた課題は、会話の精度と安全性です。経緯は冒頭の追記セクションにまとめています)
参照元
- 1. 日本経済新聞 ― スクエニ、ドラクエ10にGoogle「Gemini」搭載 AIキャラ自然な会話(2026年3月21日)
- 2. ASCII.jp ― ドラクエXで冒険の相棒「おしゃべりスラミィ」開発中 なぜGoogleのAI・Geminiが選ばれた?
- 3. ITmedia AI+ ― 「ドラクエX」が生成AIキャラクター導入へ Gemini 3 Flash活用の「おしゃべりスラミィ」
- 4. 産経新聞(Yahoo!ニュース) ― スクエニ、ドラクエ10に生成AI「ジェミニ」搭載 グーグルと連携しゲーム体験を向上
- 5. ITmedia ビジネス ― スクエニ、ドラクエ10に生成AI「ジェミニ」搭載 グーグルと連携しゲーム体験を向上
- 6. coki ― スクエニがドラクエ10に生成AI導入へ!Gemini採用「おしゃべりスラミィ」が映すゲーム業界の次の一手
- 7. 冒険者の広場 ― 「おしゃべりスラミィ」クローズドベータテスト参加者募集について
- 8. 冒険者の広場 ― 「おしゃべりスラミィ」クローズドベータテストのレポート
- 9. 冒険者の広場 ― ドラゴンクエストX 中〜長期展望(2026年8月6日更新)
- 10. 4Gamer ― 「ドラゴンクエストX」の新たな相棒「おしゃべりスラミィ」。Gemini 2.5 FlashとGemini Live APIによる技術構成
更新履歴
- ▸2026年8月17日 ― 冒頭に「【2026年8月17日追記】ベータテストは終わり、実装は「バージョン8の後半」へ」を新設。4月20日から5月20日に実施されたクローズドベータテストの内容、HP/MP・会話回数・利用時間の制限、7月31日の「8月実装」報道から8月2日の公式否定、8月3日の報道訂正までの経緯、8月6日更新の「中〜長期展望」が示した理由、課金体系が未公表であること、プレイヤーの反応に関する公式データがないことを追加。あわせてAIモデル名を「Gemini 3 Flash」から「Gemini 2.5 Flash」に訂正し、募集要項の節にテスト終了の追記を追加。参照元に4件を追加
- ▸2026年3月22日 ― 初版公開。3月21日のスクウェア・エニックスの発表をもとに「おしゃべりスラミィ」の機能とベータテスト募集を解説

Backend Engineer / AWS / Django / Go