Home Assistantは2026.7.0へ CVE-2026-64824は6.0で未修正
自宅の家電やIoT機器をまとめて操作できる人気の無料ソフト「Home Assistant」に、危険度9.3の脆弱性が見つかりました。CVE-2026-64825で、初期設定やバックアップ復元の際に細工したバックアップを読み込ませると任意のファイルを書き込まれ、乗っ取られる恐れがあります。ログイン不要で悪用され得ます。修正版2026.6.0以降への更新方法を解説します。
目次
自宅の家電やIoT機器をまとめて操作できる人気の無料ソフト「Home Assistant」に、危険度9.3の脆弱性が見つかりました。CVE-2026-64825で、初期設定やバックアップ復元の際に細工したバックアップを読み込ませると任意のファイルを書き込まれ、乗っ取られる恐れがあります。ログイン不要で悪用され得ます。修正版2026.6.0以降への更新方法を解説します。
【訂正】2026.6.0では足りません
2026.6.0では足りません。2026.7.0以降(現行2026.7.4)へ更新してください。
当初、早見表で「2026.6.0以降なら対処済み・対応不要」と書いていました。これは誤りでした。当サイトの案内どおり2026.6.0へ更新した方は、いま危険度9.3の別の脆弱性CVE-2026-64824に露出したままです。お詫びして訂正します。
バックアップまわりには穴が二つ空いていました。「バックアップを作る側」を塞いだのが2026.6.0、「復元する側」を塞いだのが2026.7.0です。2026.6.0から2026.6.4までは、後者が未修正のまま残っています。2026.7.0以降であれば両方とも塞がっています。
自宅の家電やIoT機器をまとめて操作できる人気の無料ソフト「Home Assistant(ホームアシスタント)」のバックアップ機能に、深刻な脆弱性が2件見つかりました。CVE-2026-64825とCVE-2026-64824で、いずれも細工したバックアップファイルを読み込ませると、機器の中の好きな場所に任意のファイルを書き込まれ、最終的に乗っ取られる恐れがあります。ログインは不要で、危険度はどちらも9.3(緊急)と評価されています。
やっかいなのは、修正が入ったバージョンが2件で分かれている点です。64825は2026.6.0で、64824は2026.7.0で塞がれました。とくにラズベリーパイなどに入れる「Home Assistant OS」や「Supervised」形式、そして公式Dockerイメージは、ソフトが管理者(root)権限で動くため、成立すると被害が大きくなります。何が起きるのか、自分の環境が危ないのかを順に説明します。
誰が、何のために狙うのか
この欠陥を狙うのは、初期設定の途中や、別のサーバーへ移すためのバックアップ復元の最中にあるHome Assistantを、ネットワーク越しに見つけた攻撃者です。設定が済む前のHome Assistantは、まだ持ち主のアカウントが決まっておらず、外部からバックアップの読み込みを受け付けられる状態にあります。新しく立ち上げた直後の機器や、機器を引っ越すために復元をかけている最中が、狙われやすいタイミングです。
攻撃者は、バックアップの中に「/」から始まる本来許されない場所(絶対パス)を指す細工を仕込み、機器の中の好きな場所へファイルを書き込みます。本来はバックアップ用の決まったフォルダにしか書けないはずが、この制限をすり抜けられるのが欠陥の中身です。書き込み先を選べるため、起動時に自動実行される設定ファイルなどを上書きすれば、そこからプログラムの実行、つまり乗っ取りへ進めます。
被害は「家電の操作を奪われる」だけでは終わりません。Home Assistantは玄関の鍵、防犯カメラ、室内のセンサー、照明など、生活に直結する機器とつながっています。乗っ取られれば、カメラ映像の盗み見や施錠・解錠の操作、さらには同じ家庭内ネットワークにあるパソコンやスマホへの足がかりにされる恐れがあります。とくにroot権限で動く導入形態では、機器全体を丸ごと支配されかねません。だからこそ、次に示すバージョン確認と更新を早めに済ませておく必要があります。
何が起きるのか(仕組み)
2件とも「パストラバーサル(ディレクトリ・トラバーサル)」と呼ばれる種類です。パストラバーサルとは、ファイルの保存先を指定する部分に、攻撃者が「上の階層へ移動する」ような細工を混ぜ込み、本来アクセスできないはずの場所のファイルを読み書きさせる手口を指します。
Home Assistantには、設定ごと丸ごと保存・復元できるバックアップ機能があります。バックアップの中には、その内容を説明する情報をまとめたbackup.jsonという管理ファイルが入っています。この管理ファイルの「名前(name)」欄に絶対パスを書き込むと、処理が本来のバックアップ用フォルダの制限を無視して、指定された場所にそのままファイルを置いてしまいます。結果として、機器のファイルシステム上の任意の場所にファイルを書き込めます。これがCVE-2026-64825で、修正は2026.6.0に入りました。
Home Assistantを手軽に使える「Home Assistant OS」や「Supervised」形式、公式Dockerイメージでは、ソフトが管理者(root)権限で動作します。root権限で任意の場所にファイルを書けるということは、システムの重要なファイルを上書きしたり、起動時に実行されるスクリプトを仕込んだりできるということで、そこから機器全体を支配する(フルコントロール)ところまでつながります。ログインが不要で、しかも「バックアップから復元する」という正規の操作を悪用される点が、この欠陥の厄介なところです。
もう一つの穴 CVE-2026-64824 ── 「復元する側」は2026.6.0でも開いたまま
バックアップの機能は、ざっくり「作る(保存する)側」と「復元する(中身を取り出す)側」の二つに分かれています。今回はこの両方に、別々の穴が空いていました。2026.6.0で塞がれたのは前者だけです。後者、つまり復元する側の穴がCVE-2026-64824で、こちらの修正が入ったのは2026.7.0です。NVDでの公開日は2件とも2026年7月21日、採番元も同じで、まったく同時に世に出ています。
仕組みはこうです。バックアップファイルの正体はtar(ター)という形式の書庫で、中には「ファイルそのもの」だけでなく「別の場所への近道(シンボリックリンク)」も入れられます。攻撃者は、この近道の行き先に絶対パスを書いた項目(tarのSYMTYPEエントリ)を仕込みます。復元処理はこの近道が安全かどうかを確かめずに展開するため、近道の先、つまりバックアップ用フォルダの外側にファイルが書き込まれてしまいます。玄関にしか入れないはずの荷物に「勝手口へ通じる抜け道」を同梱されるようなものです。
ここで効いてくるのが、公式Dockerイメージがroot権限で動いていることです。Pythonには、起動のたびに自動で読み込まれるファイルがいくつかあります。その一つがsite-packages/sitecustomize.pyで、ここを上書きされると、次にHome Assistantが起動した瞬間に攻撃者のコードが動きます。ファイル書き込みが遠隔からのコード実行に化けるわけです。危険度はCVSS 4.0で9.3(緊急)、旧来のCVSS 3.1でも8.4と評価されています。
| CVE番号 | どこの穴か | 危険度 | 修正が入った版 |
|---|---|---|---|
| CVE-2026-64825 | バックアップを作る側(名前の検証) | 9.3(緊急) | 2026.6.0 |
| CVE-2026-64824 | 復元する側(tarの展開処理) | 9.3(緊急) | 2026.7.0 |
ソースコードで確かめた「分岐点」
この修正版の違いは、公開されているソースコードを直接見て確かめました。tar書庫を展開するときの安全装置は、Pythonのfilterという指定で決まります。fully_trustedは「中身をすべて信用してそのまま展開する」、tarは「危険な項目をはじく」設定です。Home Assistantのhomeassistant/backup_restore.pyで、この指定が次のように変わっていました。
| タグ(版) | tar展開時のfilter指定 | CVE-2026-64824 |
|---|---|---|
| 2026.6.0 | filter="fully_trusted" | 未修正 |
| 2026.6.4 | filter="fully_trusted" | 未修正 |
| 2026.7.0 | filter="tar" | 修正済み |
| 2026.7.4 | filter="tar" | 修正済み |
修正コミットは1e457600f1093c15e1325742d03e2b76498c79c1(PR #172252、2026年5月27日マージ)で、GitHub上の比較でも、これが2026.7.0には含まれ、2026.6.0には含まれていないことを確認しました。実物のソースは2026.6.4版と2026.7.0版で見比べられます。つまり、2026.6.x系にとどまっている限り、復元処理は「中身をすべて信用する」ままです。
自分の環境は影響を受けるのか(早見表)
影響するかどうかは、使っているHome Assistantのバージョンで決まります。バージョンは、管理画面の「設定」→「システム」→「一般」や、左下のメニューから確認できます。下の表で照らし合わせてください。
| いまのバージョン | CVE-2026-64825 | CVE-2026-64824 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 2026.6.0より前 | 対象 | 対象 | 2026.7.0以降へ更新 |
| 2026.6.0〜2026.6.4 | 対処済み | 対象(未修正) | 2026.7.0以降へ更新 |
| 2026.7.0以降 | 対処済み | 対処済み | 対応不要 |
2026年7月の更新は、7.0が7月1日、7.1が7月3日、7.2が7月10日、7.3が7月21日、7.4が7月24日に出ています。最新は2026.7.4ですが、7.4そのものにセキュリティ修正は入っておらず、安全と危険の分かれ目は2026.7.0です。7.0以降であればどれでもCVE-2026-64824は塞がっています。特別な事情がなければ最新の2026.7.4にしておくのが無難です。
| 導入形態 | 動作権限 | 成立時の影響 |
|---|---|---|
| Home Assistant OS | root(管理者) | 機器全体の乗っ取りに至りうる |
| Supervised | root(管理者) | 機器全体の乗っ取りに至りうる |
| 公式Dockerイメージ | root(管理者) | 遠隔からのコード実行に至りうる |
| Container / Core(自前設定) | 設定した権限による | 動作権限の範囲でファイル書き込み |
とくに危険なのは、Home Assistantをインターネットに直接公開している環境と、これから初期設定する・別サーバーへ復元しようとしている環境です。すでに設定が済み、家庭内ネットワークからしかアクセスできない環境であれば、悪用の窓口は限られますが、修正版が出ている以上は早めに更新しておくのが安全です。
いま何をすればいいのか
対処は、Home Assistantを2026.7.0以降(現行2026.7.4)へ更新することです。管理画面に更新の通知が出ていれば、そこから適用できます(更新手順の公式ガイド)。「Home Assistant OS」の場合は「設定」→「システム」→「更新」から、本体とOSの更新を確認してください。Dockerで動かしている場合は、イメージのタグが2026.6.xのままになっていないか確かめ、引き直してください。更新後、バージョン表示が2026.7.0以降になっていることを確かめます。
すぐに更新できない場合や、これから初期設定・復元を行う場合は、つなぎの措置としてHome Assistantをインターネットへ直接公開しないことが有効です。外部から使いたい場合も、VPNや信頼できる中継の内側に置き、設定画面や復元機能が外部から直接触れられない状態にしてください。CVE-2026-64824は「復元」を通る欠陥なので、2026.6.x系にとどまっている間は、自分で作ったもの以外のバックアップを復元しないことがそのまま防御になります。
公式勧告の現況
本記事の更新時点で、開発元自身のセキュリティ勧告はまだ出ていません。GitHubのアドバイザリ番号は2件とも採番されていて、CVE-2026-64825がGHSA-5hxg-r395-fqxx、CVE-2026-64824がGHSA-cwh8-w64c-4j5hです。ただしどちらも状態は「unreviewed」、すなわちNVDから自動で取り込まれたもので、Home Assistantのセキュリティ情報ページにも、coreリポジトリのアドバイザリ一覧にも掲載がありません。番号と修正コミットまでは判明したが、開発元からの勧告は未発行、というのが正確な現況です。だからこそ、利用者側でバージョンを確認する意味があります。
実際の攻撃に使われたという報告や、実証コード(PoC)の公開、米政府CISAの「実際に攻撃されている脆弱性リスト(KEV)」への登録は、公開情報の範囲では確認されていません。ただしHome Assistantは世界中で広く使われており、修正コミットが公開されている以上、手口は推測されやすい状態です。なお同じ日には3件目として、Shelly統合のasync_get_media_image()に起因するクロスサイトスクリプティング(CVE-2026-64823、CVSS 3.1で4.7、対象は2026.5.4より前)も公開されています。こちらも2026.7.0以降への更新で一緒に片付きます。
よくある質問(FAQ)
Q. 記事を読んで2026.6.0へ更新しました。もう安全ですか?
まだ安全ではありません。2026.6.0で塞がれたのはCVE-2026-64825だけで、バックアップの復元処理を突くCVE-2026-64824(危険度9.3)は2026.6.4まで未修正のまま残っています。2026.7.0以降、できれば現行の2026.7.4へ更新してください。当初この記事が「2026.6.0以降なら対応不要」と案内していた点をお詫びします。
Q. どのバージョンへ更新すればよいですか?
2026.7.0以降です。分かれ目は2026.7.0で、7.1以降に追加のセキュリティ修正は入っていません。特別な事情がなければ最新の2026.7.4にしておくのが確実です。管理画面の「設定」→「システム」→「更新」から、本体(および利用形態に応じてOS)を更新してください。
Q. すでに設定が終わっている環境も危ないですか?
悪用の主な窓口は、初期設定(オンボーディング)やバックアップ復元の場面です。設定が済み、家庭内ネットワークからしかアクセスできない環境であれば、外部から悪用される窓口は限られます。ただし、機器を別サーバーへ移すために復元をかける場面などでは関係するため、2026.7.0以降への更新はいずれにせよ済ませておくのが安全です。
Q. どのくらい危険なのですか?
2件とも危険度9.3(緊急)です。ログイン不要で、機器の中の任意の場所にファイルを書き込まれる恐れがあります。とくにroot権限で動く「Home Assistant OS」「Supervised」形式や公式Dockerイメージでは、機器全体の乗っ取りや遠隔からのコード実行に至りうると評価されています。玄関の鍵やカメラなど生活に直結する機器を扱うだけに、影響は小さくありません。
Q. すでに攻撃に使われていますか?
公開情報の範囲では、実際の攻撃に使われたという報告も、実証コード(PoC)の公開も、CISAのKEV(実際に攻撃されている脆弱性リスト)への登録も確認されていません。ただし修正コミットが公開済みで手口は推測されやすいため、早めの更新が安全です。
まとめ
自宅の家電やIoT機器をまとめて操作できる人気ソフト「Home Assistant」のバックアップ機能に、危険度9.3の脆弱性が2件見つかりました。CVE-2026-64825は「バックアップを作る側」、CVE-2026-64824は「復元する側」の欠陥で、どちらも細工したバックアップから機器の中の任意の場所にファイルを書き込まれ、乗っ取りにつながります。ログインは不要で、root権限で動く「Home Assistant OS」「Supervised」形式や公式Dockerイメージでは影響がとくに大きくなります。
修正版が分かれている点が最大の落とし穴です。2026.6.0で片づいたのは64825だけで、64824が塞がったのは2026.7.0。ソースコードを見ると、tar展開の指定が2026.6.4まではfully_trusted、2026.7.0からはtarに変わっています。更新先は2026.7.0以降(現行2026.7.4)です。あわせて、Home Assistantをインターネットへ直接公開しない、出所の不明なバックアップを復元しない、という基本も徹底してください。
参照元
- ▸ NVD - CVE-2026-64824(バックアップ復元処理のパストラバーサル/修正版2026.7.0)
- ▸ NVD - CVE-2026-64825(Home Assistant Core パストラバーサル/任意ファイル書き込み)
- ▸ NVD - CVE-2026-64823(Shelly統合のクロスサイトスクリプティング)
- ▸ GitHub - backup_restore.py(タグ2026.6.4、filter="fully_trusted")
- ▸ GitHub - backup_restore.py(タグ2026.7.0、filter="tar")
- ▸ GitHub - home-assistant/core PR #172252(修正コミット 1e45760)
- ▸ GitHub Advisory - GHSA-cwh8-w64c-4j5h(CVE-2026-64824、unreviewed)
- ▸ GitHub Advisory - GHSA-5hxg-r395-fqxx(CVE-2026-64825、unreviewed)
- ▸ Home Assistant - セキュリティ情報ページ
- ▸ Home Assistant - リリースノート(現行2026.7.4)
- ▸ Home Assistant 公式サイト
- ▸ 関連: 攻撃中の脆弱性を追う一覧 CISA KEV(日本語版・当サイト)

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