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ケンタッキー全店で品切れ・休業のおそれ 原因はニチレイの不正アクセス

ニチレイが2026年8月14日、7月のサイバー攻撃で従業員の個人情報が漏えいしたおそれがあると公表しました。対象は国内グループ会社の従業員の氏名・生年月日・会社メールアドレス・従業員番号などで、件数は非公表。原因の侵入経路は今も明かされていません。物流とKFCなどの店頭影響は7月下旬に解消しています。原因・対象・いまの対応を、公式発表のキャプチャつきで整理しました。

ニュース2026年7月15日公開 2日前更新
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この記事のポイント

ニチレイが2026年8月14日、7月のサイバー攻撃で従業員の個人情報が漏えいしたおそれがあると公表しました。対象は国内グループ会社の従業員の氏名・生年月日・会社メールアドレス・従業員番号などで、件数は非公表。原因の侵入経路は今も明かされていません。物流とKFCなどの店頭影響は7月下旬に解消しています。原因・対象・いまの対応を、公式発表のキャプチャつきで整理しました。

日本ケンタッキー・フライド・チキンは2026年7月14日、全国のKFC店舗で商品の一部品切れや販売メニューの制限、営業時間の短縮、臨時休業が起こる可能性があると発表しました。公式アプリとWebサイトからのオンライン注文、モバイルオーダー、デリバリー、配達代行サービスも一時停止しています。原因は、KFCが食材配送を委託している物流会社で起きた、不正アクセスによるシステム障害です。

その委託先が、冷凍食品大手のニチレイです。ニチレイは前日の7月13日に不正アクセスを公表しており、冷蔵倉庫の入出庫や冷凍食品の出荷業務が止まりました。1社のシステムが攻撃を受けたことが、その先につながる外食チェーンの店頭にまで及んでいます。影響はKFCだけにとどまりません。7月15日までに、回転寿司の「くら寿司」や大手スーパーの「イオン」でも欠品などが確認され、被害は外食・小売の各社へ広がっています。ここでは、利用者に何が起きるのか、どこまで影響が広がっているのか、そしてなぜ1社の障害がこれほど波及するのかを、時系列で整理します。

【続報・8月14日】従業員情報に漏えいのおそれ、攻撃グループは盗んだデータを公開

ニチレイは2026年8月14日、システム障害の第6報を公表し、攻撃を受けたサーバーに保管されていた国内グループ会社の従業員情報の一部について、漏えいのおそれがあることを確認したと明らかにしました。対象となる項目は「従業員の氏名、生年月日、会社メールアドレス、従業員番号、その他人事・労務管理に関する情報」です。件数は調査中で、公表されていません。ニチレイは「現時点で、これらの個人情報の不正利用の事実は確認されておりません」としたうえで、外部の専門会社の協力のもとで調査を続け、追加で漏えいが確認された場合は該当する人へ知らせるとしています。

7月22日の第4報の時点では「対象になりうる人への個別通知を始めた」という予防的な段階でした。今回は「漏えいのおそれを確認した」と一段踏み込んだ表現に変わっています。ただし、外部へ流出したことが確定したという発表ではない点は変わりません。また、この第6報で挙げられているのはニチレイグループの従業員の情報であり、KFCなど取引先の一般利用者の会員情報が漏れたという発表ではありません。KFCの利用者が今すぐ何かをする必要がある、という段階ではないと読めます。

攻撃グループが盗んだとするデータを実際に公開

この発表の4日前、8月10日午前に、RansomHouseがニチレイから盗んだとするデータをダークウェブ上のリークサイトで実際に公開しました。7月21日の犯行声明の段階では「証拠(EVIDENCE)」を示して連絡を要求するにとどまっていましたが、交渉に至らなかったとみられ、公開へ踏み切った形です。金銭を払わなければ盗んだデータを公開するという、恐喝型の攻撃グループの典型的な流れをたどっています。

公開された量については、報じ方に幅があります。テレビ朝日系は、セキュリティ会社S&Jが確認した内容として少なくとも20万件以上のファイルが公開され、その中にニチレイの従業員や取引先の電話番号といった個人情報が含まれると伝えました。共同通信はセキュリティ関係者への取材から「盗んだデータのほぼ全量とみられる」と報じています。日本経済新聞は、公開されたデータに社内の総務・人事・経理や取引先とみられる情報が含まれると報じました。ニチレイはこの件について「把握しているが、コメントは差し控える」という立場です。

ここで切り分けておきたいのは、公開されたデータの中身を確認しているのは報道機関やセキュリティ会社であって、ニチレイが「これは自社から出たデータだ」と認めたわけではない、という点です。攻撃者が「盗んだ」と言い、第三者が「それらしいデータがある」と確認し、被害企業は捜査との関係で沈黙する——この三者の言い分がずれたまま情報が流れるのが、ランサムウェア被害の報道でよく起きる構図です。ニチレイが公式に認めているのは、あくまで第6報の「従業員情報に漏えいのおそれ」までです。

取引先の担当者はしばらく「ニチレイを名乗る連絡」に注意

会社メールアドレスと人事・労務情報の組み合わせは、実在の担当者になりすまして偽の請求書や振込先変更を送りつけるビジネスメール詐欺(BEC)の材料として使い勝手のよいものです。ニチレイと取引のある企業の経理・購買の担当者は、当面のあいだ、ニチレイ側の担当者名で届いた振込先の変更依頼や見慣れない添付ファイルを、メール以外の経路(電話など、以前から知っている番号)で確認する運用にしておくのが安全です。ニチレイ自身も、不審な連絡についてURLを開かない、ID・パスワードや個人情報を入力しない、添付ファイルを開かないよう呼びかけています。

業績への影響は営業利益8億円、別に特別損失10億円

8月7日に発表された2026年12月期第1四半期の決算で、ニチレイはシステム障害による業績への影響を初めて数字で示しました。

項目影響額内訳
売上高約50億円の減少食品事業 約20億円/
低温物流事業 約30億円
営業利益約8億円の下振れ持株会社 2億円/食品 2億円/
低温物流 4億円
特別損失約10億円システム障害の
対応費用
停止期間11日間異常検知から
全拠点の通常稼働まで

あわせて通期の連結業績予想も修正され、営業利益は338億円から300億円へ、親会社株主に帰属する当期純利益は252億円から204億円へ引き下げられました。ただし、この下方修正の全額がサイバー攻撃によるものではありません。営業利益の38億円の引き下げのうち、サイバー攻撃に起因する分は約8億円で、残りの大半は中東情勢など別の要因です。純利益の48億円の引き下げには、システム復旧費などの特別損失10億円が加わっています。「48億円の被害が出た」と要約すると実態から外れるため、ここは分けて読む必要があります。

とはいえ、1回のサイバー攻撃で営業利益が8億円削られ、復旧費に10億円かかり、約5,000社の取引先に影響が及んだという数字そのものは重いものです。物流が止まっている期間は11日間でしたが、その11日分の欠品・機会損失と、後始末の費用の合計がこの規模になる、という実例が公開されたことになります。自社が同じ立場になったときの試算の材料として、決算の数字は参考になります。

店頭の影響については、すでに解消しています。ニチレイは7月24日の第5報で受発注の制限を解除し、入出庫業務と冷凍食品の出荷業務が全拠点で平常時の通常稼働に移行したと公表しました。KFCは7月22日に全店舗で通常営業を再開しています。残っているのは、情報が実際にどこまで外へ出たのかという調査と、その後始末です。業務は戻っても、出ていった情報は戻りません。

【続報・7月22日】犯行声明と個人情報の通知、KFCは全店で通常営業に

攻撃したグループによる犯行声明が出ました。恐喝を専門とするランサムウェア攻撃グループ「RansomHouse(ランサムハウス)」が、ダークウェブ上のリークサイトにニチレイへの攻撃を主張する犯行声明を掲載しました。攻撃日を7月13日と記し、データを暗号化した・証拠を持っているとして連絡を要求し、盗んだとするデータへのリンクや脅迫文を並べています。ただしこれは攻撃者側の一方的な主張であり、ニチレイはデータの持ち出しや、このグループの関与を公式には確認していません。ニチレイ自身は手口を「サイバー攻撃」とだけ説明し、ランサムウェアだと正式には断定していませんが、RansomHouseは盗んだデータの公開をちらつかせて金銭を要求する恐喝を専門とする攻撃グループとして知られています。

個人情報については、状況が一歩進みました。ニチレイは7月15日の第2報の時点で、被害を受けたサーバーの一部に個人情報が保管されていたことを確認し、個人情報保護委員会へ報告しています。そのうえで7月22日の第4報で、対象となる人への個別の通知を始めたことを公表しました。気をつけたいのは、これは「情報が外へ流出したと確定した」という意味ではない点です。あくまで流出の可能性がある人への予防的な連絡であり、外部への流出が確認されたという公式発表は、現時点では出ていません。もしニチレイや取引先から自分あてに通知が届いた場合は、その案内に沿って落ち着いて対応してください。

復旧は大きく前進しました。ニチレイは第4報で、今週中に全拠点を通常の稼働に戻す予定だと示しました。これを受けて日本KFCは7月22日、全店舗で通常営業を再開したと案内しています。ただし、原因となった攻撃の詳しい手口の解明や、個人情報が実際に外へ出たのかどうかの調査はこれからで、被害の全体像が固まるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

【続報・7月17日】止まった物流は動き出したが、完全復旧は見通せず

ニチレイは、止まっていた冷蔵倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷を7月17日から順次再開しました。ただし再開のペースは拠点ごとに差があり、障害が起きる前の状態に完全に戻る時期は「見通せない」としています。倉庫や工場では、システムが復旧するまで入出庫の記録を手書きの伝票でしのいでいた拠点もあったと報じられています。ニチレイは第3報で、受注・配送量を制限した部分稼働としたうえで、全拠点の通常稼働を7月21日の週に目指すと目標時期を示しました。KFCも7月18日の告知更新で、委託先の順次再開を受けて店舗への食材納品も順次再開したと案内しています。ただし一部店舗では欠品やメニュー制限が続き、公式アプリ・Webのオンライン注文、モバイルオーダー、デリバリー、配達代行、各種クーポンは引き続き一時停止としています。物流が動き出しても、店頭の品ぞろえが通常に戻るまでにはさらに時間がかかる見込みです。

影響を受けた取引先の数も、当初の想定より広いことが分かってきました。ニチレイは国内最大級の低温物流(冷凍・冷蔵を保ったまま運ぶ仕組み)を手がけ、取引先は約5,000社にのぼるとされています。1社のシステム障害が、これだけの数の企業の商品供給に影響しうるという規模の大きさが、今回の出来事の特徴です。

新たに、宅配や給食といった外食・小売以外の分野にも影響が及んでいます。生協(生活協同組合)の宅配では、パルシステムが7月16日以降、冷凍品や冷蔵品の一部を届けられないと案内し、コープデリ生活協同組合連合会も注文した商品を届けられない可能性があると告知しました。さらに一部地域では、学校給食のメニューが差し替えられるなど、子どもの食卓にまで影響が届いています。自分は外食チェーンをあまり使わないという人にも、宅配や給食を通じて関わりうる出来事になっています。

株式市場では、17日からの業務再開を受けてニチレイの株価が大きく反発しました。業績への過度な懸念が和らいだためとみられますが、原因となったサイバー攻撃の手口や、個人情報が実際に外へ流れ出たのかどうかの調査はこれからで、被害の全体像が固まるのはもう少し先になりそうです。同じように物流が止まって「モノ」が動かなくなる仕組みは、なぜIT障害で商品が届かなくなるのかを解説した記事でも詳しく取り上げています。

利用者に何が起きているのか

ケンタッキーフライドチキンの実店舗外観(イメージ)
Chacmool 撮影・CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons、イメージ)

KFCが案内しているのは、全国の店舗で起こりうる次のような影響です。店舗ごとに状況は異なり、日々変わります。

項目内容
店頭の商品一部品切れ・
販売メニューの制限
営業営業時間の短縮・
臨時休業の可能性
オンライン注文公式アプリ・Web
ともに一時停止
宅配・持ち帰り予約モバイルオーダー・デリバリー・
配達代行を一時停止
復旧の見通し7/17以降 食材納品を
順次再開(7/18告知)/
一部店舗で欠品継続
利用者への案内来店前に各店舗の
情報を確認

KFCは、食材の納品が7月14日からいったん難しくなりましたが、7月18日の告知更新で、委託先の順次再開を受けて店舗への食材納品も順次再開したと案内しています。ただし一部店舗では欠品やメニュー制限が続き、オンライン注文・モバイルオーダー・デリバリー・配達代行・各種クーポンは引き続き一時停止です。店舗の営業は流動的で、行っても目当ての商品が買えない、あるいは店が閉まっている場合があります。利用する前に、各店舗の営業状況を確認するよう呼びかけています。

これまでの経過

ニチレイの障害の発覚から、KFCの店頭に影響が及ぶまでの流れは次のとおりです。

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影響はKFCだけではない ― くら寿司・イオンにも拡大

当初はKFCの発表が目立ちましたが、ニチレイの障害の影響は外食・小売の各社へ広がっています。7月15日までに、回転寿司の「くら寿司」と大手スーパーの「イオン」でも、欠品や一部商品の販売休止が明らかになりました。さらに同日夜には、弁当チェーンの「ほっともっと」や定食の「やよい軒」(いずれも運営はプレナス)、アイスクリームの「井村屋」にも欠品や出荷停止が広がっています。いずれも、ニチレイの低温物流(冷凍・冷蔵を保ったまま運ぶ仕組み)を通じて食材や商品を仕入れていた点が共通しています。影響は外食・小売にとどまらず、翌16日以降は生協の宅配(パルシステム・コープデリ)や一部地域の学校給食にまで広がりました。

企業主な影響利用者への案内
ケンタッキー
(KFC)
全店で品切れ・メニュー制限・
営業時間短縮・臨時休業のおそれ
オンライン注文停止/
来店前に店舗を確認
くら寿司関西の数十店舗で
一部商品が欠品
対象商品は提供見合わせ/
店舗で確認
イオン冷凍食品などが欠品/
ネットスーパーで販売休止も
供給確認しだい
順次販売再開
ほっともっと・
やよい軒(プレナス)
一部メニューで
食材欠品・提供見合わせ
対象メニューは
販売を一時休止
井村屋アイスクリームなどの
出荷を一部停止
出荷再開まで
一部商品が入手困難
生協の宅配
(パルシステム・
コープデリ)
冷凍品・冷蔵品の
一部が届けられない
対象商品は欠品案内/
注文前に確認

くら寿司では、関西地区の数十店舗で「ゆず塩かつおたたき」や「熟成ふぐ」などの一部商品が欠品していると報じられています。原因は取引先への不正アクセスによる配送トラブルで、ニチレイの障害の影響とみられています。回転寿司は日々大量の生鮮・冷凍食材を回すため、物流が一日止まるだけで店頭の品ぞろえに響きやすい業態です。

イオンでは、冷凍食品など一部の商品で欠品が出ています。ネットスーパーでも冷凍食品やアイスクリーム、総菜や寿司などで欠品や販売休止の可能性があると告知しており、供給状況が確認できしだい順次販売を再開するとしています。全国に店舗網を持つ大手スーパーで冷凍食品の欠品が出ること自体が、ニチレイの低温物流が食の裏側でどれだけ広く使われているかを物語っています。

15日夜には、対象がさらに増えました。弁当の「ほっともっと」や定食の「やよい軒」を運営するプレナスは、一部メニューで食材が入りにくくなり提供を一時見合わせると案内。アイスクリームメーカーの井村屋も、ニチレイの倉庫を使う一部商品の出荷を止めています。猛暑のさなかにアイスや冷凍食品が店頭から消えかねない状況で、消費者の目に触れる形の影響がじわじわと広がっています。

各社に共通するのは、自社が攻撃を受けたわけではなく、仕入れや配送を支える物流の一角が止まったことで店頭に影響が出ている点です。ニチレイロジの低温物流を利用する企業はほかにも多く、同じように欠品や販売休止が出る企業が、今後さらに増える可能性があります。いずれの影響も食品そのものの安全性の問題ではなく、供給の滞りによるものです。

原因になったニチレイの不正アクセス

出発点はニチレイです。ニチレイは7月13日、社内システムが第三者による不正アクセスを受け、システム障害が発生したと公表しました。影響が出ているのは、グループのニチレイロジグループ各社が担う冷蔵倉庫の入出庫業務と、ニチレイフーズの冷凍食品の出荷業務です。倉庫に品物はあっても、それを受け払いするためのシステムが動かず、モノを動かせない状態になりました。

ニチレイによると、現時点で個人情報や顧客データが社外へ流出した事実は確認されていません。障害の範囲は国内に限られるとしています。一方で、システムの復旧時期は未定で、不正アクセスの具体的な手口や、ランサムウェア(データを人質にとって身代金を要求する攻撃)かどうかといった詳細は、公表時点では明らかにされていません。分かっている事実と、まだ分かっていない事実を分けて見ておく必要があります。

7月15日夜、ニチレイは第2報を出し、社内のサーバが「サイバー攻撃を受けたことを確認した」として、原因を正式にサイバー攻撃と認めました。具体的な攻撃の手口は、さらなる被害の拡大を防ぐためとして公表していません。あわせて、冷蔵倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷は、外部のセキュリティ専門家による安全確認を経て7月17日より順次再開する見込みと示しました。また、被害を受けたサーバの一部に個人情報が保管されていたことから、個人情報保護委員会へ「漏洩の可能性がある事案」として第1報を提出したことも明らかにしています。現時点で実際に情報が外部へ流出した事実は確認されていませんが、調査は続いています。

セキュリティの視点 ― どんな不正アクセスで、なぜニチレイが狙われるのか

「どんな不正アクセスだったのか」を知りたくなりますが、ニチレイは第2報で原因をサイバー攻撃と認めたものの、2026年7月15日夜の時点で、侵入経路も、具体的な攻撃の手口も、ランサムウェア(データを人質に身代金を要求する攻撃)かどうかも公表していません。手口の詳細は「調査中」で、被害拡大を防ぐため明かさないとしています。続報でも、障害が起きたシステムの具体的な領域やランサムウェアの有無は調査中と説明されています。分かっているのは、7月13日の早朝(午前6時50分ごろ)に社内システムへの不正アクセスを検知し、冷蔵倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷を担うシステムが止まったこと。個人情報の社外流出は現時点で確認されていませんが、調査は続いています。企業がサイバー攻撃を受けたとき、原因の特定にはデジタルフォレンジック(端末やネットワークに残った記録を解析し、侵入経路と被害範囲を突き止める調査)に時間がかかります。断定的な情報が先に出回っても、公式の確認を待つのが確実です。

「脆弱性を突かれたのか」も、現時点では分かりません。ただ、製造業や物流業のサイバー被害では、入口になりやすい場所の傾向ははっきりしています。社外から社内へつなぐVPN・リモートアクセス機器の脆弱性、フィッシングで盗まれたログイン情報、取引先を経由した侵入です。とくにVPN機器は常にインターネットへ露出し、社内の奥へ通じているため狙われ続けており、当サイトでも実際に悪用されているVPN機器の脆弱性や、攻撃が確認された脆弱性の一覧であるCISA KEV ダッシュボードを追っています。ニチレイのケースがこのどれに当たるかは、あくまで続報を待つ必要があります。直近では、飲料大手のアサヒグループがランサムウェア攻撃で純利益を大きく落としたのが記憶に新しく、食品分野が続けて標的になっている状況がうかがえます。

「どんな組織なのか」も、被害の広がりを理解する鍵になります。ニチレイのニチレイロジグループは、国内最大規模の低温物流企業です。同社の公表値では、冷蔵倉庫の保管能力は国内シェア約8.6%で国内1位、世界でも5位に入ります。多くの食品メーカーや小売、外食チェーンの冷凍・冷蔵品を預かって運ぶ、いわば食の「見えないインフラ」です。この一極集中こそが、止まったときにKFCのように取引先へ広く波及する理由であり、同時に、攻撃者から見れば「1社を止めれば連鎖的に打撃を与えられる」費用対効果の高い標的でもあります。物流の中枢は、ITの障害がそのまま現実の「モノが動かない」に直結します。その仕組みは倉庫と冷凍食品の流れが止まる仕組みの解説で詳しく整理しています。

なぜ1社の障害が外食チェーン全店に広がるのか

ニチレイのニチレイロジグループは、自社の製品を運ぶだけの会社ではありません。冷凍・冷蔵の温度を保ったまま食品を保管し運ぶ「低温物流(コールドチェーン)」の国内最大手のひとつで、多くの食品メーカーや外食チェーンから、保管と配送を請け負っています。KFCもそのひとつでした。だからこそ、ニチレイ1社のシステムが止まると、その物流に頼っていた別々の企業の店頭が、同時に影響を受けます。

冷凍・冷蔵の食品には、常温品にはない「時間の壁」もあります。決められた温度を保ったまま、決められた時間内に運びきる必要があり、システムが止まって出荷が滞れば、代わりの手段で急いで穴埋めするのが難しくなります。倉庫の入出庫や出荷の指示を出すシステムが動かないと、在庫があっても外に出せません。ITの障害が、そのまま「モノが動かない」に直結する仕組みは、サイバー攻撃で倉庫と冷凍食品の流れが止まる仕組みの解説で詳しく整理しています。

冷凍食品は倉庫に物理的にあるのに、WMS(倉庫管理システム)が止まると在庫の場所が分からなくなり出荷できなくなることを示す図
在庫は倉庫にあっても、倉庫管理システム(WMS)が止まると出荷できなくなる。ITの障害が「モノが動かない」に直結する。

今回、表に出たのはKFCですが、ニチレイロジの低温物流を利用している食品メーカーや小売、外食は多く、同じように影響を受ける企業が今後増える可能性があります。物流という「見えないインフラ」を1社に集約しているほど、そこが止まったときの波及は広く、速くなります。

「委託先」と「ニチレイ」の情報の切り分け

正確に押さえておきたい点があります。KFCが7月14日に出した告知では、原因を「物流委託先のシステム障害」と説明しており、その委託先の社名は明記されていません。委託先がニチレイであると結び付けているのは、前日のニチレイの公表と合わせて報じた各メディアの報道です。KFCの公式発表とメディアの報道を、同じ確度の情報として混同しないほうが安全です。

とはいえ、ニチレイが13日に不正アクセスと冷凍食品出荷への影響を認め、翌14日にKFCが委託先の障害による影響を発表した流れは自然につながります。KFCが食材配送をニチレイに委託していたことは、複数の報道が伝えています。事実関係の細部は、両社の追加発表を待って確認するのが確実です。

利用者はどうすればいいか

KFCを利用する場合は、来店の前に各店舗の営業状況を確認してください。営業していても、目当ての商品が品切れだったり、販売メニューが絞られていたりすることがあります。オンライン注文、モバイルオーダー、デリバリー、配達代行は現在止まっているため、店頭での購入になります。

過度に不安になる必要はありません。今回の問題は食品そのものの安全性の話ではなく、システム障害による供給の滞りです。買いだめに走る理由もありません。復旧の時期は未定ですが、KFCは15日以降に委託先の復旧状況を踏まえて改めて案内するとしています。最新の状況は、各店舗の案内やKFCの公式サイトで確認するのが確実です。

サプライチェーンのサイバー被害という論点

今回の出来事は、1社を狙った攻撃が、その会社と取引する別の会社の事業にまで及ぶという構図です。攻撃を受けたのはニチレイですが、実際に店を閉めたり商品を切らしたりするのは、その物流を利用していたKFCのような取引先です。自社のシステムをどれだけ守っていても、つながっている先が止まれば、自社の事業も止まります。

食品や物流は、ITの障害が「モノが届かない」という形で消費者の目に見えやすい分野です。だからこそ、委託先や取引先が止まったときにどう動くか(手作業への切り替え、代替の物流手段、在庫の持ち方)をあらかじめ決めておく備えが、事業を止めきらないために効いてきます。その考え方は物流とコールドチェーンの備えを整理した記事にまとめています。

まとめ

日本KFCは2026年7月14日、全国の店舗で品切れ・メニュー制限・営業時間短縮・臨時休業が起こりうると発表し、オンライン注文などを一時停止しました。原因は、食材配送を委託する物流会社で起きた不正アクセスによるシステム障害です。その委託先はニチレイだと報じられており、ニチレイは前日の13日に不正アクセスと冷凍食品出荷への影響を公表。15日夜の第2報では原因を正式にサイバー攻撃と認め、倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷を7月17日より順次再開する見込みと示しました。被害サーバの一部に個人情報が保管されていたため、個人情報保護委員会へ漏洩の可能性がある事案として第1報を提出していますが、実際の流出は現時点で確認されていません。

影響はKFCだけでなく、7月15日までにくら寿司(関西の数十店舗で欠品)やイオン(冷凍食品の欠品・ネットスーパーの販売休止)にも広がり、同日夜にはほっともっと・やよい軒(プレナス)や井村屋(アイスの出荷停止)にも及びました。利用する側は、来店や注文の前に各社・各店舗の状況を確認すること。食品の安全性の問題ではないため、過度な心配や買いだめは不要です。今回は、低温物流を1社に集約していたことで、そこが止まると複数の取引先に一気に波及するという、現代のサプライチェーンの弱点が表に出た事例でもあります。ニチレイロジを利用する他の企業への影響も含め、続報を追って確認します。

よくある質問

Q. なぜKFCが品切れや臨時休業になるの?

KFCが食材配送を委託している物流会社で、不正アクセスによるシステム障害が起きたためです。その会社の冷蔵倉庫の入出庫や出荷が止まり、KFC店舗への食材の納品が難しくなりました。KFC自身が攻撃を受けたわけではなく、食品の安全性の問題でもありません。

Q. 影響が出ているのはKFCだけ?くら寿司やイオンはどうなの?

KFCだけではありません。くら寿司は関西地区の数十店舗で「ゆず塩かつおたたき」「熟成ふぐ」などの一部商品が欠品しています。イオンも冷凍食品などで欠品が出ており、ネットスーパーではアイスや総菜・寿司などの販売休止の可能性を告知しています。いずれもニチレイの低温物流を利用しており、供給が滞ったことによる影響とみられます。ニチレイロジを使う企業は多いため、影響が出る企業は今後増える可能性があります。

Q. いつ復旧するの?

復旧済みです。ニチレイは7月24日の第5報で、入出庫業務と冷凍食品の出荷業務について受発注の制限を解除し、全拠点で平常時の通常稼働に移行したと公表しました。異常検知から11日間での全面復旧です。KFCはその前の7月22日に、店頭販売・モバイルオーダー・Webオーダー・デリバリー・配達代行・各種クーポンのすべてを含めて全店舗で通常営業を再開しています。現在、KFCの店頭にこの障害による影響は残っていません。

Q. 個人情報は漏れたの?

ニチレイは8月14日の第6報で、国内グループ会社の従業員の氏名・生年月日・会社メールアドレス・従業員番号・その他の人事労務情報の一部について、漏えいのおそれを確認したと公表しました。件数は調査中で、不正に利用された事実は現時点で確認されていないとしています。対象はニチレイグループの従業員であり、KFCなど取引先の一般利用者の会員情報が漏れたという発表ではありません。なお8月10日に、攻撃グループのRansomHouseが盗んだとするデータをダークウェブ上で公開し、報道ではセキュリティ会社の確認として20万件以上のファイルが含まれるとされています。ただしこれは攻撃者側の主張と第三者の観測であり、ニチレイは「把握しているがコメントは差し控える」として、自社のデータであることを公式には認めていません。

参照元

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堀川 慎

Backend Engineer / AWS / Django / Go