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ニチレイのサイバー被害額が公表 売上50億円・対応費用10億円

日本ケンタッキー(KFC)が2026年7月、全店で商品の一部品切れやメニュー制限、臨時休業のおそれがあると発表しました。原因は食材配送を委託するニチレイで起きた不正アクセスによるシステム障害です。オンライン注文やデリバリーも一時停止。1社のサイバー被害が、なぜ外食チェーン全店の営業を止めるのか、時系列と背景をまとめます。

ニュース2026年7月15日公開 本日更新
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この記事のポイント

日本ケンタッキー(KFC)が2026年7月、全店で商品の一部品切れやメニュー制限、臨時休業のおそれがあると発表しました。原因は食材配送を委託するニチレイで起きた不正アクセスによるシステム障害です。オンライン注文やデリバリーも一時停止。1社のサイバー被害が、なぜ外食チェーン全店の営業を止めるのか、時系列と背景をまとめます。

【続報・8月7日】被害額が金額で出ました ― 売上50億円、対応費用10億円

2026年8月7日、ニチレイが第1四半期の決算を発表しました。そこに、今回のサイバー攻撃による被害額が金額として載っています。日本企業がサイバー攻撃の影響を項目ごとに数字で開示するのは、あまり多くありません。当サイトが決算説明会資料を直接取り寄せて確認しました。

項目グループ合計持株会社食品事業低温物流事業
売上高△50億円△20億円△30億円
営業利益△8億円△2億円△2億円△4億円
特別損失
(対応費用)
△10億円△10億円

読み方を補います。売上高の△50億円は「売れなかった分」です。冷凍食品が出荷できず、冷蔵倉庫が入出庫を止めた11日間に、本来立つはずだった売上が立たなかった。営業利益の△8億円が、そのうち手元に残らなかった利益です。そして特別損失の△10億円は「後始末の費用」——調査、復旧、再発防止にかかった実費で、持株会社がまとめて計上しています。

目を引くのは、失った利益(8億円)より、後始末の費用(10億円)のほうが大きいことです。止まったこと自体より、止まったあとを片付けるほうにお金がかかっています

「48億円の下方修正」と、サイバー攻撃の被害額は別物です

同じ日、ニチレイは通期の業績予想も下方修正しました。純利益を252億円から204億円へ、48億円の引き下げです。営業利益も338億円から300億円へ38億円下げています。

この数字は「システム障害響く」という見出しで報じられています。間違いではありません。ただ、48億円がまるごとサイバー攻撃の被害額だと読むと、事実とずれます

同じ資料に、下方修正の内訳が書かれています。営業利益を押し下げた要因のうち最も大きいのは中東情勢の影響で△35億円。包材の価格や電力コストの高騰です。次いで諸経費の増減が△26億円、海外関係会社の業績が△6億円。システム障害の分は、営業利益ベースで△8億円です。特別損失の10億円を足しても18億円で、48億円の一部にとどまります。

サイバー攻撃は下方修正の理由の一つであって、主因ではありません。この区別は、被害の大きさを見誤らないために必要です。それでも18億円という金額は、1回の攻撃で1社が失う額として決して小さくありません

法定の決算書には、この金額は載っていません

もう一点、書いておくべきことがあります。同じ日に出た決算短信——制度として提出が義務づけられている書類——の側では、この金額は財務諸表に反映されていません。「偶発債務」の欄に、こう書かれています。

「本件により将来の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性がありますが、現時点ではその金額を合理的に見積もることが困難なため、当第1四半期連結財務諸表には反映しておりません。」

矛盾しているわけではありません。説明会資料の数字は「現時点での見込み」、決算短信は「確定した数字だけを載せる」という性格の違いです。ただし読む側としては、50億円・8億円・10億円という数字は、今後の調査で動く可能性があるということになります。個人情報の漏えいが確認されれば、通知や補償の費用がここに乗ります

日本ケンタッキー・フライド・チキンは2026年7月14日、全国のKFC店舗で商品の一部品切れや販売メニューの制限、営業時間の短縮、臨時休業が起こる可能性があると発表しました。公式アプリとWebサイトからのオンライン注文、モバイルオーダー、デリバリー、配達代行サービスも一時停止しています。原因は、KFCが食材配送を委託している物流会社で起きた、不正アクセスによるシステム障害です。

その委託先が、冷凍食品大手のニチレイです。ニチレイは前日の7月13日に不正アクセスを公表しており、冷蔵倉庫の入出庫や冷凍食品の出荷業務が止まりました。1社のシステムが攻撃を受けたことが、その先につながる外食チェーンの店頭にまで及んでいます。影響はKFCだけにとどまりません。7月15日までに、回転寿司の「くら寿司」や大手スーパーの「イオン」でも欠品などが確認され、被害は外食・小売の各社へ広がっています。ここでは、利用者に何が起きるのか、どこまで影響が広がっているのか、そしてなぜ1社の障害がこれほど波及するのかを、時系列で整理します。

【続報・7月24日】ニチレイが全拠点で通常稼働に復旧 ― KFCの欠品・休業は解消、残る焦点は個人情報

「食べたいのに買えない」状態が解消しました。日本KFCは7月22日、全国の店舗で通常営業を再開したと案内しています。委託先の配送が戻ったことで、7月14日以降続いていた一部商品の品切れやメニュー制限、営業時間短縮、臨時休業に加え、公式アプリ・Webのオンライン注文、モバイルオーダー、デリバリー、配達代行の一時停止も解消に向かいました。約1週間、目当てのチキンが買えなかった利用者や、食材が届かず営業をやりくりしてきた店舗にとって、ようやく日常が戻りつつあります。

供給側の復旧も完了しました。障害の原因となったニチレイは7月24日、全拠点で通常の稼働に戻ったとしています。部分稼働が続いていた冷蔵倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷が、7月13日の不正アクセス発覚からおよそ11日で、止まっていた低温物流(コールドチェーン)がひとまず元の状態に戻ったことになります。KFCだけでなく、くら寿司・イオン・ほっともっと・井村屋、生協の宅配など、ニチレイの物流を通じて仕入れていた各社の欠品も、これで解消に向かう見通しです。1社の物流障害がどこまで広がり、どう収束していくかという、サプライチェーン障害の一連の流れがひとつの区切りを迎えました。

一方で、攻撃の全体像はまだ固まっていません。犯行声明を出した恐喝型のランサムウェア攻撃グループ「RansomHouse」は、7月21日から22日にかけてリークサイトで犯行を主張し、盗んだとするデータの「証拠」とされるファイル一式も公開しました。同グループは、文具通販「アスクル」への攻撃を行ったとされるのと同じ集団だと報じられています。ただしこれは攻撃者側の一方的な主張であり、ニチレイはデータの持ち出しや同グループの関与を公式には確認していません。個人情報についても、ニチレイは「流出の可能性がある」として個人情報保護委員会へ報告し、対象者への個別通知を続けている段階です。実際に外部へ流出したのかどうかを確定・否定する公式発表は、現時点ではまだ出ていません。営業も物流も正常化しましたが、個人情報の調査結果と、侵入経路をはじめとする攻撃手口の解明は、引き続き見ておくべき論点として残っています。

【続報・7月22日】犯行声明と個人情報の通知、KFCは全店で通常営業に

攻撃したグループによる犯行声明が出ました。恐喝を専門とするランサムウェア攻撃グループ「RansomHouse(ランサムハウス)」が、ダークウェブ上のリークサイトにニチレイへの攻撃を主張する犯行声明を掲載しました。攻撃日を7月13日と記し、データを暗号化した・証拠を持っているとして連絡を要求し、盗んだとするデータへのリンクや脅迫文を並べています。ただしこれは攻撃者側の一方的な主張であり、ニチレイはデータの持ち出しや、このグループの関与を公式には確認していません。ニチレイ自身は手口を「サイバー攻撃」とだけ説明し、ランサムウェアだと正式には断定していませんが、RansomHouseは盗んだデータの公開をちらつかせて金銭を要求する恐喝を専門とする攻撃グループとして知られています。

個人情報については、状況が一歩進みました。ニチレイは7月15日の第2報の時点で、被害を受けたサーバーの一部に個人情報が保管されていたことを確認し、個人情報保護委員会へ報告しています。そのうえで7月22日の第4報で、対象となる人への個別の通知を始めたことを公表しました。気をつけたいのは、これは「情報が外へ流出したと確定した」という意味ではない点です。あくまで流出の可能性がある人への予防的な連絡であり、外部への流出が確認されたという公式発表は、現時点では出ていません。もしニチレイや取引先から自分あてに通知が届いた場合は、その案内に沿って落ち着いて対応してください。

復旧は大きく前進しました。ニチレイは第4報で、今週中に全拠点を通常の稼働に戻す予定だと示しました。これを受けて日本KFCは7月22日、全店舗で通常営業を再開したと案内しています。ただし、原因となった攻撃の詳しい手口の解明や、個人情報が実際に外へ出たのかどうかの調査はこれからで、被害の全体像が固まるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

【続報・7月17日】止まった物流は動き出したが、完全復旧は見通せず

ニチレイは、止まっていた冷蔵倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷を7月17日から順次再開しました。ただし再開のペースは拠点ごとに差があり、障害が起きる前の状態に完全に戻る時期は「見通せない」としています。倉庫や工場では、システムが復旧するまで入出庫の記録を手書きの伝票でしのいでいた拠点もあったと報じられています。ニチレイは第3報で、受注・配送量を制限した部分稼働としたうえで、全拠点の通常稼働を7月21日の週に目指すと目標時期を示しました。KFCも7月18日の告知更新で、委託先の順次再開を受けて店舗への食材納品も順次再開したと案内しています。ただし一部店舗では欠品やメニュー制限が続き、公式アプリ・Webのオンライン注文、モバイルオーダー、デリバリー、配達代行、各種クーポンは引き続き一時停止としています。物流が動き出しても、店頭の品ぞろえが通常に戻るまでにはさらに時間がかかる見込みです。

影響を受けた取引先の数も、当初の想定より広いことが分かってきました。ニチレイは国内最大級の低温物流(冷凍・冷蔵を保ったまま運ぶ仕組み)を手がけ、取引先は約5,000社にのぼるとされています。1社のシステム障害が、これだけの数の企業の商品供給に影響しうるという規模の大きさが、今回の出来事の特徴です。

新たに、宅配や給食といった外食・小売以外の分野にも影響が及んでいます。生協(生活協同組合)の宅配では、パルシステムが7月16日以降、冷凍品や冷蔵品の一部を届けられないと案内し、コープデリ生活協同組合連合会も注文した商品を届けられない可能性があると告知しました。さらに一部地域では、学校給食のメニューが差し替えられるなど、子どもの食卓にまで影響が届いています。自分は外食チェーンをあまり使わないという人にも、宅配や給食を通じて関わりうる出来事になっています。

株式市場では、17日からの業務再開を受けてニチレイの株価が大きく反発しました。業績への過度な懸念が和らいだためとみられますが、原因となったサイバー攻撃の手口や、個人情報が実際に外へ流れ出たのかどうかの調査はこれからで、被害の全体像が固まるのはもう少し先になりそうです。同じように物流が止まって「モノ」が動かなくなる仕組みは、なぜIT障害で商品が届かなくなるのかを解説した記事でも詳しく取り上げています。

利用者に何が起きているのか

ケンタッキーフライドチキンの実店舗外観(イメージ)
Chacmool 撮影・CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons、イメージ)

KFCが案内しているのは、全国の店舗で起こりうる次のような影響です。店舗ごとに状況は異なり、日々変わります。

項目内容
店頭の商品一部品切れ・
販売メニューの制限
営業営業時間の短縮・
臨時休業の可能性
オンライン注文公式アプリ・Web
ともに一時停止
宅配・持ち帰り予約モバイルオーダー・デリバリー・
配達代行を一時停止
復旧の見通し7/17以降 食材納品を
順次再開(7/18告知)/
一部店舗で欠品継続
利用者への案内来店前に各店舗の
情報を確認

KFCは、食材の納品が7月14日からいったん難しくなりましたが、7月18日の告知更新で、委託先の順次再開を受けて店舗への食材納品も順次再開したと案内しています。ただし一部店舗では欠品やメニュー制限が続き、オンライン注文・モバイルオーダー・デリバリー・配達代行・各種クーポンは引き続き一時停止です。店舗の営業は流動的で、行っても目当ての商品が買えない、あるいは店が閉まっている場合があります。利用する前に、各店舗の営業状況を確認するよう呼びかけています。

これまでの経過

ニチレイの障害の発覚から、KFCの店頭に影響が及ぶまでの流れは次のとおりです。

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影響はKFCだけではない ― くら寿司・イオンにも拡大

当初はKFCの発表が目立ちましたが、ニチレイの障害の影響は外食・小売の各社へ広がっています。7月15日までに、回転寿司の「くら寿司」と大手スーパーの「イオン」でも、欠品や一部商品の販売休止が明らかになりました。さらに同日夜には、弁当チェーンの「ほっともっと」や定食の「やよい軒」(いずれも運営はプレナス)、アイスクリームの「井村屋」にも欠品や出荷停止が広がっています。いずれも、ニチレイの低温物流(冷凍・冷蔵を保ったまま運ぶ仕組み)を通じて食材や商品を仕入れていた点が共通しています。影響は外食・小売にとどまらず、翌16日以降は生協の宅配(パルシステム・コープデリ)や一部地域の学校給食にまで広がりました。

企業主な影響利用者への案内
ケンタッキー
(KFC)
全店で品切れ・メニュー制限・
営業時間短縮・臨時休業のおそれ
オンライン注文停止/
来店前に店舗を確認
くら寿司関西の数十店舗で
一部商品が欠品
対象商品は提供見合わせ/
店舗で確認
イオン冷凍食品などが欠品/
ネットスーパーで販売休止も
供給確認しだい
順次販売再開
ほっともっと・
やよい軒(プレナス)
一部メニューで
食材欠品・提供見合わせ
対象メニューは
販売を一時休止
井村屋アイスクリームなどの
出荷を一部停止
出荷再開まで
一部商品が入手困難
生協の宅配
(パルシステム・
コープデリ)
冷凍品・冷蔵品の
一部が届けられない
対象商品は欠品案内/
注文前に確認

くら寿司では、関西地区の数十店舗で「ゆず塩かつおたたき」や「熟成ふぐ」などの一部商品が欠品していると報じられています。原因は取引先への不正アクセスによる配送トラブルで、ニチレイの障害の影響とみられています。回転寿司は日々大量の生鮮・冷凍食材を回すため、物流が一日止まるだけで店頭の品ぞろえに響きやすい業態です。

イオンでは、冷凍食品など一部の商品で欠品が出ています。ネットスーパーでも冷凍食品やアイスクリーム、総菜や寿司などで欠品や販売休止の可能性があると告知しており、供給状況が確認できしだい順次販売を再開するとしています。全国に店舗網を持つ大手スーパーで冷凍食品の欠品が出ること自体が、ニチレイの低温物流が食の裏側でどれだけ広く使われているかを物語っています。

15日夜には、対象がさらに増えました。弁当の「ほっともっと」や定食の「やよい軒」を運営するプレナスは、一部メニューで食材が入りにくくなり提供を一時見合わせると案内。アイスクリームメーカーの井村屋も、ニチレイの倉庫を使う一部商品の出荷を止めています。猛暑のさなかにアイスや冷凍食品が店頭から消えかねない状況で、消費者の目に触れる形の影響がじわじわと広がっています。

各社に共通するのは、自社が攻撃を受けたわけではなく、仕入れや配送を支える物流の一角が止まったことで店頭に影響が出ている点です。ニチレイロジの低温物流を利用する企業はほかにも多く、同じように欠品や販売休止が出る企業が、今後さらに増える可能性があります。いずれの影響も食品そのものの安全性の問題ではなく、供給の滞りによるものです。

原因になったニチレイの不正アクセス

出発点はニチレイです。ニチレイは7月13日、社内システムが第三者による不正アクセスを受け、システム障害が発生したと公表しました。影響が出ているのは、グループのニチレイロジグループ各社が担う冷蔵倉庫の入出庫業務と、ニチレイフーズの冷凍食品の出荷業務です。倉庫に品物はあっても、それを受け払いするためのシステムが動かず、モノを動かせない状態になりました。

ニチレイによると、現時点で個人情報や顧客データが社外へ流出した事実は確認されていません。障害の範囲は国内に限られるとしています。一方で、システムの復旧時期は未定で、不正アクセスの具体的な手口や、ランサムウェア(データを人質にとって身代金を要求する攻撃)かどうかといった詳細は、公表時点では明らかにされていません。分かっている事実と、まだ分かっていない事実を分けて見ておく必要があります。

7月15日夜、ニチレイは第2報を出し、社内のサーバが「サイバー攻撃を受けたことを確認した」として、原因を正式にサイバー攻撃と認めました。具体的な攻撃の手口は、さらなる被害の拡大を防ぐためとして公表していません。あわせて、冷蔵倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷は、外部のセキュリティ専門家による安全確認を経て7月17日より順次再開する見込みと示しました。また、被害を受けたサーバの一部に個人情報が保管されていたことから、個人情報保護委員会へ「漏洩の可能性がある事案」として第1報を提出したことも明らかにしています。現時点で実際に情報が外部へ流出した事実は確認されていませんが、調査は続いています。

セキュリティの視点 ― どんな不正アクセスで、なぜニチレイが狙われるのか

「どんな不正アクセスだったのか」を知りたくなりますが、ニチレイは第2報で原因をサイバー攻撃と認めたものの、2026年7月15日夜の時点で、侵入経路も、具体的な攻撃の手口も、ランサムウェア(データを人質に身代金を要求する攻撃)かどうかも公表していません。手口の詳細は「調査中」で、被害拡大を防ぐため明かさないとしています。続報でも、障害が起きたシステムの具体的な領域やランサムウェアの有無は調査中と説明されています。分かっているのは、7月13日の早朝(午前6時50分ごろ)に社内システムへの不正アクセスを検知し、冷蔵倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷を担うシステムが止まったこと。個人情報の社外流出は現時点で確認されていませんが、調査は続いています。企業がサイバー攻撃を受けたとき、原因の特定にはデジタルフォレンジック(端末やネットワークに残った記録を解析し、侵入経路と被害範囲を突き止める調査)に時間がかかります。断定的な情報が先に出回っても、公式の確認を待つのが確実です。

「脆弱性を突かれたのか」も、現時点では分かりません。ただ、製造業や物流業のサイバー被害では、入口になりやすい場所の傾向ははっきりしています。社外から社内へつなぐVPN・リモートアクセス機器の脆弱性、フィッシングで盗まれたログイン情報、取引先を経由した侵入です。とくにVPN機器は常にインターネットへ露出し、社内の奥へ通じているため狙われ続けており、当サイトでも実際に悪用されているVPN機器の脆弱性や、攻撃が確認された脆弱性の一覧であるCISA KEV ダッシュボードを追っています。ニチレイのケースがこのどれに当たるかは、あくまで続報を待つ必要があります。直近では、飲料大手のアサヒグループがランサムウェア攻撃で純利益を大きく落としたのが記憶に新しく、食品分野が続けて標的になっている状況がうかがえます。

「どんな組織なのか」も、被害の広がりを理解する鍵になります。ニチレイのニチレイロジグループは、国内最大規模の低温物流企業です。同社の公表値では、冷蔵倉庫の保管能力は国内シェア約8.6%で国内1位、世界でも5位に入ります。多くの食品メーカーや小売、外食チェーンの冷凍・冷蔵品を預かって運ぶ、いわば食の「見えないインフラ」です。この一極集中こそが、止まったときにKFCのように取引先へ広く波及する理由であり、同時に、攻撃者から見れば「1社を止めれば連鎖的に打撃を与えられる」費用対効果の高い標的でもあります。物流の中枢は、ITの障害がそのまま現実の「モノが動かない」に直結します。その仕組みは倉庫と冷凍食品の流れが止まる仕組みの解説で詳しく整理しています。

なぜ1社の障害が外食チェーン全店に広がるのか

ニチレイのニチレイロジグループは、自社の製品を運ぶだけの会社ではありません。冷凍・冷蔵の温度を保ったまま食品を保管し運ぶ「低温物流(コールドチェーン)」の国内最大手のひとつで、多くの食品メーカーや外食チェーンから、保管と配送を請け負っています。KFCもそのひとつでした。だからこそ、ニチレイ1社のシステムが止まると、その物流に頼っていた別々の企業の店頭が、同時に影響を受けます。

冷凍・冷蔵の食品には、常温品にはない「時間の壁」もあります。決められた温度を保ったまま、決められた時間内に運びきる必要があり、システムが止まって出荷が滞れば、代わりの手段で急いで穴埋めするのが難しくなります。倉庫の入出庫や出荷の指示を出すシステムが動かないと、在庫があっても外に出せません。ITの障害が、そのまま「モノが動かない」に直結する仕組みは、サイバー攻撃で倉庫と冷凍食品の流れが止まる仕組みの解説で詳しく整理しています。

冷凍食品は倉庫に物理的にあるのに、WMS(倉庫管理システム)が止まると在庫の場所が分からなくなり出荷できなくなることを示す図
在庫は倉庫にあっても、倉庫管理システム(WMS)が止まると出荷できなくなる。ITの障害が「モノが動かない」に直結する。

今回、表に出たのはKFCですが、ニチレイロジの低温物流を利用している食品メーカーや小売、外食は多く、同じように影響を受ける企業が今後増える可能性があります。物流という「見えないインフラ」を1社に集約しているほど、そこが止まったときの波及は広く、速くなります。

「委託先」と「ニチレイ」の情報の切り分け

正確に押さえておきたい点があります。KFCが7月14日に出した告知では、原因を「物流委託先のシステム障害」と説明しており、その委託先の社名は明記されていません。委託先がニチレイであると結び付けているのは、前日のニチレイの公表と合わせて報じた各メディアの報道です。KFCの公式発表とメディアの報道を、同じ確度の情報として混同しないほうが安全です。

とはいえ、ニチレイが13日に不正アクセスと冷凍食品出荷への影響を認め、翌14日にKFCが委託先の障害による影響を発表した流れは自然につながります。KFCが食材配送をニチレイに委託していたことは、複数の報道が伝えています。事実関係の細部は、両社の追加発表を待って確認するのが確実です。

利用者はどうすればいいか

KFCを利用する場合は、来店の前に各店舗の営業状況を確認してください。営業していても、目当ての商品が品切れだったり、販売メニューが絞られていたりすることがあります。オンライン注文、モバイルオーダー、デリバリー、配達代行は現在止まっているため、店頭での購入になります。

過度に不安になる必要はありません。今回の問題は食品そのものの安全性の話ではなく、システム障害による供給の滞りです。買いだめに走る理由もありません。復旧の時期は未定ですが、KFCは15日以降に委託先の復旧状況を踏まえて改めて案内するとしています。最新の状況は、各店舗の案内やKFCの公式サイトで確認するのが確実です。

サプライチェーンのサイバー被害という論点

今回の出来事は、1社を狙った攻撃が、その会社と取引する別の会社の事業にまで及ぶという構図です。攻撃を受けたのはニチレイですが、実際に店を閉めたり商品を切らしたりするのは、その物流を利用していたKFCのような取引先です。自社のシステムをどれだけ守っていても、つながっている先が止まれば、自社の事業も止まります。

食品や物流は、ITの障害が「モノが届かない」という形で消費者の目に見えやすい分野です。だからこそ、委託先や取引先が止まったときにどう動くか(手作業への切り替え、代替の物流手段、在庫の持ち方)をあらかじめ決めておく備えが、事業を止めきらないために効いてきます。その考え方は物流とコールドチェーンの備えを整理した記事にまとめています。

まとめ

日本KFCは2026年7月14日、全国の店舗で品切れ・メニュー制限・営業時間短縮・臨時休業が起こりうると発表し、オンライン注文などを一時停止しました。原因は、食材配送を委託する物流会社で起きた不正アクセスによるシステム障害です。その委託先はニチレイだと報じられており、ニチレイは前日の13日に不正アクセスと冷凍食品出荷への影響を公表。15日夜の第2報では原因を正式にサイバー攻撃と認め、倉庫の入出庫と冷凍食品の出荷を7月17日より順次再開する見込みと示しました。被害サーバの一部に個人情報が保管されていたため、個人情報保護委員会へ漏洩の可能性がある事案として第1報を提出していますが、実際の流出は現時点で確認されていません。

影響はKFCだけでなく、7月15日までにくら寿司(関西の数十店舗で欠品)やイオン(冷凍食品の欠品・ネットスーパーの販売休止)にも広がり、同日夜にはほっともっと・やよい軒(プレナス)や井村屋(アイスの出荷停止)にも及びました。利用する側は、来店や注文の前に各社・各店舗の状況を確認すること。食品の安全性の問題ではないため、過度な心配や買いだめは不要です。今回は、低温物流を1社に集約していたことで、そこが止まると複数の取引先に一気に波及するという、現代のサプライチェーンの弱点が表に出た事例でもあります。ニチレイロジを利用する他の企業への影響も含め、続報を追って確認します。

よくある質問

Q. なぜKFCが品切れや臨時休業になるの?

KFCが食材配送を委託している物流会社で、不正アクセスによるシステム障害が起きたためです。その会社の冷蔵倉庫の入出庫や出荷が止まり、KFC店舗への食材の納品が難しくなりました。KFC自身が攻撃を受けたわけではなく、食品の安全性の問題でもありません。

Q. 影響が出ているのはKFCだけ?くら寿司やイオンはどうなの?

KFCだけではありません。くら寿司は関西地区の数十店舗で「ゆず塩かつおたたき」「熟成ふぐ」などの一部商品が欠品しています。イオンも冷凍食品などで欠品が出ており、ネットスーパーではアイスや総菜・寿司などの販売休止の可能性を告知しています。いずれもニチレイの低温物流を利用しており、供給が滞ったことによる影響とみられます。ニチレイロジを使う企業は多いため、影響が出る企業は今後増える可能性があります。

Q. いつ復旧するの?

ニチレイは第2報で7月17日より順次再開の見込みとし、第3報(7/17)では全拠点の通常稼働を7月21日の週に目指すと示しました。KFCも7月18日の告知更新で、店舗への食材納品が順次再開したとする一方、一部店舗では欠品が続き、オンライン注文などは引き続き一時停止です。店舗ごとに営業状況が異なり流動的なため、来店前に各店舗の情報を確認してください。

Q. 個人情報は漏れたの?

原因とされるニチレイは、現時点で個人情報や顧客データが社外へ流出した事実は確認されていないと公表しています。ただし7月15日夜の第2報で、被害を受けたサーバの一部に個人情報が保管されていたことから、個人情報保護委員会へ「漏洩の可能性がある事案」として第1報を提出したと明らかにしました。攻撃の具体的な手口は被害拡大防止のため公表されておらず、今後の追加発表で情報が更新される可能性があります。

参照元

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堀川 慎

Backend Engineer / AWS / Django / Go