【2026年3月25日】OpenAIがSoraを終了した。1日22億円の赤字、Disney撤退、シェア急落。ChatGPTは大丈夫なのか
OpenAIが動画生成Soraの終了を発表。Disneyは10億ドルの提携を撤回。Geminiにシェアを奪われ、Claudeにコーディング市場を押さえられている。1日1500万ドルの赤字を抱えたSoraの顛末と、OpenAIの現在地を整理する。
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kkm
Backend Engineer / AWS / Django
OpenAIが「Sora」を終了した
2026年3月24日、OpenAIがAI動画生成サービス「Sora」の終了を発表しました。スタンドアロンアプリ、開発者向けAPI、ChatGPT内の動画生成機能、すべてが対象です。
Soraは2024年2月にデモ動画で世界を驚かせ、2025年9月にアプリとしてリリースされました。テキストを入力するだけでリアルな動画が生成されるという触れ込みで、5日で100万ダウンロードを達成。しかし発表からわずか15ヶ月で、その歴史に幕を下ろすことになりました。
なぜ終了するのか。そしてその裏で、ChatGPTを取り巻く環境はどう変わっているのか。事実ベースで整理します。
Sora 2も終了するのか。全バージョンの状況を整理する
「終了するのは古いSoraだけで、最新のSora 2は残るのでは?」と思った方もいるかもしれません。結論から言うと、Sora 2を含む全てのSora関連サービスが終了します。
Soraにはバージョンがありました。
| バージョン | 公開日 | 特徴 | 状況 |
|---|---|---|---|
| Sora 1 | 2024年12月 | 初代モデル | 3月13日に 先行終了 |
| Sora Turbo | 2024年12月 | 高速版 | 3月13日に 先行終了 |
| Sora 2 | 2025年9月 | 物理精度・音声同期が 大幅進化 | 3月24日に 終了発表 |
3月13日にSora 1系列が終了し、「Sora 2に一本化しました」とアナウンスされました。ところがそのわずか11日後、Sora 2もろとも全てが終了することになったのです。
終了の対象は以下の全てです。
- ✕Sora スタンドアロンアプリ(iOS)
- ✕sora.com(Webアプリ)
- ✕開発者向けAPI
- ✕ChatGPT内の動画生成機能
なお、OpenAIはSoraの研究チームを「ロボティクスに役立つ世界シミュレーション研究」に振り向けるとしています。Soraの技術自体は社内に残りますが、ユーザーが使える製品としてのSoraは全て終わりです。
Soraはなぜ失敗したのか
端的に言えば、お金が燃えすぎたのが原因です。
Soraの運営には1日あたり約1,500万ドル(約22億円)の計算コストがかかっていました。年間換算で約54億ドル(約8,100億円)です。10秒の動画を1本生成するだけで約1.30ドルかかり、Soraの責任者Bill Peebles自身が「経済性は完全に持続不可能」と認めていました。
ユーザー数も急落していました。
| 時期 | 月間ダウンロード数 | 前月比 |
|---|---|---|
| 2025年9月(リリース) | 5日で100万DL | |
| 2025年11月(ピーク) | 約330万 | |
| 2025年12月 | 約224万 | -32% |
| 2026年1月 | 約120万 | -45% |
| 2026年2月 | 約110万 | -8% |
出典: Business of Apps
累計ダウンロードは約960万件。一方で、アプリ内課金の累計売上はわずか約210万ドル(約3億円)でした。1日22億円を燃やして累計3億円の売上。収支の桁が合いません。
OpenAIは2026年末にIPO(株式公開)を予定しています。投資家に見せる決算書に、毎日22億円の赤字を垂れ流す事業を載せるわけにはいきませんでした。
Disneyが10億ドルの提携を引き揚げた
Sora終了で最も大きな影響を受けたのはDisneyです。
2025年12月、DisneyはOpenAIに10億ドル(約1,500億円)を出資すると発表していました。ミッキーマウス、シンデレラ、マーベルヒーロー、スター・ウォーズのキャラクターをSora上でライセンス供与し、誰でもAIでディズニーの動画を作れるようにする。そんな壮大な計画でした。
しかしSoraの終了に伴い、Disneyは提携を全面解消しました。金銭の授受は一切行われていません。取引はクローズする前に崩壊したのです。
Disney側は「急速に進歩するAI分野において、OpenAIが他の優先事項にシフトする決定を尊重します」とコメントしています。外交的な言い回しですが、1,500億円の提携を白紙に戻されたことへの落胆は想像に難くありません。
「もうGoogleに勝てない」と言われ始めた理由
Soraの終了は、OpenAIが抱えるもっと大きな問題の表れでもあります。競合の追い上げです。
GoogleのAIモデル「Gemini 3.1 Pro」が、2026年2月にリリースされました。このモデルは複数のベンチマーク(AIの性能を測るテスト)でChatGPTの最新モデルGPT-5.4を上回っています。
| テスト項目 | 内容 | Gemini 3.1 Pro | GPT-5.4 |
|---|---|---|---|
| ARC-AGI-2 | 抽象的な推論力 | 77.1% | 73.3% |
| GPQA Diamond | 大学院レベルの 科学問題 | 94.3% | 92.8% |
| MMMU-Pro | 画像を含む 複合問題 | 80.5% | 79.5% |
| SWE-Bench Verified | プログラムの バグ修正 | 80.6% | — |
ベンチマークだけではありません。Appleが、Siri(iPhoneの音声アシスタント)のAIバックエンドをOpenAIからGoogleに切り替えました。20億台以上のAppleデバイスにGeminiが標準搭載されることになります。これはFortune誌が報じたもので、ChatGPTにとって巨大な配信チャネルの喪失を意味します。
アプリの市場シェアを見ると、この1年でChatGPTの優位は大きく縮まっています。
| アプリ | 2025年1月 | 2026年1月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 69.1% | 45.3% | -23.8pt |
| Gemini | 14.7% | 25.2% | +10.5pt |
| Grok | 1.6% | 15.2% | +13.6pt |
出典: Fortune
Googleの強みは、Geminiの性能だけではありません。Gmail、Google検索、Androidスマホ、YouTube。すでに何十億人もの人が毎日使っている製品にGeminiを組み込めるという「配信力」が、OpenAIには真似できない武器です。ChatGPTはアプリをインストールしてもらう必要がありますが、Geminiは「最初からそこにいる」のです。
コーディングは「Claude一強」になった
GoogleがChatGPTの「一般向けAI」としての地位を脅かしている一方で、プログラマーの世界ではもっと劇的な変化が起きています。Anthropic(アンソロピック)が開発するAI「Claude」が、コーディング分野で事実上の一強になりました。
Anthropicは、元OpenAIの安全研究チームメンバーが2021年に設立した会社です。「AIの安全性」を最優先に掲げて独立した、いわばOpenAIからの「分家」にあたります。
特に注目を集めているのが「Claude Code」というプログラミング支援ツールです。2025年5月の公開から急成長し、年間売上は25億ドル(約3,750億円)を突破。これはChatGPTより速いペースで、エンタープライズソフトウェア史上最速の成長とされています。
プログラマー15,000人を対象にした調査では、「最も愛されるコーディングツール」としてClaude Codeが46%の支持を獲得。2位のCursor(19%)、3位のGitHub Copilot(9%)を大きく引き離しています。
そして今、ChatGPTからClaudeへの乗り換えが加速しています。AI計測プラットフォーム「Larridin」のデータによると、ChatGPTからClaudeに切り替えるユーザーのセッション数が1,487%増加しました。TechCrunchも「ユーザーがChatGPTを捨ててClaudeに移行している」と報じています。
乗り換えの理由は性能面だけではありません。OpenAIが米国防総省と契約を結んだことに対し、Anthropicは「大量監視や完全自律兵器にClaudeを使うことを認めない」という立場を貫きました。この姿勢に共感した技術者を中心に「#QuitGPT」運動が広がり、倫理面でもClaudeが支持を集めています。
売上の成長率も圧倒的です。Anthropicの年間売上ランレートは2026年3月時点で190億ドルに達し、年率7〜10倍の成長を見せています。OpenAIの成長率は年率3.4倍。このペースが続けば、Epoch AIの分析では2026年8月頃にAnthropicがOpenAIの売上を逆転する可能性があります。
数字で見るChatGPTの現在地
ここまで厳しい話が続きましたが、ChatGPTが「終わった」わけではありません。むしろ、数字だけ見れば今も圧倒的な巨人です。
| 指標 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 週間アクティブユーザー | 9億1,000万人 | 2026年2月時点 |
| 年間売上 | 250億ドル (約3.75兆円) | 年換算ベース |
| 資金調達額 | 1,200億ドル超 (約18兆円) | Amazon・Nvidia・ SoftBankなど |
| 企業評価額 | 7,300億ドル (約109兆円) | トヨタの約2.5倍 |
| 有料ビジネスユーザー | 900万人超 | 2025年8月の500万から 急増 |
出典: TechCrunch, Yahoo Finance, CNBC
Salesforceが年間売上250億ドルに達するのに18年、Googleが17年かかったのに対し、OpenAIは約39ヶ月で到達しました。ユーザー数も売上も、過去のIT企業と比較して異次元の速度で成長しています。
ただし、不安な数字もあります。企業向け(エンタープライズ)市場でのシェアは、かつての50%から27%にまで落ちました。新しくAIを導入する企業の70%がAnthropicのClaudeを選んでいるというデータもあります。「個人は使っているが、企業が離れ始めている」という構図が見えてきます。
OpenAIの次の一手は「じゃがいも」
追い詰められたOpenAIは、手をこまねいているわけではありません。Sora終了と同じ日、CEOのSam Altmanはスタッフに対して次世代AIモデルの開発完了を告げました。
そのコードネームは「Spud」。英語で「じゃがいも」という意味です。ちなみにGPT-5.3のコードネームは「Garlic(ニンニク)」でした。OpenAIの開発チームは野菜でモデルに名前を付ける習慣があるようです。
Spudの正式名称やスペックは一切公開されていません。分かっているのは「初期開発が完了した」ことと、「数週間以内にリリースされる」ことだけです。Altmanは「経済を本当に加速させることができる」と語っており、The Informationが報じたところでは「極端な推論能力」を持つとされています。
モデルだけではありません。OpenAIはChatGPT、コーディングツール「Codex」、AIブラウザ「Atlas」を1つに統合した「スーパーアプリ」の開発も進めています。CNBCが報じたもので、ChatGPTを「何でもできる1つのアプリ」に進化させる構想です。
さらに象徴的なのが、プロダクト組織の名称を「AGI Deployment」に変更したことです。AGIとは「汎用人工知能」、つまり人間と同等以上の知能を持つAIのこと。「私たちはAGIを実用化する組織です」と宣言したわけです。
Soraに注ぎ込んでいた莫大な計算資源を、Spudとスーパーアプリに振り向ける。それがOpenAIの賭けです。
Altmanが安全チームから離れた
Soraの終了やSpudの発表と同時に、もう1つ重要な発表がありました。Sam Altmanが、AIの安全チームとセキュリティチームの直接監督から退くというものです。
安全チームの監督は最高研究責任者のMark Chenに、セキュリティは社長のGreg Brockmanに引き継がれました。Altman自身は資金調達とデータセンター建設に集中するとしています。
この判断には文脈があります。OpenAIの安全チームは、これまで何度も揺れてきました。
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OpenAIの安全チームは、この2年間で中心人物がほぼ全員いなくなりました。さらに、TIME誌によると30人以上の現・元OpenAI社員がカリフォルニアのAI安全法案を公に支持しており、自社のCEOのロビー活動と対立する異例の事態になっています。
もちろん、安全チームの監督をCEOが手放すこと自体が悪いわけではありません。専門家に任せるのは合理的な判断です。ただ、これだけの経緯があるなかで「安全よりも資金調達を優先する」というメッセージとして受け取られるリスクは小さくないでしょう。
ChatGPTは大丈夫なのか
ここまでの事実を整理します。
OpenAIは1日22億円を燃やしていたSoraを切り捨て、Disneyとの1,500億円の提携を失いました。GoogleのGeminiにはベンチマークとApple提携で追い抜かれ、アプリシェアは1年で69%から45%に落ちました。プログラマーの世界ではAnthropicのClaudeが一強になり、企業市場のシェアも50%から27%に縮みました。CEOは安全チームを手放しています。
それでも、週9億人が使い、年間250億ドルを売り上げ、18兆円の資金を集めた企業です。すぐに潰れるような話ではありません。
ただ、「一番最初にAIを広めた会社」であることと、「これからも一番であり続ける」ことは別の話です。検索エンジンのYahoo!が、GoogleやBingに追い抜かれたように。ブラウザのNetscapeが、Internet ExplorerやChromeに置き換えられたように。先行者が勝ち続ける保証は、テクノロジーの世界にはありません。
OpenAIはすべてを次世代モデル「Spud」に賭けました。GeminiとClaudeに挟まれた状態で、数週間後にリリースされるこのモデルが期待に応えられるかどうか。2026年のAI業界の勢力図は、その結果次第で大きく変わることになりそうです。
参照元
- •Variety: OpenAI Will Shut Down Sora Video App; Disney Drops Plans for $1 Billion Investment
- •CNBC: OpenAI shutters short-form video app Sora as company reels in costs
- •The Information: OpenAI CEO Shifts Responsibilities, Preps 'Spud' AI Model
- •Google Blog: Gemini 3.1 Pro
- •Google DeepMind: Gemini 3.1 Pro Model Card
- •Fortune: ChatGPT's market share is slipping
- •Fortune: Apple switches Siri AI backend to Google Gemini
- •TechCrunch: Users are ditching ChatGPT for Claude
- •Epoch AI: Anthropic could surpass OpenAI by mid-2026
- •Bloomberg: Claude Code and the Great Productivity Panic of 2026
- •TechCrunch: ChatGPT reaches 900M weekly active users
- •CNBC: OpenAI secures an extra $10 billion in record funding round
- •Business of Apps: Sora Revenue and Usage Statistics (2026)
- •Windows Central: OpenAI reportedly hemorrhages $15 million/day on Sora
- •TIME: Why Sam Altman Is Leaving OpenAI's Safety Committee
- •CNBC: OpenAI to create desktop super app