PraisonAIに脆弱性が4件追加、危険度10.0も CVE-2026-48168ほか最新版へ
AIに仕事を任せる人気ツール『PraisonAI』に、危険度10点満点中10.0の脆弱性CVE-2026-61447など計5件が見つかりました。AIに指示を送るだけで、サーバー上で悪意あるプログラムを実行され、APIキーなどの機密情報を盗まれる恐れがあります。過去にも公開数時間で実際に攻撃された前例があり、利用者は今すぐ2つの部品を最新版へ更新してください。
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AIに仕事を任せる人気ツール『PraisonAI』に、危険度10点満点中10.0の脆弱性CVE-2026-61447など計5件が見つかりました。AIに指示を送るだけで、サーバー上で悪意あるプログラムを実行され、APIキーなどの機密情報を盗まれる恐れがあります。過去にも公開数時間で実際に攻撃された前例があり、利用者は今すぐ2つの部品を最新版へ更新してください。
AIに調べ物やプログラム作成、パソコン操作までまとめて任せられる人気ツール「PraisonAI(プレゾンAI)」に、AIへ指示を送るだけで、そのツールが動くサーバー上で攻撃者の悪意あるプログラムを実行され、APIキーなどの機密情報を丸ごと盗まれかねない深刻な欠陥が見つかりました。中心となる識別番号はCVE-2026-61447で、危険度は10点満点中10.0という最高値です。同じ日に、この製品だけで合計5件の欠陥が一度に公表されました。
PraisonAIは、GitHubのスターが8,100を超える、いま注目のAIエージェント構築ツールです(AIエージェントとは、人の代わりに考えて手を動かすAIのこと)。今回の目玉となる欠陥は、AIに「このコードを書いて動かして」と作業させる機能に、生成されたプログラムを検査せずそのまま実行してしまう不備があり、AIへの指示文に悪意ある一文を紛れ込ませるだけで、サーバーを乗っ取れてしまうというものです。しかもPraisonAIは過去にも欠陥が繰り返し見つかり、公開からわずか3時間44分で実際の攻撃が始まった前例もあります。使っている場合は、今すぐ最新版へ更新してください。
その後も番号は増え続けており、2026年8月5日にはさらに4件(うち1件は危険度10.0)が加わりました。ただし4件とも修正版はすでに配布済みで、最新版を入れていれば対処は終わっています。あわせて、当初この記事が案内していた更新先バージョンに誤りがあったため、下の訂正欄で正しい番号をお伝えします。
【続報】2026年8月7日 ― 8月5日にさらに4件、うち1件は危険度10.0。ただし修正版はすでに配布済み
2026年8月5日、PraisonAIにさらに4件の識別番号が付きました。CVE-2026-48168(危険度10.0)、CVE-2026-55522(7.8)、CVE-2026-55523(7.7)、CVE-2026-55524(7.5)です。4件とも修正はすでに配布済みで、本記事の案内どおり最新版を入れていれば対処は終わっています。番号が付いたのが8月5日というだけで、修正そのものは5月から6月にかけて出ていました。
CVE-2026-48168(10.0)は、PraisonAIを「使う人」の穴ではありません。リポジトリに同梱されていた自動処理の設定ファイル(.github/workflows/claude.yml)の問題で、外部の人がリポジトリを複製(フォーク)し、シェルのメタ文字を含む名前のブランチから変更依頼(プルリクエスト)を出して@claudeとコメントするだけで、自動処理の実行環境で任意のコマンドが動きました。そのジョブは書き込み権限つきのトークンを握っているため、リポジトリの中身の改ざんまで届きます。pip installで導入して使っているだけなら対象外です。ただしPraisonAIをフォークして同じ設定ファイルを残している場合は、自分のリポジトリを点検してください。修正はpraisonai 4.6.40で、開発元の勧告は5月19日に出ていました。識別番号が付くまで2か月半かかっています。
CVE-2026-55522(7.8)は、作業手順書(ワークフロー)が別の手順書を取り込む「include」機能の穴です。取り込んだ側のtools.pyを、本来必要なはずの明示的な許可設定(PRAISONAI_ALLOW_LOCAL_TOOLSなど)も安全な読み込み口も通さず、そのまま実行していました。以前に公表された「tools.pyを勝手に実行してしまう」系の欠陥への対策を、横から迂回する亜種です。修正はpraisonai 4.6.58/praisonaiagents 1.6.58(6月13日公開)。
CVE-2026-55523(7.7)とCVE-2026-55524(7.5)は、どちらもWebページ取得機能web_crawl()のSSRF(内部ネットワークへ踏み込ませる手口)です。4月に公表されたCVE-2026-40160の修正が不完全だったことによるすり抜けで、最初に渡されたURLだけを検査し、転送(リダイレクト)先を検査し直していませんでした。攻撃者は検査を通る公開URLを渡し、そこから社内サーバーやクラウドの内部情報へ転送させられます。CVE-2026-55524はさらに、名前解決を検査後にすり替える「DNSリバインディング」でも成立すると指摘しています。修正はpraisonaiagents 1.6.58。
実際の悪用・PoC(攻撃コード)の公開・米政府CISAの攻撃確認リスト(KEV)への登録は、8月7日時点でいずれも確認できませんでした(KEVは2026年8月6日版・全1,661件を当サイトで照合。PraisonAI関連の登録はゼロ)。「公開数時間で攻撃された」という報道は、いまも2026年5月の旧欠陥CVE-2026-44338の話です。
【訂正】更新先バージョンの案内に誤りがありました
本記事は「praisonaiagentsを1.7.3以上へ更新してください」と案内していましたが、これは誤りでした。1.7.3はPython版のpraisonaiagentsのバージョンではなく、Node.js向け(npm)で配布されているpraisonaiパッケージのバージョンです。CVE-2026-61426の勧告(GHSA-6wjp-v33h-5cvq)はnpm側を対象としており、そちらは6月25日公開の1.7.3で修正済みです。
PyPI(Python版の配布先)のpraisonaiagentsは、8月5日公開の1.6.164が最新で、1.7系は1本も出ていません。つまりpip install -U praisonaiagentsを実行しても1.7.3にはならず、案内どおりに更新することは最初からできませんでした。Python版だけを使っている読者に、実行できない指示を出していたことになります。
あわせて「praisonaiを4.6.78以上へ」も正確ではありませんでした。勧告の記載は4.6.78ですが、PyPIの公開一覧に4.6.78は見当たらず、4.6.77の次は4.6.81です。実際に入手できるのは4.6.81以降になります。
正しい案内は次のとおりです。Python版はどちらも8月5日公開の最新(praisonai 4.6.160、praisonaiagents 1.6.164)へ。Node.js版(npm)のpraisonaiを使っているなら1.7.3へ。別パッケージのpraisonai-platformは0.1.9以降へ。お詫びして訂正します。
【続報】2026年7月22日 ― さらに4件、「初期設定のまま無認証で外部公開」される欠陥が中心
2026年7月22日、PraisonAIにさらに4件の重大な脆弱性が公表されました。多くは初期設定のままだと認証がかからず、外部から誰でも操作できてしまうタイプで、危険度は9.8〜9.9です。CVE-2026-47391(9.8・無認証)は、付属のサンプルサーバー(A2A)が認証なしの窓口とeval()で作った計算ツールを公開しており、リクエストを送るだけで任意のPythonコードを実行できます。CVE-2026-47393(9.8・無認証)は、コード生成機能が作るAPIサーバーが初期設定で認証オフのため、/chat・/agentsが無認証で外部に開いてしまいます。CVE-2026-47396(9.8・無認証)も、通話サーバーの制御APIがCALL_SERVER_TOKEN未設定時に認証なしとなり、エージェントの一覧・実行・登録解除を外部から行えます。いずれも初期設定で0.0.0.0(全ネットワーク)で待ち受けるため、外部から到達可能な点が共通します。
残るCVE-2026-47392(9.9・要ログイン)は、コード実行の安全装置(サンドボックス)をprint.__self__から本物の内部機能を手繰り寄せる手口ですり抜け、OSコマンドを実行できるものです。過去の類似欠陥への修正をすべて回避してしまう点が指摘されています。
あわせて、別パッケージのpraisonai-platformでも3件が公表されました。CVE-2026-47410(9.8・無認証)は、認証トークンの署名に使う秘密鍵がdev-secret-change-meという初期値のまま埋め込まれており、初期設定(本番以外の扱い)だと誰でもトークンを偽造して任意の利用者や管理者になりすませます。CVE-2026-47399(8.8)・CVE-2026-47405(8.8)・CVE-2026-47413(9.6)・CVE-2026-47416(9.6)は、別のワークスペースのデータを操作できたり、一般メンバーが自分や攻撃者のアカウントをオーナーへ昇格させたりできる、ワークスペースのメンバー権限まわりの認可不備です。いずれもpraisonai-platform 0.1.4で修正されており、既報のCVE-2026-61442(0.1.9修正)とあわせ、0.1.9以降へ更新してください。
対策は本文と共通で、praisonaiを4.6.40以降(できれば最新の4.6.78以降)、praisonaiagentsを1.6.40以降(同1.6.78以降)へ更新してください。加えて、認証トークンを設定する・0.0.0.0での外部公開をやめることでも大きく緩和できます。実際の悪用・CISA KEV登録・PoC公開は2026年7月22日時点で確認されていませんが、PraisonAIは公開直後に攻撃が始まった前例があり、無認証で外部公開している環境ほど急ぎ対処すべきです。
【続報】2026年7月21日 ― 同時期の追加脆弱性が判明(「5件」は主要分)
本記事公開後の調査で、同じ報告者クラスタのPraisonAI脆弱性が本文で扱った5件よりも広いことが分かりました。少なくとも次の3件が追加で確認されています。CVE-2026-61444(危険度9.4、deploy/api.pyのコードインジェクション、praisonai 4.6.78で修正)、CVE-2026-61446(危険度8.6、プラグイン管理機能が署名・検証なしに任意の.pyを実行、praisonaiagents 1.6.78で修正・2026年7月15日公開)、CVE-2026-61442(危険度7.1、別パッケージ praisonai-platform の認可欠如による権限昇格、0.1.9で修正)です。
本文の対策バージョン(praisonai 4.6.78以上/praisonaiagents 1.6.78以上)は、これら追加分にもおおむね整合します。praisonai-platform(別パッケージ)を使っている場合は0.1.9以上へ更新してください。実際の悪用・CISA KEV登録・PoC公開は、追加分を含め2026年7月21日時点で確認されていません。
PraisonAIとは何か
PraisonAIは、複数のAIを「チーム」のように連携させ、調査・計画・プログラム作成・実行までを自動でこなさせるためのツールです。開発者のMervin Praison氏が公開しているオープンソースソフトで、公式には「24時間働くAIの人材を雇うようなもの」とうたわれています。わずか数行のコードで動かせる手軽さと、100種類以上のAIモデルに対応する柔軟さから、AIを業務に組み込みたい開発者に急速に広がっています。GitHubのスターは8,100を超え、2026年4月にはGitHubの人気ランキングで2位に入ったこともあります。
当ブログでも、こうしたAIエージェントを実際に動かす検証として個人で32人分のAIチームを動かした記録を公開しています。便利な一方で、AIに「外部の道具」を持たせて実際の作業をさせる仕組みには、新しい種類の危うさがつきまといます。似た構図の欠陥は、Webページを開くだけでAIエージェントが乗っ取られたLangflowや、AIをまとめるLiteLLMの乗っ取り、AIにサーバー群を操作させる連携ツールの認証情報流出でも報告されてきました。今回のPraisonAIは、その中でも「危険度10.0」という最上位の欠陥が含まれる点で際立っています。
何が危険なのか、どこまで被害が広がるのか
今回まとめて公表された5件は、いずれもAIに与える「指示」や、AIが読み込む「外部データ」を通じて、ツールが動くサーバーを不正に操れてしまうという共通の弱点を突いています。中でも最も重いCVE-2026-61447は、AIがプログラムを書いて実行する機能に穴があり、攻撃者がAIへの指示に細工した一文を混ぜるだけで、サーバー上で好きなプログラムを実行できてしまいます。この手口は「プロンプトインジェクション」と呼ばれます(AIへの指示文=プロンプトに、命令をこっそり注入する攻撃のこと)。米国立標準技術研究所(NIST)はこれを、悪意あるコードの実行を許す分類(CWE-94)として整理しています。
被害の中身は具体的です。プログラムを自由に実行されると、まずツールが持っている環境変数(OpenAIやAnthropicのAPIキー、データベースの接続情報など機密の設定値)がそっくり盗まれます。APIキーを奪われれば、攻撃者はあなたの契約でAIを使い込んで高額請求を発生させたり、つながっているサービスへ侵入したりできます。さらに、別の欠陥(CVE-2026-61445)ではサーバーのファイルを書き換えて命令を実行でき、しかもPraisonAIをDockerという仕組みで動かしている場合は管理者権限で動くため、サーバーそのものを完全に支配される恐れがあります。
怖いのは、利用者が「悪意ある指示」を自分で打ち込む必要すらない点です。AIエージェントは、Webページや課題チケット、外部から取り込んだ文書などを自動で読み込んで作業します。その読み込むデータの中に攻撃者が命令文を仕込んでおけば、AIがそれを「作業指示」と勘違いして実行してしまいます。AIが攻撃にも守りにも使われる状況は、AIがサイバー攻撃を加速させている構造とも重なります。
誰がこの穴を狙い、何が起きるのか
この欠陥を突くと想定されるのは、AIサービスに使われるAPIキーや、つながった先の社内システムを狙う金銭目的の攻撃者や、公開された欠陥を自動で探し回って手当たり次第に侵入を試みるスキャナー集団です。PraisonAIのようなツールは、複数のAIサービスやデータベースへの鍵をまとめて握っていることが多く、一つ落とせば連鎖的に多くの資産へ手が届く「鍵束」として、攻撃者にとって狙いがいのある標的です。
攻撃の流れはこうです。攻撃者はAIエージェントが読み込むWebページ・文書・チケットなどに、細工した指示文をあらかじめ仕込んでおき、利用者がAIにそれを処理させた瞬間に、サーバー上で情報を盗み出すプログラムを実行させます。利用者はAIにいつもの作業を頼んだだけのつもりでも、裏でAPIキーや接続情報が抜き取られてしまいます。インターネットに直接つながった状態でPraisonAIを動かしている場合は、指示を送り込む必要すらなく、外から直接叩かれる恐れもあります。
結果として、狙われた開発者や企業は、AIサービスの利用料を不正に使い込まれたり、つながった社内システムやデータベースに侵入されたり、サーバーそのものを乗っ取られて別の攻撃の踏み台にされたりします。AIに便利な道具を持たせる仕組みは急速に広がっていますが、その道具が外部からの入力を無防備に受け取ると、AI自身が攻撃者の手先として働かされてしまう、という新しいリスクが浮き彫りになっています。
技術的に見ると何が起きているのか
今回のPraisonAIの5件は、「AIの出力や外部入力を、検証せずに実行系へ流し込んでいる」という共通の原因を持ちます。1件ずつ見ていきます。なお、PraisonAIはpraisonaiとpraisonaiagentsという2つの部品(パッケージ)に分かれており、欠陥によって直すべき部品と修正版が異なる点に注意が必要です。
CVE-2026-61447:AIへの指示だけで任意のプログラムを実行、機密情報を窃取(危険度10.0)
AIにプログラムを書かせて実行させる「CodeAgent」という機能に、AIが生成したPythonコードを、内容の検査(AST検証)も、危険な命令の制限も、隔離環境(サンドボックス)もかけずにそのまま実行してしまう不備がありました。安全のためのサンドボックス設定(sandbox=True)は用意されているものの、実際には無視されて機能していませんでした。攻撃者はプロンプトインジェクションでAIに悪意あるコードを書かせ、たとえば環境変数からAPIキーを読み出して外部へ送信するプログラムを実行させられます。ログインは不要(権限要件なし)で、対象はpraisonaiagentsの1.6.77以前、1.6.78で修正されています。報告者はanushkavirgaonkar氏です。
CVE-2026-61445:ファイルの書き込みとコマンド実行で管理者権限を奪取(危険度9.9)
プログラム作成を補助する「AICoder」機能に、ファイルの保存先を検証しない不備がありました。保存先の指定に絶対パスを混ぜると安全チェックをすり抜け(例:/etc/cron.d/のような定期実行の設定場所やSSHの鍵ファイルへの書き込み)、そこから任意のプログラムを実行できます。加えて命令を実行する機能も入力を素通しするため、AIへのチャットに「このコマンドを実行して」と紛れ込ませるだけでサーバー上で命令が走ります。開発元の勧告によると、PraisonAIをDockerで動かすと管理者(root)権限で動くため、被害はサーバー全体に及びます。対象はpraisonaiの4.6.77以前、4.6.78で修正されています。
CVE-2026-60090:データベースへの不正命令の注入(危険度9.8)
AIに記憶を持たせる「知識ストア」機能(PGVectorやCassandraというデータベースを使う部分)に、データベースへ送る命令文へ利用者由来の値を無検証で埋め込む不備がありました。本来は数値であるはずの「次元数」の項目が実行時にチェックされておらず、3); DROP TABLE tenant_secrets; --のような細工した文字列を渡すと、データベースへ不正な命令を注入できます(SQL/CQLインジェクションと呼ばれる古典的な手口)。これによりデータの盗み見や削除が可能です。NVDによると対象はpraisonaiの4.6.78より前、4.6.78で修正されています。
CVE-2026-61426:初期設定が無防備で、誰でもAIに接続できる(危険度8.6)
PraisonAIの初期設定そのものに問題がありました。すべての通信経路に接続を開放し、APIキー(合言葉)を要求せず、外部サイトからのアクセス制限(CORS)も無効という無防備な状態が既定になっていたため、インターネットに露出していると、認証なしで誰でもAIエージェントの指示内容(システムプロンプト)を覗き見たり、AIを勝手に動かしたりできてしまいます。認証の仕組みはAPIキーを明示的に設定したときだけ有効になり、初期値の空のままだと全経路が素通しになる作りでした。この1件だけは対象がNode.js向け(npm)で配布されているpraisonaiパッケージで、1.7.3より前が対象、1.7.3(2026年6月25日公開)で修正されています。Python版のpraisonaiagentsには1.7系が存在しないため、pipだけで使っている場合はこの番号を追いかける必要はありません(当初の記載を訂正しました。冒頭の訂正欄を参照してください)。過去にもPraisonAIは「認証が初期状態で無効」という同種の欠陥を出しており、繰り返しの構図です。
CVE-2026-61429:内部ネットワークへの不正アクセス(SSRF、危険度8.5)
Webページを読み込む機能(Crawl4AI/Chromiumを使う部分)に、アクセス先を偽って内部ネットワークへ踏み込ませる手口(SSRF)を防ぎきれない不備がありました。DNSの名前解決を途中ですり替える「DNSリバインディング」や、転送(リダイレクト)を悪用することで、本来アクセスできないはずの社内サーバーやクラウドの内部情報へ到達できてしまいます。対象はpraisonaiagentsの1.6.78より前、1.6.78で修正されています。
影響を受けるバージョンと対策
修正版は欠陥ごとに異なり、しかも直すべき部品がpraisonaiとpraisonaiagentsの2つに分かれます。片方だけ更新しても全部は塞げません。バージョン番号を1つずつ突き合わせる意味はもうないので、両方とも入手できる最新版へ上げてください。8月5日時点の最新はpraisonaiが4.6.160、praisonaiagentsが1.6.164です。
下の表の「修正版」は開発元の勧告に書かれた番号です。ただし勧告の番号がPyPIに存在しない場合があります。praisonai 4.6.78がその例で、公開されているのは4.6.77の次が4.6.81です。番号を狙って合わせるより、最新版に上げるほうが確実です。
| 識別番号 | 内容 | 危険度 | 対象の部品 | 修正版 |
|---|---|---|---|---|
| CVE-2026-61447 | 指示だけで プログラム実行 | 10.0 | praisonaiagents | 1.6.78 |
| CVE-2026-61445 | ファイル書き込み+ 命令実行(管理者権限) | 9.9 | praisonai | 4.6.78 |
| CVE-2026-60090 | データベースへの 不正命令の注入 | 9.8 | praisonai | 4.6.78 |
| CVE-2026-61426 | 初期設定が無防備で 誰でも接続可能 | 8.6 | praisonai (npm版のみ) | 1.7.3 |
| CVE-2026-61429 | 内部ネットワークへの 不正アクセス(SSRF) | 8.5 | praisonaiagents | 1.6.78 |
2026年8月5日に番号が付いた4件は次のとおりです。いずれも修正版は5月から6月にかけて配布済みで、最新版を使っていれば対処は終わっています。
| 識別番号 | 内容 | 危険度 | 対象の部品 | 修正版 (配布日) |
|---|---|---|---|---|
| CVE-2026-48168 | 同梱の自動処理設定に コマンド注入 (利用者は対象外) | 10.0 | praisonai (リポジトリ側) | 4.6.40 (5月19日) |
| CVE-2026-55522 | include経由で tools.pyを無検査実行 (既往対策の迂回) | 7.8 | praisonai praisonaiagents | 4.6.58/1.6.58 (6月13日) |
| CVE-2026-55523 | 転送先を再検査せず SSRF(40160の再発) | 7.7 | praisonaiagents | 1.6.58 (6月13日) |
| CVE-2026-55524 | DNSすり替えでも SSRFが成立 | 7.5 | praisonaiagents | 1.6.58 (6月13日) |
更新に加えて、PraisonAIをインターネットに直接さらさないことも重要です。外部からアクセスできる状態で動かすと、初期設定の無防備さ(CVE-2026-61426)を突かれて直接叩かれます。社内ネットワークやローカル環境に限定し、必要ならAPIキーによる認証を必ず有効にしてください。あわせて、AIエージェントに読ませる外部データ(Webページ・文書・チケット)を信頼できるものに絞ることで、プロンプトインジェクションの入口を狭められます。こうしたAI連携ツールは、OSSサプライチェーン(外部部品の安全性)を継続的に点検する対象に必ず含めておきたいところです。
PraisonAIで欠陥が繰り返される理由
PraisonAIで重い欠陥が見つかるのは、今回が初めてではありません。2026年5月には、APIサーバーが認証を無効のまま出荷されていた欠陥(CVE-2026-44338)が公表され、セキュリティ企業Sysdigの報告によれば、勧告が公開されてからわずか3時間44分後には、攻撃者のスキャナーが該当する穴を探し回り始めていました。過去には危険度10.0の「サンドウォール(隔離環境)を破る」欠陥(CVE-2026-34938)や、複数の欠陥を束ねた「9件クラスタ」の勧告(RAXE-2026-050)も出ています。
8月5日に番号が付いた4件は、この繰り返しの構図をさらにはっきりさせました。CVE-2026-55522は「tools.pyを勝手に実行してしまう」系への対策を、include機能という別の入口から迂回するもの。CVE-2026-55523とCVE-2026-55524は、4月に直したはずのSSRF(CVE-2026-40160)が、転送先を検査していなかったために同じ形で再発したものです。3件とも新種の穴ではなく、いったん塞いだはずの穴の塞ぎ残しにあたります。塞いだ場所ではなく、塞ぎ方が甘い。
共通するのは、AIの出力や外部からの入力を、検証せずにコマンド実行・ファイル操作・データベースへ流し込むという設計上の癖です。AIエージェントの分野は開発スピードが速く、機能追加が優先されがちで、入力の検証や権限の絞り込みが後回しになりやすい構造があります。マイクロソフトも「プロンプトがシェル(命令実行の窓口)になる」として、AIエージェント基盤に共通するこの危うさを警告しています。PraisonAIを使う場合は、「便利な新機能ほど、まだ検証が甘いかもしれない」という前提で、更新と権限設計を習慣にしておくことが欠かせません。
確認できていること、まだ分からないこと
✓ 確認済みの事実
- ✓PraisonAIで同日に計5件の欠陥が公表され、最も重いCVE-2026-61447は危険度10.0。AIへの指示(プロンプトインジェクション)で任意のプログラムを実行できる(NVD)
- ✓直すべき部品は
praisonaiとpraisonaiagentsに分かれ、片方だけの更新では全部を塞げない。2026年8月5日時点の最新は4.6.160と1.6.164(NVD) - ✓2026年8月5日にさらに4件の番号が付いた(CVE-2026-48168が10.0、ほかに55522・55523・55524)。4件とも修正版は5月から6月に配布済み(NVD)
- ✓PraisonAIは過去にも重い欠陥が繰り返し見つかり、CVE-2026-44338は公開から3時間44分で攻撃スキャナーの標的になった(Sysdig)
? まだ確認されていないこと
- ?今回扱った欠陥が実際の攻撃に悪用されたという公式な報告は、2026年8月7日時点でも確認できていない
- ?米政府CISAの「実際に攻撃が確認された脆弱性リスト(KEV)」に、PraisonAI関連の登録はゼロ(2026年8月6日版・全1,661件を当サイトで照合。KEVの最新状況はこちらで確認できる)
- ?PoC(攻撃コード)の公開も確認できていない。CVE-2026-61447は、AIに狙いどおりのコードを書かせる工夫が必要なため、そのまま貼れば動く形の実証コードは出回りにくいとみられる
- ?ただし過去の同製品の欠陥が公開直後に攻撃されている経緯から、今後も早期に悪用が試みられる可能性は高いとみられる
今すぐできる対策
対策の軸ははっきりしています。PraisonAIの2つの部品を、どちらも入手できる最新版へ更新することが最優先です(8月5日時点でpraisonaiは4.6.160、praisonaiagentsは1.6.164)。pip install -U praisonai praisonaiagentsで両方まとめて上がります。Node.js版(npm)を使っている場合はpraisonaiを1.7.3へ、別パッケージのpraisonai-platformを使っている場合は0.1.9以降へ。AIに作業を任せる構成は便利ですが、その分だけ握られている鍵が多く、乗っ取られたときの被害が大きくなります。
あわせて、インターネットに直接さらさない・AIに与える権限と読ませるデータを絞ることが重要です。外部公開が不要ならローカル環境に限定し、APIキー認証を有効化する。プログラム実行やファイル操作の機能が不要なら無効にする。信頼できない外部データをそのままAIに処理させない。すでに露出させて動かしていた場合は、環境変数に入れていたAPIキーやデータベースの接続情報を、念のためすべて再発行してください。
| 立場 | 今できること | 優先度 |
|---|---|---|
| 利用中の開発者 | 2つの部品を最新版へ更新 不要な実行・ファイル機能を無効化 | 最優先 |
| 外部公開して運用中 | ローカル/社内に限定 APIキー認証を有効化 | 最優先 |
| 悪用の疑い | APIキー・接続情報を再発行 実行ログ・課金の異常を調査 | 高 |
よくある質問
Q. PraisonAIを外部に公開せず、自分のパソコンだけで使っていれば安全ですか。
A. インターネットに直接さらしていなければ、無防備な初期設定(CVE-2026-61426)を外から直接叩かれるリスクは大きく下がります。ただし最も重いCVE-2026-61447は、AIが読み込む外部データ(Webページや文書)に仕込まれた指示で発動し得るため、ローカル利用でも油断はできません。最新版への更新は必ず行ってください。
Q. 自分のバージョンはどう確認すればいいですか。
A. pip show praisonaiとpip show praisonaiagentsで、それぞれのバージョンを確認できます。8月5日時点の最新は4.6.160と1.6.164です。ここに届いていなければ、今回のいずれかの欠陥の対象だと考えてください。なおpraisonaiagentsに1.7系は存在しません。1.6.164が最新です。
Q. なぜ2つの部品を別々に更新する必要があるのですか。
A. PraisonAIはpraisonaiとpraisonaiagentsという2つのパッケージで構成され、今回の欠陥はその両方にまたがっています。片方だけを更新しても、もう片方の穴が残ります。両方をまとめて最新版にするのが確実です。
Q. すでに攻撃に悪用されているのですか。
A. 本記事の公開時点で、今回の5件が実際の攻撃に使われたという公式な報告は確認されていません。米政府CISAの攻撃確認リスト(KEV)にも登録されていません。ただしPraisonAIは過去の欠陥が公開直後に攻撃された前例があり、今回も早期に狙われる可能性が高いとみられます。早めの更新が安全です。
まとめ
今回の件は、AIに調査やプログラム作成、パソコン操作まで任せられる人気ツールPraisonAIが、AIの出力や外部入力を十分に確かめずに実行系へ流し込んでいたために、AIへの指示ひとつでサーバーを乗っ取られかねない、という話です。中心のCVE-2026-61447は危険度10.0で、ログイン不要で悪用でき、APIキーなどの機密情報をまとめて奪われる恐れがあります。同じ日に5件がまとめて公表され、しかも直すべき部品は2つに分かれています。
救いは、開発元がすでに修正版を公開していることです。praisonaiとpraisonaiagentsの両方を最新版へ更新し、インターネットに直接さらさず、AIに与える権限と読ませるデータを絞る。この基本を守れば、大半の入口は塞げます。AIに道具を持たせる仕組みは急速に広がっていますが、その道具が受け取る入力の検証を怠ると、AI自身が攻撃者の手先になり得ます。
8月5日にはさらに4件の番号が付き、うち1件は危険度10.0でした。ただし内訳を見ると、10.0の1件はリポジトリ側の自動処理の設定の話で利用者は対象外、残り3件は過去の修正の塞ぎ残しで、いずれも修正版は5月から6月に出ています。数字だけを見て慌てる必要はありません。ただし「番号が増え続けている」という事実のほうは重い。7月11日に5件、7月21日と22日にさらに十数件、8月5日に4件。この製品を業務に組み込むなら、最新版を追い続ける運用そのものが前提条件になります。
もうひとつ、この記事自身の反省として残しておきます。「1.7.3以上へ」という更新先の案内が誤っており、Python版だけを使っている読者は、そもそも実行できない指示を渡されていました。勧告に書かれた番号を、配布サイトの実物と突き合わせていなかったのが原因です。冒頭で訂正しました。バージョン番号は、書かれているものではなく入手できるものを確認してください。新たな動きがあれば、あらためてお伝えします。
参照元
- ▸ NVD - CVE-2026-61447(コード実行・10.0)
- ▸ NVD - CVE-2026-48168(同梱ワークフローのコマンド注入・10.0)(2026年8月5日)
- ▸ GitHub Security Advisory - GitHub Actions Claude workflow command injection(GHSA-xp85-6wwf-r67c)(2026年5月19日)
- ▸ NVD - CVE-2026-55522(include経由のコード実行・7.8)(2026年8月5日)
- ▸ NVD - CVE-2026-55523(web_crawlのSSRF・7.7)(2026年8月5日)
- ▸ NVD - CVE-2026-55524(DNSリバインディングによるSSRF・7.5)(2026年8月5日)
- ▸ GitHub Security Advisory - AgentOS defaults to network-exposed no-auth mode(GHSA-6wjp-v33h-5cvq、npm版praisonai 1.7.3で修正)
- ▸ PyPI - praisonaiagents(配布中のバージョン一覧。1.7系は未公開)
- ▸ npm - praisonai(1.7.3が最新、2026年6月25日公開)
- ▸ NVD - CVE-2026-61445(ファイル書き込み+コマンド実行・9.9)
- ▸ NVD - CVE-2026-60090(SQL/CQLインジェクション・9.8)
- ▸ NVD - CVE-2026-61426(無防備な初期設定・8.6)
- ▸ NVD - CVE-2026-61429(SSRF・8.5)
- ▸ GitHub Security Advisory - CodeAgent RCE(GHSA-2xv2-w8cq-5gxw)
- ▸ GitHub Security Advisory - AICoder file write / command execution(GHSA-9mp3-24cc-77mg)
- ▸ Sysdig - PraisonAI authentication bypass exploited in under 4 hours
- ▸ Microsoft Security Blog - When prompts become shells: RCE in AI agent frameworks
- ▸ PraisonAI 公式リポジトリ(GitHub)

堀川 慎
Backend Engineer / AWS / Django / Go