ブログ/記事一覧/Sakana AIが無料チャット「Sakana Chat」を公開。DeepSeekの検閲を解除した「Namazu」とは
sakana-ai-namazu-chat-launch-cover

Sakana AIが無料チャット「Sakana Chat」を公開。DeepSeekの検閲を解除した「Namazu」とは

Sakana AIが日本向けAIチャット「Sakana Chat」を無料公開。海外LLMのバイアスと検閲を独自の事後学習で除去した「Namazu」モデルを搭載する。

ニュース
kkm-horikawa

kkm

Backend Engineer / AWS / Django

2026.03.245 min19 views

Sakana Chatとは何か

2026年3月24日、日本拠点のAI企業Sakana AIが、無料のAIチャットサービス「Sakana Chat」を一般公開しました。同社が独自に開発したLLM(大規模言語モデル)シリーズ「Namazu」を搭載しています。

Web検索機能が内蔵されており、リアルタイムの情報を収集して回答を生成します。出典リンクも表示されるため、情報の確認がしやすい設計です。

利用は無料で、アカウント登録も不要です。ただし日本国内からのみアクセスできます。会話データはGoogle Cloudの日本リージョンに保存されるとのことです。

公開前には約1,000名が参加したベータテストが実施されており、SNS上では応答速度の速さと日本語の自然さが好評を得ています。

DeepSeekは72%の質問を拒否する

Namazuの存在意義を理解するには、海外製LLMが抱えるバイアスの問題を知る必要があります。

Sakana AIの公式ブログによると、DeepSeek-V3.1-Terminus(中国DeepSeek社のオープンモデル)に対して日本と他国に関連する政治・歴史・外交テーマの質問を投げると、72%が回答を拒否されたとされています。

これは開発元の国の情報統制や規制が、モデルの学習・調整プロセスに反映されているためです。たとえば特定の領土問題や歴史的事件について質問すると、「この質問にはお答えできません」といった回答が返ってきます。

この問題はDeepSeekに限りません。各国の企業が開発するLLMには、開発元の地域のイデオロギーや文化的偏りが程度の差こそあれ含まれています。日本のユーザーが日本語で使うとき、その偏りが不自然な回答として現れることがあります。

Namazuが変えたこと

Namazuは、既存のオープンウェイトLLMに独自の「事後学習(post-training)」を施し、日本仕様に適応させたモデルシリーズです。現在はアルファ版として3つのモデルが公開されています。

モデル名ベースモデル開発元
Namazu-DeepSeek-
V3.1-Terminus
DeepSeek-V3.1-
Terminus
DeepSeek(中国)
Llama-3.1-
Namazu-405B
Llama 3.1 405BMeta(米国)
Namazu-gpt-
oss-120B
gpt-oss 120BOpenAI(米国)

Sakana AIが公表しているベンチマーク結果では、Namazuはベースモデルと同等の推論・知識・コーディング能力を維持しています。基礎性能を落とさずにバイアスだけを除去した、ということになります。

もっとも顕著な変化は回答拒否率です。DeepSeek-V3.1-Terminusの72%の回答拒否が、Namazu版ではほぼ0%にまで改善されたとImpress Watchが報じています

具体的に何をしたかについて、Sakana AIは「独自データセットを使った事後学習でバイアスと検閲効果を除去した」と説明していますが、アルゴリズムの詳細は後日公開予定のテクニカルレポートに委ねるとしています。モデルウェイトの一部公開も予定されています。

Sakana AIとはどんな会社か

Sakana AIは2023年に東京で設立されたAIスタートアップです。共同創業者の一人であるLlion Jones氏は、2017年にGoogleで発表された論文「Attention Is All You Need」の共著者です。この論文で提案されたTransformerアーキテクチャは、ChatGPTをはじめとする現在のLLMの基盤技術になっています。

もう一人の共同創業者であるDavid Ha氏(CEO)は、Google Brain Japan部門長を経てSakana AIを設立しました。

時期ラウンド金額主要投資家
2023年Seed約$30MLux Capital、
Khosla Ventures
2024年9月Series A約$200MNTT、ソニー、
KDDI、NVIDIA
2025年11月Series B$135M評価額$2.65B
(約4,000億円)
2026年1月戦略投資非公開Google / Alphabet
2026年2月戦略投資非公開Citigroup

TechCrunchによると、評価額$2.65B(約4,000億円)は日本の未上場スタートアップとして過去最高額です。累計調達額は$379M以上。NTT、ソニー、KDDI、NVIDIA、Google、Citibankと、国内外の大手が名を連ねています。

これまでは研究成果の発表が中心でしたが、Sakana Chatは同社にとって初めての一般消費者向けサービスです。Nikkei Asiaはこれを「企業向けから一般向けへの戦略的転換」と報じています。

ChatGPTやClaudeとの違い

Sakana Chatの立ち位置は、ChatGPT・Claude・Geminiといった海外サービスとは少し異なります。

まず、無料でWeb検索が使えます。ChatGPTの無料版でもWeb検索は可能ですが、Sakana Chatは検索結果の出典リンクを明示する点を強調しています。

次に、開発元のバイアスを除去しているという点。ChatGPTにはOpenAI(米国)の、DeepSeekにはDeepSeek(中国)の価値観が反映されています。Namazuは複数のベースモデルからバイアスを除去し、日本のユーザーにとって中立的な回答を目指しています。

一方で制約もあります。日本国内からしかアクセスできないこと、モデルの詳細な技術仕様がまだ非公開であること、そして生成内容が「不正確または誤りを含む可能性がある」と公式に注記されていることは留意が必要です。

Namazuのアルゴリズム詳細はテクニカルレポートとして後日公開予定とされており、第三者による検証が可能になるまでは、バイアス除去の効果について独立した評価は出ていない状況です。

参照元